第30話 エピローグ
「ビャクヤ。ソウヤ。早くご飯食べちゃって。ん? 何してるの?」
「眠いってソウが泣くから、父様の絵本を読んであげてるんだ」
「ねえ。この父様の書いた絵本。父様と母様の恋の物語なの?」
「ふふっ。初恋が実ったお話だよ。とっても素敵でしょ?」
『シリウス先生。本日は、お忙しい中ありがとうございます。さて、秘密主義の、大人気作家兼政治家の先生には、色々突っ込んで訊いていきますよ』
「あ! テレビ、父様だ」
「本当だ。俺も大きくなったら、父様みたいなカッコイイ政治家になるんだあ」
星夜(せいや)と結ばれた私は、白夜(びゃくや)と蒼夜(そうや)という名前の、双子の男の子母になっている。少しませている二人は、昔の私達にちょっとだけ似ているかもしれない。
「ソウは野菜食べれないから無理じゃないか?」
「ビャクだっていつもピーマン残してるでしょ。俺、こっそりビャクが残してたの知ってるもん」
『お手柔らかにお願い致します』
『秘書を務められる奥様とは、随分と年齢が離れているとお聞きしたのですが、どんな出会いで、どんな風に仲を深められたんですか?』
「俺は、ちゃんと野菜は食べれる。ピーマンは、藍(らん)が欲しがったからあげただけだ」
「猫は野菜食べないよ。ビャクの屁理屈は通用しないからね!」
『それについては、色々なメディアの方に訊かれるのですが、大切な愛妻との思い出を、星の樹の妖に食べられてしまっても困りますから、秘匿にさせて頂きますね』
『星の樹の妖。それは先生の代表作、《星樹の花束》に出て来る、天女の妖ですね!』
『ええ。続編が出ますので、また皆様に楽しんで頂けると、大変嬉しく思います。妻との馴れ初めについては秘密ですが、過去から繋がる運命は確かにあると思います』
『ええーっ!? 秘密なんですか?』
『ええ。でもそうですね……もし、時や場所。たとえ年齢や性別が違っていたとしても、俺はまた彼女に出会って、そして恋に落ちると思います。彼女は俺の運命だったんです。大きな力に幾度引き裂かれようとも、広大な川に阻まれようとも、解けそうになったとしても、惹かれ合い、最後には結ばれる。運命ってそういうものでしょう?』
「相変わらずサラリと躱すなあ……ちゃっかり宣伝もしてるし。あ、じゃなくて、二人ともケンカしないの! もう直ぐお父さん帰って来るよ。一緒にお風呂に入るんでしょう?」
星夜とよく似た風貌の、幼い男の子達がするケンカは、微笑ましくもあるが、その賑やかさに私が苦笑いを浮かべていると、スーツに身を包んだ星夜が、玄関の扉を開く。
「お帰り。セイヤさん。ご飯出来てるよ」
「ただいま。オリナ」
『約束の花束を受け取ったアヤボシは、四人での日常を取り戻した。長い年月を掛けて、ようやく結ばれたアヤボシと星は、二人の子ども達にも恵まれて、幸せに暮らしました。めでたしめでたし――』
――了
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