おまけ 《星樹の花束》

 そこは、無数の星の子達が集うミルキーウェイ。ある者達は他愛ない言葉を交わし合い、またある者達は悩みを相談し合う。平和で穏やかな時が流れるこの場所だが、此処に住まう者は皆、互いの顔を知らないのだ。


 その一角で、憧れと未来を胸に抱く、五人の星の子ども達は出会った。アヤボシは花を、ムギボシは勇気を、ベニボシは感情を、シラホシは再会を、アオホシは約束を、それぞれ強く望んでいたが、子ども達の羽は皆一枚足りず、羽ばたく事が出来ないでいた。


 花を愛する小さなアヤボシは、迷子の丘で星を拾った。その星は、いつも彼女の行く先を照らし、彼女の傷を癒してくれる。星と言葉を交わし合いたいと思ったアヤボシは、星の呪いを解く事を決めた。


 魔女の呪いで眠る星は、四人の星の子ども達の願いを叶える事で目を覚ますという。旅の途中で出会った、それぞれの星の子と絆を深めたアヤボシは、最初に、勇気を願うムギボシに、勇気と変化の翼を見つけて差し出した。


 共に旅をするアヤボシと星は、長い月日の中、絆を深め、お互いを強く想いあうようになり、星は彼女に、贈り物をする約束をした。


 ある日、それに気付いた嫉妬深い月の女神は、七夕の夜、星を樹の鳥かごに閉じ込めて、二人の仲を引き裂いた。鳥かごの鍵を、アヤボシの中に封印して、星は彼女の幸せを願って地上へと逃がした


 季節は廻り、星の事を忘れ、地上で穏やかな日々を過ごすアヤボシだったが、記憶は無くしても、彼女の中にはずっと星が住んでいた。ある日、迷子の丘に落ちた、流れ星の雫を拾ったアヤボシは、自分の中の鍵を見つけた。


 星との日々を思い出し、星の幻影と再会を果たしたアヤボシ。月の女神から星を取り戻すことを決意して、感情の覚醒に暴走するベニボシと対峙する。氷の中に閉じ込められたベニボシの心を溶かし、ベニボシの贖罪を果たしたアヤボシは、ベニボシの感情も取り返した。


 変化の翼を手に入れたムギボシ。贖罪を果たし、感情の翼を取り戻したベニボシ。再会と約束の両翼を持つ星の幻影。そして、本当の星との穏やかで愛しい日々を、もう一度望むアヤボシは、仲間から送られた花で出来た、星達の花束の翼に気が付いた。


 願いを叶えた四人は、月の女神を故郷へと帰し、星を、樹の鳥かごから解放する。

 呪いが解けた星は、両翼を取り戻し、夜空に架かる天の川の橋を渡る。


 橋の対岸は見えずとも、その先の未来は必ず繋がっていると信じて、今はまだ、小さなアヤボシへの愛の花を、そっと大切に仕舞い込み、再会の花として、星座が瞬く夜空へと旅立っていった――。


                     おしまい×(訂正線が引かれている)



 約束の花束を受け取ったアヤボシは、四人での日常を取り戻した。長い年月を掛けて、ようやく結ばれたアヤボシと星は、二人の子ども達にも恵まれて、幸せに暮らしました。めでたしめでたし――。


                                  おしまい


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 ここまで読んで頂き、ありがとうございます!


こちらのおまけはカクヨム限定で載せておきます。星夜が書いた本当の絵本が気になるかもしれないというお節介からです。


読了ありがとうございましたっ!!


いろは えふ

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【完結】星樹の花束 いろは えふ @NiziTama_168

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