第10話 放課後食べに行くことは青春!

「皆さんはじめまして。担任の青葉心音あおばことねです。これから1年間よろしくね」


 無事に入学式も終わり、それぞれのホームに移動してホームルームが始まった。俺たち1年生は3階にルームがある。

 あ、ちなみにホームは教室のことだ。ここにもカタカナは使われている。やはりたまは混乱していたが、しばらくすれば慣れるだろう。

 前の高校生活と同じように青葉先生が担任だった。生徒思いで優しい先生だ。俺も数えなれないくらいお世話になった。

 なんだか懐かしい気持ちになる。


「明日からの予定は────」


 青葉先生の口から明日以降の予定が伝えられる。周囲の人たちはしっかりと聞いているのが確認できる。

 俺は窓から外を見ていた。予定については細かい部分は忘れていることもあるが、大体は覚えてるから聞き流すことにする。

 記憶力があることは取り柄なんだ。


「────今行ったことは今後1週間の予定だからね。明日は9時登校だから遅刻しないでね。じゃあ今日は解散ね」


 皆がぞろぞろとホームからいなくなる。

 さすがに入学初日はすぐ帰るのか。初対面の人しかいないしそうなるか。俺も前の高校生活では真っ先に帰ってたな。

 まぁ、今回は妹(偽)がいるから気が楽だ。


「お兄ちゃん帰ろう」

「了解」

「よっ!夏輝にたまちゃんさっき以来だな」


 帰ろうとしたら話しかけてきたのは透だった。

 てか、同じルームだったのか。ルーム表もっとちゃんと見ておけばよかった。


「透同じルームだったんだ」

「オレは知ってたけどな。これから帰り?」

「あ、うん。桜が崎駅まで行くところ」

「オレと一緒ね。じゃあさ昼メシでも行かない?」

「あーうん────いてっ!」


 迷っているとたまに蹴られた。

 たま、脛は痛いよ。蹴るならもう少しだけ手加減してくれよ。


「あの透くん少しだけ待ってね。お兄ちゃんと話してくるから」

「おう」


 たまにホームの隅に連れて行かれる。


「お兄ちゃん何ためらってるの?」

「いやだって会ったばかりだし。前の時に見たことあるから初対面じゃないけど、話すのは初めてだから」

「はぁぁ、女々しい。あのさ、お兄ちゃん覚えてる?青春しないと死ぬってこと」

「それはもちろん」

「じゃあ即答して昼ご飯食べに行きなさい」

「でも────いてっ!」


 また蹴られる。

 だから脛は痛いって。それにさっきよりも威力上がってるし。なんだかたまの怒りを感じる気がする。


「放課後食べに行くことは青春!それにこの機会に透くんと仲良くなればいいでしょ」

「それは……たまの言う通り。てか、ご飯食べることは青春なの?」

「そうよ!青春以外で表せれるなら教えてほしいよ」


 そうか、青春なのか。

 今まで青春とは無縁すぎて分からなかった。ただご飯を食べることが青春になるなんて。もしかして青春って案外簡単なものだったりするのかな。


「おーい!どうなった?」

「ほら、早く行くって言いなさい。私も一緒に行ってあげるから」


 たまに背中を押される。

 行こう。青春ならする必要がある。

 それに、透とは仲良くなってみたい気持ちがある。透と一緒にいると楽しそうだからだ。それは前の高校生活で見ていた俺が1番知っている。いつも友人に囲まれていて楽しそうだった。

 あれも青春だったのかな?


「その……行こう」

「よっしゃ!たまちゃんも来る?」

「はい。一緒に行きます」

「じゃあ駅チカのファミレスにでも行こう。空いてる場所知ってるんだぜ」


 なんだか入学初日だけど、楽しそうな高校生活になりそうだ。

 それに青春もできそうだ。

 誘ってくれた透に、背中を押してくれたたまには感謝だな。

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