第5.5章 過去編 愛は悪意で汚される

第1話 音崎 暦は人識が好き その2

第1話


あの一件で、私は完全に彼へ惚れてしまった。


だが、最大の障害が居たのだ…


その名は…


「あっ、ひーくん!あれ、その子だれ?」


…二崎 陽葵だ。


最初は燃える様な怒りに心が覆われた。


だって、見れば理解わかるのだ。


彼が一番好きなのは陽葵ちゃんなのだ、と。


でも…


「へぇ、暦ちゃんって言うんだ!一緒に遊ぼうよ!」


彼女は友達の居なかった私と遊んでくれた。


その内に、いつの間にか私たちは唯一無二の親友になっていた。


そして、悔しいけど認める様になっていった。


それでも…


…私の中にある黒い怒り、嫉妬の炎は消える事が無かった。


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それから、数年経った。


私達は高校生になっていた。


私は自分の心を隠し続け、陽葵の親友として、人識くんの女友達として居続けた。


彼らと出会えた私は幸せだった。


だが、それ以上に苦痛の日々だった。


「人識くん、好き…」


年を重ねる程にその想いは強くなり、止まる事が無かった。


離れれば良かったのに、離れられなかった。


私はどうしようもなく、バカだった。


だが…


「あっ、退院おめでとう!」

「うん♪ありがとう、暦ちゃん!」


彼らが事故に遭った時から、奇跡が起き始めた。


最初は違和感を覚えただけだった。


あの陽葵が、人識くんの話題を出す度にほんの少しだけ壁を作る様になっていた。


それだけじゃない。


何故か陽葵ちゃんのクラスの転校生と絡む様になったのだ。


あの、陽葵ちゃんがだ。


でも…


「やった…」


…少し、ほんの少しだけ、希望が差した気がしたのだ。


そして…


「嬉しいよ、陽葵ちゃん…」


あの日、人識くんと陽葵ちゃんは決別した。


理由は理解わからないけど、私には最高の出来事だった。


だから、私は笑った。


大切な親友との関係は切れた筈なのに…


何よりも人識くんを手に入れるチャンスが巡ってきた事が嬉しくて…


「ありがとう、陽葵ちゃん♪」


人識くんを譲ってくれて♪


続く

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