スイカちゃん物語③『暑中見舞い』

夢美瑠瑠

スイカちゃん物語③『暑中見舞い』

(これは、2019年の「暑中見舞いの日」にアメブロに投稿したものです)


         掌編童話・『暑中見舞い』


 また夏到来ですね、太田愛蘭(おおた・めろん)です。

 小学校6年で、究極の美少女で、本田真凛ちゃんに似ていて、やっとひとり〇を覚えました(ナイショ)

 この名前は一種の語呂合わせで、「Watermelon」に掛けているんです。

 みんなからは「スイカちゃん」、とか「ウオーターメロンちゃん」とか呼ばれています。

 スイカみたいにみんなを潤せる、甘い甘い潤滑油みたいな人になれたらいいと思います。


・・・ ・・・


 今日は、お母さんに言われて、暑中見舞いを学校の友達や先生たちに書く事にしました。


「時候の挨拶とかは一種の虚礼だから強制しないほうがいいんじゃないか?」

とかお父さんが言っていましたが、「だいたい挨拶っていうのは全部虚礼なんです。省略しだしたらきりがないから、ちょっと過剰なくらいがいいと私は思います」とお母さんが言うと、「まあそうかもな」と、お父さんは折れました。


 で、机に座って暑中見舞いを書き始めたんですが、パソコンソフトとかのフォーマットを使うのは「こころが籠っていないから無意味」と、お母さんが言うので、いちいち手書きにすることにしました。


 まず、担任の先生には「令和元年夏。暑中お見舞い申し上げます。先生にもいいお嫁さんができますように。」と書きました。

 先生はもうすぐ三十歳なのに独身なのです。

 

 一番の親友の、市後・巴芙絵(イチゴパフェ)ちゃんには、「暑中ー・・・ 夏休みになったらプールに行ったり海に行ったりしてたくさん思い出を作ろうね」と書きました。


 そうやって30枚くらい熱心に手書きの書簡をしたためていったのですが、クラスの、いじめられっ子で、不登校になっている原根・羅美ちゃんのところで、


「なんて書いたらいいかなー」と迷いました。本人はすごく悩んでいて、葛藤しているのに、「早く学校に来れたらいいねー」とか書くのは無神経な気がします。

「別に学校だけが人生じゃないよ」と書いてあげたい気もしましたが、それも何だか無責任な感じがして、悩みます。


可愛らしく悩んでいる自分にちょっと赤面したりした挙句に、「今度うちに遊びに来てね。一緒にスイカ食べよー♡」と、書いてあげました。羅美ちゃんとかみんなと、夏休みに海でスイカ割をして、二人でスイカを食べて楽しかったことを思い出したのです。


 結局100枚くらいこうやって暑中見舞いを書いたのですが、一番最後に校長先生に書かなくてはならなくなりました。


「羅須戊洲校長先生宛。令和元年夏。暑中お見舞い申し上げます。」


・・・そのあと何と書こうかまた悩みました。いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします。それでもいいかな?と思いましたが、何だかそっけないような?もうちょっと尊敬の念を込めたい気がしました。


考えた挙句に、「校長先生のネクタイはいつも趣味がよくて素敵ですね。私はいつも楽しみにしているんです。」と、添え書きしてあげました。


・・・校長先生の顔がほころぶ様子が見える気がしました。



<終>


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スイカちゃん物語③『暑中見舞い』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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