第7話 私は橘夢花です。以後お見知りおきを
「ほら着いたよ。ここのことだよね?」
「はいっ!そうです!」
近くまで来ると圧巻なタワーマンション。上を見ようとすると首が痛い。こんな場所に住んでいる人と出逢うなんて思ってもいなかった。
この子はこのタワーマンションからどんな景色を見ているのだろう。少しだけ見てみたい気もしている。きっと街が一望できて綺麗なんだろうな。
「ありがとうございます。貴方のおかげで無事にたどり着くことができました」
そう言って深々とお辞儀をした。
この子めっちゃ行儀いいな。いや、そんなことより女の子に頭下げさせるのは嫌だな。ましては数分前に出逢ったばかりだ。
「頭上げて。俺は当然のことをしただけだから」
「貴方ならそう言ってくれると思ってました」
俺の反応で楽しんでたのかな。まぁ、かわいいから許しちゃう。見惚れそうな笑顔だしな。
「そういえば貴方と
「ん、何が?」
「年齢です。もしかして高校生ですか?」
「あー正確にはまだかな。明日が入学式だから」
それを聞くと、女の子はぱあっと喜んだ。
それを見て思わず視線をそらしてしまった。なんだか照れてしまいそうになったからだ。久しぶりに女の子の笑顔を見たから仕方ない。あの時以来だからな。
「実は
「お嬢様」
いきなり俺と女の子の間に老人が現れた。
思わず「うわっ!」と声を出して後ろに下がってしまった。しかし、女の子は何事もないようにして老人に言葉を発した。
「あら、爺やはいつも突然現れますね」
「お嬢様のためなら当たり前のことです。して、この者は?」
お嬢様?どうゆうことだ?
そんなことよりも、爺やって呼ばれていた人が怖すぎる。女の子とは笑顔話しているが、俺を見る時は人を殺してそうな目をしている。マジで怖い。
「爺やそんな顔しないでください。この方は迷子になってた
「なんと、御無礼をお許しください。お嬢様のことありがとうございます」
礼儀正しい
てか、マジでお嬢様なの?ずっとお嬢様って呼ばれているけど。もしお嬢様だったら、この爺やって呼ばれている人は執事ってことになるのか。今どきの日本でこんな人いる!?
「いやあの……」
下心ありで案内したとバレたらヤバいぞ。俺の直感がそう告げている。
それこそ命を失いそうだ。死ぬ運命を変えるために過去に戻ったのに、その過去で死ぬのは洒落にならないぞ。
「…………当然のことをしただけです」
嘘をつくしかない。バレないことを祈るだけだ。
「爺や聞きましたか?この方は見知らぬ人でも困っていたら助けるという崇高な考えの持ち主ですよ。素晴らしいと思いませんか?」
「はい。お嬢様の言う通りだと思います。この者のことをお聞きしたいのですが、御夕食のお時間が近づいてきてます」
「あら、もうそんな時間だったんですね。そうだ!貴方もご一緒しますか?」
気になるけど断ろう。
ここで首を縦に振るとお礼を目当てに案内したと勘違いされてしまいそうだからな。特に爺やから。今の爺やからのプレッシャー凄いから。うん、そうしよう。
「気持ちだけ受け取ります。いきなりお邪魔するのは迷惑になりそうなので」
「それは残念です。では、また次の機会にご馳走することにします。爺やもそれでいいかしら?」
「お嬢様の仰せのままに」
「えっと、じゃあ俺は帰りますので」
「あ!待ってください」
女の子に呼び止められた。
「お名前を教えてください」
「白倉夏輝」
「夏輝さん…………いいお名前ですね。
過去に戻って初日にお嬢様と呼ばれている女の子と出逢った。
果たしてこの出逢いは青春に繋がるだろうか。
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