第6話 素敵です!立派な考えです!
「落ち着いた?」
「……はい」
周囲に勘違いされるのを避けるために公園に移動した。よく仕事終わりに通っていた。廃れてるなーって思ったりしていたけど、それはこの頃も一緒だったようだ。
まぁ、住宅街から少し離れているため子供もいないんだろう。ここなら俺が不審者だという勘違いをされることはない。
女の子も泣き止んだようで今は落ち着いていた。
「あの、すみません!いきなり泣いたりして。あれは安心してつい泣いてしまって……」
「安心?」
「実は迷子になってまして。道教えてもらえるかもって思うと安心しちゃって……」
やっぱ迷子だったのか。
「まぁ、あれだ。迷子になってると焦ったりもするし仕方ないよ。いきなり泣かれたのは少し驚いたけど」
「それは申し訳ないです。貴方が初めて声をかけてくれたのでつい。何で誰も話しかけてくれなかったんでしょうか?」
「あー……まぁ確かに躊躇うよね」
この子はかわいい部類だ。
テレビで見るような芸能人のように整っている顔。そして服の上からでも分かるスタイルの良さ。ショートカットが爽やかさを演出している。
そんな子に変に話しかけて、変態認定されたら元も子もない。ましては警察に連行されるかもしれない。そう考えると話しかけるのを躊躇うだろう。
まぁ、俺は話しかけるけど。少しでも青春に繋がりそうなことなら逃すわけにもいかない。ワンチャンを狙うぜ。
「えぇぇ何でですか?」
「色々とあるんだよ」
「何か難しそうですね。けど貴方は話しかけてくれましたね」
「ま、まぁな。困ってる人がいたら助けるのが当たり前だから」
「素敵です!立派な考えです!」
女の子は笑顔でそう言った。
あ、かわいい。ずっと見ていたい。
「あら、どうかしました?」
やべっ!ガン見してるのバレた。
上手く誤魔化さないと変態にされてしまう。
「えっいや、どこ行きたいのかなーって。迷子ってことは目的地あるってことだから」
「あ、そうなんですよ!ここ行きたいんです!」
上手く誤魔化せたようだ。
女の子は地図で指をさす。
この公園から歩いて10分くらいのマンションだった。それもタワーマンションだ。働いている時に有名企業の会長が住んでるのって噂を聞いたことがある。この頃から住んでいるかは分からないが。
もしかして、この子がその会長のお嬢様だったりするのだろうか。もしそうだったら少し緊張するな。無礼なことしたりしたら消されたりして。それは物語の見過ぎか……
とりあえず、ほっとくとまた迷子になりそうだし案内するか。
「ここなら俺知ってるし案内するよ」
「え!いいんですか!?嬉しいです!ありがとうございます!」
女の子は見て分かるように喜んだ。
「実は引っ越してきたばかりで不安だったんです。けど貴方のおかげで不安はなくなりました!」
そう言うと、いきなり女の子に手を掴まれる。一方的な握手だった。
「お、おう」
異性の手を握るなんて初めてのことで動揺してしまう。彼女いない歴=年齢には刺激が強すぎる。なんて反応すればいいか分からない。
「あっ、すみません!いきなり手を掴んでしまって……迷惑でしたよね?」
「そ、そんなことないよ。そんなことより……ほら、早くそこに向かおう」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
こうして俺は女の子を案内することになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます