第47話 朱里の地元

第47話


「ふふ、家族で旅行かぁ♪久し振りだなぁ♪」


あの後、俺と母さん(朱里)は暦の家に泊まった。


そして、次の日になり、皆が起きた後…


何故か、新幹線に乗って揺られていた。


「なぁ、暦。仕事とか大丈夫なのか?」

「私は大丈夫。人識くんこそ、大丈夫なの?」

「俺も大丈夫だ。時々、サボる事あるし…」


それより…


「私の、私の皆勤賞が…」


うん、哀れだ。


でも、仕方がない。


何か、朱里には逆らえる気がしない。


というか、天敵感覚が抜けないんだよなぁ…


「で、何処に向かってるんだ?」

「私の故郷♪」

「故郷?アンタ、俺達と同じ土地出身じゃ…」


確か、祖父達も2つ街を越えた所に住んでたし…


「それは照美の方だよ。これから行くのは朱里の方だよ。」


へぇ、そうなのか…


まぁ、そうだよな…


自称人間とはいえ、本当にそうなら故郷くらい在るよな…


「しかし、何で俺達を連れて行くんだ?」

「自慢したいの♪」

「は?」

「自分の家族を、自分の大切な人に、何を犠牲にしても幸せになって欲しい人に。どんな事があっても愛を注ぎ続けると決めた人に!」


この時の朱里の顔を、多分俺は一生忘れられないだろう…


彼女の笑顔はとても輝いていて…


…いつもの化け物らしさは消え、何より人間らしく、誰よりも乙女な顔をしていたのだから。


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「ねぇ、巧望くん。お腹空いた!何か奢ってよ!」

「何で俺が…」

「だって、一応お父さんになるんでしょ!私を甘やかしてよ!」

「なっ、ズルいぞお前!?…理解わかったよ、人織!とことん甘やかしてやるからな!」

「きゃっ、そんなつもりじゃ…えっと………お手柔らかにお願いします。」

「大丈夫だから、安心しな♪」

「その笑顔のせいで、超不安になるんですけど!?」


いやぁ、陽や葵を甘やかすのも良いけど、人織も良いな!


だが、今後はどうしたら良いのだろうか?


差を付けると、色々と拗れると聞いた事があるからな…


「あっ、人識くんが変なこと考えてる…」

「みたいね。あの子、顔に出やすいからちょっと心配なのよね…」

理解わかります…。人織も人識くんに似て、そういう所ありますし…」


おい、こら。


人を出汁にして、母親トークしてんじゃねぇよ。


ていうか、早く行こうぜ。


俺もお前が言う『リュー君』とやらに興味あるしな…


「もう直ぐ着くよ。ほら、彼処!」


と、彼女が指し示す場所には地味に大きな一軒家が建ってあった。


アレが『リュー君』とやらの家…


「さて、行こっか!」

「おい、チャイムは!?」

「面倒!」

「待てや、こら!」


だが、俺の静止虚しく、玄関のドアを母さんは蹴り飛ばす。


おいおい、マジか…やりやがった……


後ろの暦や人織なんて目を見開いて、固まっちゃったし…


「誰よ、こんな事したのは!?」


勿論、派手な音がした為に、直ぐに中から人が出てくる。


だが、その人は…


「えっ、朱里…」


俺の知る雨崎 朱里と瓜二つ、鏡写しにしたかの様なそっくりさんだったのだから…


続く

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