天川 悠人と放課後
「実は剣道部を辞めようと思ってな……昨日退部届けを出したんだが、思い止まってくれないか? …と言われてな」
桜花は剣道部期待のホープらしいからな…引き留めもするか。
「桜花自身はもう続けるつもりは無いんだろ?」
「うん、まぁ…な」
歯切れの悪い答えだが、この事については前に相談を受けたが『自分で納得ができないなら辞めてもいいと思う』と言ったんだが…多分桜花は、俺なら同じ悩みを抱えてるのではないかと期待したんだろうけど、俺自身はスポーツや格闘技をやってこなかったから、正直全く役にたたない答えしか出せない。
なんでも桜花は剣道で他校との練習試合中に召喚されたそうで、試合相手は全国大会にも出場した選手で、当時の桜花からするとかなり格上の相手だったらしい。
危うく一本とられそうになったタイミングで
試合を観ていた人達は桜花を褒め称えた、対戦相手にまで賞賛されて、真面目な桜花はいたたまれない気持ちになったんだろう。
茜と桃花に理由を聞かれているが、この内容だと桃花が居るとイマイチ話し辛いな…桜花も退部理由については口を濁していた。
―――――
放課後になり、中庭のベンチで自販機で買った、ブラックのコーヒーを飲みながらラノベを読んでいた。
四年前は格好つけるために、苦いとしか思わないブラックを飲んでいたが、
因みに茜は今日は委員長と一緒に文芸部へ、桜花は職員室で剣道部の顧問に説得を受けている。桃花も今日は珍しく部活へ行った。
『桃花ちゃん部活してたんだ』
『まあね』
『ふーん、因みに何をしてるんだ?』
『……り…ゅう部よ』
『……え?』
『料理研究部よ!悪い?!』
突然キレる16歳、誰も悪いとか言ってない。 まあ、意外ではあるな。
『あ、そうだったんだ、桃花ちゃん料理上手だもんね』
『そうだな、卵焼き美味しかったし』
『うぇっ?!』
何だ変な声をだして
『ほ…ほんと?』
『ああ』
『そうなんだ…良かった…あ、因みにアタシの料理を食べたのは家族以外ではアンタが初めてよ?…ね、嬉しい?』
…うん?
『わたしの料理を食べたのは家族じゃなくてハル君が初めてだよ?』
『ぐぬ…』
謎のマウント合戦が始まる。
というか茜の初めての手料理って、卵の殻がふんだんに入った黒い卵焼きだったよね…あれをカルシウムと言い張った茜のドヤ顔は多分一生忘れないよ…。
そんなこんなで三人が終わるまで時間を潰していると、校舎の中から昼間に桜花と話しをしていた男がこっちに歩いてきた。
剣道部なのに射影先輩だったか。
一体俺に何の用なんだろか、何か面倒なこと言われそうな気がするな…
――――――――――
普通のラブコメって難しいな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます