第20話 だからあれほど

「えっと………シノさん?」


「どうかした?」


「いや、なんで僕の部屋にいるのかなって。」


 今日はただの休日だったはずである。それなのにどうして起きたらシノが僕の上に乗っているのだろうか?


「なんでって、夜這だよ?」


「夜這って………今は朝だ。そんな冗談を言うんじゃない。本当は?」


「あ、やっぱりバレた?本当は………会いたかったから。」


 お昼の時間まで待てができなかったご様子で。まぁ、僕も目の前にいるってなったら我慢できそうにはないからそこまで人のことは言えないな。


「会いたかったからって………まぁ、いいけどさ。」


 正直僕だって会いたかったわけだ。だから、まぁ目をつむろうと判断した。


「母さんたちは?」


「うん。もう話してあるから大丈夫。前みたいなことにはならないから。だからさハル………。」


「待ちなさいよ。朝っぱらから何してんだって話じゃない。まだお預けです。」


 そう言うと、少ししょんぼりしたような顔をする。やっぱり可愛い。まぁ、お預けと言ったが、実際本番をするってなるとやっぱり恐怖心が勝ってしまう。


「じゃあ、夜。楽しみにしてるからね。」


 そんな感じに楽しげに言われてもな………。正直困る。僕だって初めてで怖いのに、どうしてここまでシノは楽観的なのだろうか?って待って、夜?


「シノ、もしかしてなんだけど今日泊まるのか?」


「そうだけど、もしかして駄目だった?」


「いや、駄目とかじゃないんだけどな。その何ていうかな、僕の心の準備がまだっていうかなんて言うか………。」


「あぁ、びっくりさせたくなっちゃってさ。どう?サプライズ。」


えぇ、確かにびっくりしましたとも。だって、起きたら彼女に乗っかられてるってなかなか無いシチュエーションよ?それこそ、同棲でもしてない限りは。


「まぁ、かなりびっくりしたよ。」


「その割にはリアクションが薄かったけど?」


「そりゃあ、頭が追いつかなかったからな!普通無いからね?こういうことって。」


「世の中のカップルは皆しているものかと。」


 シノの中の恋人像っていうのがだんだんとわからなくなっていく………。


「こういうことするのは、同棲してるとかそういう人達だけだよ。」


「同棲か………しちゃう?もちろん将来的にだけど。」


 その言葉を聞いた途端、僕は何も反応できなくなった。想像してしまったのだ。その将来像を。そうしてなぜか………恥ずかしくなっていた。


「ん?ハル、どうかしたの?」


「え?あ、いやなんでも無い。」


「もしかしてちょっと想像しちゃったとか?」


 そうやってピンポイントで当てに来るのやめてくれ。余計に恥ずかしいから。


「ま、まぁ、そうだよ。」


「ハルのそういうところ嫌いじゃないよ。恥ずかしがってる姿も可愛いからさ。」


 あぁ、もう。そんな可愛いとか言わないでくれたら助かるんだけどな。僕はこういう言葉には慣れてないんだ。だから余計に恥ずかしい。その上、このままだと多分僕は責められ続けるままじゃないか?あぁ、もうどうしていいのやら………。


「可愛いとか言うんじゃないよ………これでも男なんだから.。」


「性別どうこうの話じゃなくて、純粋にハルが可愛いの。」


 女の子の可愛いの定義がよくわからないのはいつものことだが………本当、困ったものである。どうしてものやら。


「耳まで真っ赤にしてさ………食べちゃいたい。」


 だから言っているだろう?待てって。犬じゃないんだから。本当にもう………。


「お預けです!まだ駄目です!我慢です!!」


 あぁ、僕ももう何言ってるのかわからないくなってきた。自分でもここまで分けがわからなくなるって相当だぞ?


「やっぱりか。」


 また少ししょぼんとしている。が、今はその顔に集中する余裕なんてものはない。はぁ、熱い。本当にどうしてくれよう?


「ま、照れてるハルが見れてことだし良しとしよう。」


「全くもう………本当に。」


「でも、あれだな。せっかくこうして上に乗っかって自由を奪ってるわけだから、なにかしたいよね。」


 正直に言おう。何もされたくないんですが?こんな距離で、まじまじと顔を見られようものなら恥ずかしすぎて僕は死んでしまう。前までだったらこんなことになっていただろうか?いや、思考の余裕なんてものは存在してない。


「手始めに、キスしよっか………。」


 ゆっくりと、体ごとシノが近づいてくる。どうしようもなく恥ずかしい。それでも僕は………期待しているんだ。その瞬間を。そうして、あと一寸程度。


「いらっしゃい、信乃ちゃ―――――。」


 ノブさん………だからあれほどR18だと言ったろ!!

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