ほんとに過去に戻った!?

第4話 青春しなさい。それだけよ

 目を開ける。

 見慣れた天井だった。俺の家だ。いつの間にか帰ってきてたのか。あまり記憶がない。それに、何か重要なことが起こったような気がする。寝起きみたいな感じでうまく思い出せない。

 思い出さないといけない。そんな気がする。うーん────あ、俺死んだんだった。

 勢いをつけてベットから起きる。そして辺りを見渡す。いつも住んでいる家だ。

 俺を過去に戻した当事者である死神はいない。おかしい。もしかして長い夢だったのだろうか。うん、そうに違いない。死神とかタイムスリップとかあり得ないことだからな。


「あら、やっと起きたんだ」

「うわぁっ!!」


 突然死神が目の前に現れた。

 まるでテレポートしてきたかのようだった。死神だからできることだろうか。それに死神がいることで、現実だったんだと改めて実感する。


「やっぱ現実か」

「何言ってるの。そんなの当たり前でしょ。夢オチとかあり得ないんだから」

「ですよねー」

「何を寝ぼけてるんだか。さっさと目を覚ましてこれ見て」


 死神が渡してきたものを受け取る。

 どうやらホームセンターとかで売っているコンパクトサイズのカレンダーのようだ。2025年版と記されていた。

 その表記を見て、本当に過去に戻ったんだと実感が湧く。今まではどこか信じられなかった自分がいたけど、もう過去に戻ったと信じるしかなさそうだ。

 もしかして死神はそれを狙って渡してきたのだろうか。


「俺に過去に戻ったことを信じさせたかったの?」

「いや、そんなのはどうでもいい。あんたにこの世界の日付感覚を叩き込もうと思って」


 全く違う理由だった。

 けど死神の言うことも一理ある。昨日と今日で年も日付を違うから確認することは重要だ。変な日付感覚でいると痛い目にあうし。


「なんか優しいね」

「別に。あんたがクラスで浮くのは避けてもらいたいだけ」

「それが優しさじゃ────あっいや、何でもありません」


 鎌を向けられて何も言えなくなった。


「変なこと言う暇があるならカレンダー見なさい。今日は2025年の4月6日の日曜日。明日が入学式」

「入学式って1年生からやり直すの?」

「当たり前のこと聞かないで。人間関係が構築された後の2年生や3年生に戻っても、未来を変えるようなことできないでしょ」


 未来を変える?


「未来を変える?過去ここに戻す前に言ってた死ぬ運命を変えるって認識でいい?」

「そうゆうこと。あんたが適当な高校生活を送ったから死ぬ未来になったの。だから今回はしっかりした高校生活を送りなさい」

「高校行ってなかったの知ってるの?」

「そりゃ、死神だからあんたの人生くらい知ることできるよ」

「こわっ────あ、ごめんなさい」


 また鎌を向けられた。

 てか、しっかりとした高校生活ってアバウトすぎると思うのは俺だけだろうか。何をもってしっかりとした高校生活と定義するのか分からない。

 素直に聞くしかなさそうだ。ちゃんと答えてくれるならいいけど。


「あの1つ質問。しっかりとした高校生活って大雑把すぎない?具体例とかないの?」

「青春しなさい。それだけよ」


 青春。青い春。人生の春。

 俺とは無縁だったな。


「もういいかしら。私も準備あるからそろそろ出かける」

「準備?何の?」

「ここに住む準備」

「えっ!?」

「あ、そうそう。奥の空き部屋使わせてもらうから」

「えっ?」

「あんたには拒否権ないから何も言わないでね。じゃあ、また夕方にでも」


 そう言うと死神はそのまま姿を消した。

 一方的で肯定も否定もできなかった。ただ、あの死神的に否定したら何されるか分からないな。これは受け入れるしかなさそうだ。

 てか、女の子とひとつ屋根の下なんて緊張してしまう。ラッキースケベとかあったら────う、背筋に悪寒が走る。……これ以上考えるのは辞めよう。死神はいないが命の危機を感じる。

 俺も明日の準備をするか。


「どうなるんだろうか…………」


 思わず呟いてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る