第2話なにをすればいいんですか?

結局涙目になりながら彼女の話を聞いていた。それで驚いたのが、思っていたよりも情報がとても少ないということだ。彼女は物心がついたころからここで暮らしていたらしく、動物を狩って暮らしているということ。初めて自分と同じ形をしたものを見たということ。結局それしかわからなかった。そういえば、当たり前だがなぜ話をすることができるのだろうか。よくよく思えばおかしなことではないか。などと考えていたら彼女がご飯を食べ始めやがった。

「なんだい、食べたいのかい?私は性格が悪いことはないから上げないことはないのだが、備蓄が少ないのだよ。許してくれ。」

そういいながら干した肉を渡してきた。食えないことはないし、不味くはないのだが、好き好んで食べるようなものではない。しかし、食感は悪くないのが唯一の救いだった。

「おいしくはないのだが。不味くもない。私はあまり食に興味がない。作ってくれる分には構わないがな。できればうまいものがいいな。」

とても可愛らしいもので頼んでくるから、こちらも誠意をもって特に作れるものはないが、がんばるぜ!といったら露骨に態度を変えられてしまった。しょうがないじゃないか、誰がこんなサバイバル生活になると思うんだって話なんだ。スマホの画面の向こうで見ていたものがこうやってリアルになったとしてもできることなんてそうそうないのだよ

いや、それどころではないぞ、なぜ今まで一人で暮らしてこんなにも、生活基盤がこんなに高いんだ?この女は何者なんだ?

「露骨に態度を変えたからってそんな態度取らないでくれよ。わかったよ。話し相手ができるだけ感謝ってものなのかもしれないな。」

こいつがしゃべるたびに違和感しか生まれない。なぜ言っていることとやっていることの間のにこれほどまでの差が生まれるんだ。しかし、その違和感を追求したって何の意味も持たないのなんて当たり前の話だ。今できることはただひとつ。あきらめるだけだ。しかしだ、この女の近くにいればもしかしたら何かわかるかもしれない。とりあえずはこの女の近くにいる方がいいのだが、自分の精神が持つのだろうか

一度一人になって落ち着きたかった。とりあえず、散歩を言い訳にし外に出てみることにした。彼女に行ってくることとすぐに帰ることだけを伝え、この穴の中を出てみた。

外に出てみると、とてもきれいな光景がすぐに目に飛び込んできた。空の高さまである木が生い茂っており、それすらも超える空の上には数多の星たちがきらめいていた。ここが森の中であることが分かったと同時にこの素晴らしい景色を見れたことに感謝した。そのうち、気分も落ち着いてきて、、また穴に戻ることにした。

穴に戻ってきたのだが。彼女が誰かとしゃべっているようだ。ばれないように中を覗こうと思ったが、こちらの方を向いていたらばれてしまう。とりあえず聞き耳をたてることにした。

「いいかい、聞いてくれ。世紀の大発見だ。世界には透明な石というものが存在するのだよ。さっき紹介した彼がね。何もないところでこけていたのだよ。興味深いことだ!」

そんなものは存在しないことを伝えながら穴の中に戻ったが。一つ足りないものがあった。話し相手だ。こいつは誰と話していたんだと思っていたら。彼女の顔が真っ赤になっていた。

まさか、、、、

人形としゃべっていたのかwwwwww

「君ぃぃぃぃ。笑うのだけはだめだろうよ。そっちだって何もないところでこけてたくせに。」

恥ずかしさの度合いが違うだろうと言っておちょくっていたが。この女は悪い人ではないのだろうかと思えるようになってきた。あと口調が変わりすぎではないか?


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