第8話 あんたと私は同じ高校に通うから
「ただいま」
「遅い」
リビングから聞こえた声は死神だった。あっちの方が先に帰っていたようだった。
鍵を締めて出かけたのにいるってことは、やっぱりすり抜けたりして入ったのだろう。死神のことを考えないで気ままに出かけれそうで良かった。
「あんたどこ出かけてたの?」
「文房具買おうとして────あっ!忘れた」
迷子だった橘のことを案内することで頭の中がいっぱいだった。すっかり忘れていた。
入学式の帰りに買うしかないな。まぁ、初日だし文房具使わないだろ。なくても大丈夫……のはずだ。そう信じよう。
「そんな落ち込む必要はない。念の為だったけど、あんたの分も買っといたからね。ほらこれ」
「あ、ありがとう……ん?あんたの分もって、君も文房具必要だったの?死神なのに?」
「今の私は死神じゃなくて……これ見て」
紙を渡してきた。
受け取って確認すると、そこには住民票と記されていた。しかも家族欄をよく見ると、俺が兄とされている。
ん?俺が兄?死神が妹?意味が分からない。こんな妹今までいなかったはず。
「……パチもん?」
「本物。さっき発行してきてもらった」
「嘘だろ」
「嘘じゃないよ。本物」
確かに住民票は自治体が発行する正式な書類だ。偽物の可能性はほぼない。偽物なんて作ってたらワイドショーいきだ。
けど、死神が妹だなんてあり得ない。俺は一人っ子で育ってきたからだ。第一、死神となんてつい最近会ったばかりだ。
「説明すると、あんたと一緒に暮らすのに他人だったら色々と大変なことになるでしょ。だからちょちょいとして兄妹にしてみた」
「そんなちょちょいとで兄妹なんかにできるもんなの?」
「死神パワーでなんとかなるもんよ」
「死神便利かよ」
死神は人知を超えた力があるらしい。
テレポートしたかのように現れた時点で察してたものもあるか。死神っ凄いんだな。少し憧れるところもある。
「名前は
「何故に下で呼ばないといけないの?」
「当たり前。兄妹で名字で呼び合ってるとか滅多にないでしょ」
死神……いや、たまの言う通りだ。兄妹だから下で呼ばないといけないな。変に名字で呼んだりしたらご近所さんに変な意味で目立ちそうだし。
青春をするために悪目立ちは避けないといけないからな。それがご近所さんとしてもだ。仕方ない。俺が生きるためにはしないといけないことだ。
「分かったよ。たま」
「よろしい……あっ!言うの忘れてた。あんたと私は同じ高校に通うから」
「はぁ!?」
「当たり前でしょ兄妹なんだから」
「アニメの見すぎだろ……」
当然妹ができて同じ高校に通うとかアニメにしかない展開だと思っていた。
なんか今日は色々と盛りだくさんな日だな。驚くポイントが多すぎる。
「てことで、明日からよろしくね。お兄ちゃん」
「はぁぁぁ」
思わずため息をついてしまった。
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