EP.09「遠い宇宙にある星のお話」

 ……宇宙は膨張し続けている。

 誰もが宇宙の果てを知らない。

 宇宙の果てには一体なにがあるのだろうか?


 だが、この広い宇宙には、この地球と同じような星が一つか、二つ……いや、それ以上の数が存在していてもおかしくはない。


 説明のため、今、東園奏太が居る地球を『地球A』と呼び、ティア・ゼペリオ・シュガーライトとソフィア・ニュートラムの居た星を『地球B』と呼ぶことにしよう。


 この二つの星は遠く離れており、現在の地球Aの科学では地球Bを観測することは出来なかった。

 だが、地球Bは地球Aの存在を認識していた。


「自分たちと同じように人間の住む星がある」


と。



 地球Bには、地球Aと大きな違いはなかった。

 この星にも大地があり、山や森、川や海があった。

 そして、空があり、昼間には太陽があり、夜には太陽が消え、朝になると再び空には太陽が現れた。

 空からは、時に雨が降ったり、雪が降ったりした。


 そして、なによりこの地球Bにも植物や動物、人間が存在していた。

 雄と雌という二つの性別があり、その二つが交わることで生命が生まれ、母から生物として生まれ出て、成長し、生き、やがては死んでいく。

 この星の人間や動物、植物にも生命のサイクルがあり、同時に食物連鎖が存在していた。

 ただ人間には知恵があり、植物を育て穀物と野菜にし、動物から肉を得て、それらを料理し、糧として生命を維持させた。

 更に、この地球Bに存在するエネルギーや資源を使い、衣類、家やビルなどの建物、車や電車、飛行機などの乗り物を作り上げ、また書物や、絵、音楽、映像などの娯楽も生み出した。


 地球Bに存在する人間たちもまた、地球Aと同じく自分たちが生活していくのに必要なものを数多く作り上げてきた。

 つまり、地球Bは地球Aと大きく変わりはなかった。


 だが、地球Bには一つだけ、地球Aとは大きく異なる部分があった。


 地球Bに住む人間の身体の中には、『魔力器官』と呼ばれる臓器あった。

 それは心臓の近くに存在する。

 この『魔力器官』は簡単に言うと、『無から有』を作り出す臓器。

 『0を1にする』。『なにもない空間に、なにかを存在させる』。『ある物質を違う物質に変えてしまう』。

 まさに『奇跡』とも呼べる現象を起こすことが出来る臓器だった。

 この『魔力器官』は心臓と繋がっており、心臓から循環される血液と一緒に『魔力』が送り込まれ、この魔力から『無から有』を生み出した。


 これにより、この地球Bの人間たちはなにもない手のひらから火や水、電気などを出すことが出来たし、棒や刃物などの道具を作り出すことも出来た。

 地球Bの人々は、この『無から有』を生み出せる自分たちの力のことを、初めは『奇跡』と呼んだ。

 人々は自分たちが『奇跡』を起こせると知ったことで、その『奇跡』を使い、自分たちの暮らしを豊かにした。

 食べ物、衣類、建物、乗り物、娯楽、エネルギーなど、すべて『奇跡』によって発展させてきたのだ。

 誰もが、この地球Bで生命活動をする上で正しく『奇跡』を使い、いつしか『法』と『秩序』を作り上げ、平穏に暮らしてきた……はずだった。


 だが、いつしか、この『奇跡』を悪用する者たちも存在し始めた。

 この地球Bでも生きる人間たちすべてが、正しい心を持っていたわけではない。

 『無から有』を作れるという『奇跡』の力があるのだから、その力に溺れてしまう者が現れるのも当然だった。

 自分たちの持つ『奇跡』の力によって進んだ文明と科学により、人々は『奇跡』を『暴力』へと変えてしまったのだ。


 そして、この地球Bでも、地球Aと同じように、人間同士による『戦争』が起きた。

 この『奇跡』を暴力と兵器として扱った戦争によって、数多くの命が消えていった。


 だが、戦争はある『英雄』が登場したことで終わりを告げた。

 戦争を終わらせた『英雄』は、地球Bに生きるすべての人々にこう告げた。


「我々が持つ、この『奇跡』の力はすべて、自分たちの暮らしをより良くするために使うべきであった。だが、一部の悪しき者たちによって『奇跡』は悪用されてしまい、戦争が起き、多くの血を流す結果となった。もはや、この力は『奇跡』などではない!我々が長年かけて作り上げてきた法を壊す『魔』の力である。よって、これからは『奇跡』を『魔法』と呼ぶことにし、我々はこの『魔法』の力を正しく使わなければならない!!」


 英雄のその言葉により、『奇跡』は『魔法』と呼ばれ、『魔力器官』から作り出される『魔法』を使うのに必要な力を『魔力』と呼ぶようになった。


 こうして、地球Bは英雄が『王』として頂点に立ったことで新しい世界、社会が作られた。

 『魔法』を悪用する者が現れないように『秩序』と『ルール』を作り、また『魔法』を正しく扱うよう、戦後に生まれた子供達には正しい『魔法』の使い方を学校で学ばせるようにした。


 だが、それでも『魔法』を悪用する者たちは減ることはなかった。

 こうした者たちを取り締まる組織を、英雄は設立した。

 その名は、『パルフェガーディアンズ』。『完璧なる守護者たち』という意味である。



 この地球Bの王となった英雄は、自らを『ロード・シュガーライト』と名乗り、この星のすべてを司る者となった。


 ロード・シュガーライトは『魔法』を正しく扱うことと同時に、『魔法』と『魔力』の進化……。つまり、『魔法』と『魔力』で更に出来ることはないかと研究を進めた。

 それにより、『魔力』をエネルギーとした科学の発展。『魔法』によって生み出せるものや出来ることをよく深く探り出し、『魔法』を戦前よりも更に多様性のあるものにした。

 こうして、ロード・シュガーライトは『魔法』と『魔力』を研究し、新たな可能性を見つけ出すことに成功した。


 やがて、『魔法』によって、宇宙を観測できるまでになった。


 そして、ある日。地球Bは自分たちの住む星と似た星である『地球A』を見つけるのであった。

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