第44話 気不味い空間

第44話


「「「……………………………………………」」」


あの後、俺は暦に引きずられ家へと入れられた。


その後に残るのは沈黙だけ…


正直、俺は何を言っていいか理解わからなかった。


人織の方は終始ポカンとして混乱していた。


そして、件の暦は…


「えへ、えへへ、えへへへ、死んだ人識くんが帰ってきた♪」


と、ずっとニコニコしていた。


最早、恐ろしい位に…


時間は、年月はこうも人を壊すのだろうか…


本当に見てられない。


だが、今帰れば彼女は…


そして、それは人織にも影響が行くだろう。


ああっ!くそっ!本当にままならねぇ!


仕方ない、まずメールで帰れそうにないと伝えておくか…


「ごめんね、直ぐに料理作るからね!よしっ、今日は手に掛けていっぱい作っちゃうぞ♪」


と、キッチンへ向かう暦。


その隙に俺達はこっそりと近づき合い…


「何あれ!?あれ、本当に私のお母さん!?ていうか、何で巧望くんがお父さん扱いされてるの!?」

「本当は後に話すつもりだったんだけどな、俺ってその一崎 人識の生まれ変わりなんだよ…」

「………………………………………………はぁ!?」

「その反応が普通なんだよ。でも、陽葵はちょっとヒントをやれば直ぐに気が付いてくれた。でも、アレは…」


異常だ。


在り方とか見てるんじゃなくて、直視した瞬間に俺だと気が付いたんだ。


これは信じるとは訳が違う。


彼女はどれだけ俺の事を思ってきたのだろうか?


…ちょっと嬉しい。


我ながら本当にチョロいな…


「悔しい…こんなバカバカしい話なのに、信じてる私が居るのと、お母さんの反応で嘘とも思えない……」

「まぁ、信じるか信じないかはお前次第だ。ていうか、本当に大丈夫なのか暦?」

「大丈夫じゃないわよ!あんなお母さん、見た事が無いわよ!最早、キャラ崩壊レベルよ!下手な創作者でもやらない位に!」

「そ、そんなにか…」


どれだけだよ…


でも、俺と居る時はこんな感じだった気もする。


でも、昔と違って…


「折れそうなんだよなぁ…」


何処か歪だ。


まるで、彼女であって彼女じゃない様な…


-----------------------------------------------------------------


「はい、出来たよ!ほら、一緒に食べましょう!」

「お、おう…」

「う、うん…」

「「「いただきます!」」」


彼女が作った手料理を久し振りに食べる。


一口手を着けた途端、気が付いた…


「美味しい…」

「でしょ?」

「お母さん、料理上手だもんね!」


どうしようもなく時間の流れを意識してしまう。


あの時より、更に美味くなっていた。


でも、懐かしい暦の味だった…


ヤバい、泣きそう。


こうして、泣きそうになるのを我慢しながら料理を食べ終わる。


そして、俺は…


「暦、聞きたい事がある。」

「うん、良いよ!」

「もしかして、巧望くん…」


ああ、聞くつもりだ。


本当はお前抜きで話すつもりだったが、もう知ってしまった後だ。


引き返すのも、中途半端に知ったままなのも余計に引きずるだけだしな。


「あの時の事を教えろ。お前は何をしていた?お前は何故、俺を裏切った?」


もう御託はどうでもいい。


俺は直球で聞いてやる。


だが、暦は嬉しそうに…


「解った!今から話すね!」

「お、お母さん…」

「暦、お前…」


こうして、彼女は語り始めた…


…あの時の一部始終を。


続く

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