第3話 ブラジル式雑談力

中学校に、ブラジルから元プロサッカー選手のセルジオ先生が来た。


セルジオ先生は、日本の学校教育を学ぶために、国際派遣教員として半年間ほどいた。


セルジオ先生の担当教科は数学だったが、元プロサッカー選手ということで、サッカー部の指導にも来てくれた。


セルジオ先生はとても紳士で、ナイスガイだったが、サッカーに関しては人間が変わった。


セルジオ先生

「みんな、リフティングは何回できる?」


部員

「最高で100回くらいの奴がいます。」


セルジオ先生

「2000回できると言いなさい。誰も見ていないところでできましたと張ったりをかませ。」


部員

「うっういっす!」


セルジオ先生

「君たち、マイボールのとき、相手を抜くためにどうする?」


部員

「ドリブルで抜きます。」


セルジオ先生

「相手の股間にボールをぶつければいい。相手がうずくまるから、その横を涼しい顔で抜き去れ。」


部員

「そんなことしていいのですか。」


セルジオ先生

「2回ぶつけたら、次から君へのプレスが弱くなるよ。」


セルジオ先生

「どんなシュートを打てば、ゴールすると思う?」


部員

「ゴールの四隅を狙えと顧問から教わりました。」


セルジオ先生

「ははは!そりゃ、おかしいなぁ。GKの顔面を狙え、2度とGKができないくらいビビらせろ。」


部員

「・・・」


セルジオ先生

「君たちは、サッカーを清く正しいスポーツだと誤解してますよ。ブラジルでは生きるか死ぬかの闘いであるし、生活の一部なんです。世界にはサッカーに人生をかけている人が多いのです。それが、サッカーの面白さですし、世界で一番の人気を誇る理由なのです。自分たちができる最大限の工夫をして、ゴールを目指しなさい。」


部員

「おれたち、めちゃめちゃ弱いんですが、セルジオからサッカー教わったら強くなれますか?どうしたら強くなれますか?」


セルジオ先生

「それは簡単だ。負けても、勝った顔して次に向かえばいい。時期に強くなるよ。」


その後、セルジオ先生がベンチに入ると、選手たちと雑談を繰り返した。しばらくすると、選手たちに自信が芽生え、相手よりも優位な心理状況で試合を進め、勝てることが増えてきた。


※補足

 セルジオは汚いプレーを推進していたわけではない。日本の若者の、か弱いメンタリティーを改善すべく、誇張していたのだ。子どもたちの思考を変化させることで、サッカーへの向かい方や技能の可能性を広げ、競技力向上へのアプローチをしていた。








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