第43話 対面する過去

第43話


俺は彼女の手を引き、走り出す。


くそっ、新時代を…あの瞬間瞬間を生き抜いた平成が終わりを告げ、令和を迎えたってのに、今時流行らねぇだろ、あのナンパは…


全く、今度雫や陽にもキツく言っとかないとな…


葵にはちゃんと守る様に指導しとかないと…


と、今はそれより…


「これじゃあ、追いつかれるかもな。よし、乗れ!」

「えっ…」

「良いから早く!」

「うっ、うん!」


俺は彼女を背負い、道を駆け抜ける。


懐かしい…


確か、彼女と初めて会った時も同じ感じだったな…


おっと、今は感傷に浸っている暇は無かった!


早くこの場を離脱しないとな!


「はぁ、身体だけは若いんだ!若さの力、見せてやるぜ!」

「た、巧望くん!?」


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少し経ち、周りを見ると誰も居なくなっていた。


俺は安心したと同時に彼女を降ろし、道に倒れ伏す。


「ハァハァ、疲れた…。くそっ、若いとはいえ、無茶は無茶か……」

「大丈夫?後、何か爺臭いよ?」


ほっとけ!精神年齢はアラサーなんだよ!


しかも、後少しでアラフォーだ!


時間って流れるの早いよなぁ…


「ありがとう、助けてくれて。」

「どういたしまして。」


まぁ、困ってる奴が居たら当然だろ。


それが、自分の娘(不確定)だったら尚更な…


それはまだコイツには言えねぇが…


「此処まで来たんだ。送ってく…」

「で、でも…」

「またあんな害虫どもに集られたらどうするつもりだ?」

「う、うん。解った…」


と、正論で黙らせ、彼女と共に歩き出す。


さて、どうして良いか解らん…


二人きりになると、どうしても暦を思い出しちまうから、ボロが出そうなんだよなぁ…


「ねぇ、巧望くん…」

「…何だ?」

「私、どうすれば良いんだろうね…」


と、彼女は泣きそうになりながら問うてくる。


俺にはどう答える事も出来ない。


何故なら…


「それはお前が決める事だ。」

「そうだけど…」

「後悔しても良い。傷付いても良い。お前が本当にこ…お母さんが好きなのなら、お前が決めた事を貫き通せ。どんな過去が合っても、どんな目に合ってもな…」


あの怪物曰く、それが純愛らしいから…


「それに、誰かの答えじゃ絶対に納得なんて出来ないんだよ。自分自身の答えじゃなきゃ、必ず酷い最後が待っている。」


楽な方に流され、死んだ俺がそうな様にな…


「助けて欲しいなら幾らでも助けてやる。だが、その答えは自分で決めろ。」


お前を助ける事なら、どんな事でも俺は惜しまないからな。


「…うん、そうだね。ありがとう、巧望くん。」

「どういたしまして。」

「本当に不思議だね…」

「何がだ?」

「いや、何か写真で見たお父さんの姿に重なるんだもん。」


「全然別人なのにね…」と、彼女は笑った。


やはり、血が濃い程にそうなるのだろうか?


直ぐに気が付いた陽葵や、無意識的に俺を信じた陽の様に…


そんな事を考えていると、俺達は目的の場所に着いた。


「じゃっ、此処でお別れだな。」

「うん、今日は本当にありがとう!」


そんなやり取りをしている瞬間、玄関のドアが突然開き…


「大丈夫、人織!ダメって言ったでしょ!男にそんな近づいちゃって…」

「………………………貴方が人織のお母さんか。」


暦の姿はボロボロに草臥れていた。


陽葵はまだ良かった。


だが、彼女は完全に変わっていた。


お前、それ程にまで追い詰められて…


…クソっ、見てられない!


「俺は帰りますので…」

「待って!」

「えっ…」


後ろを向いた瞬間、呼び止めれる。


そして、彼女は俺に抱き着いてきて…


「会いたかった!ずっと、会いたかった!」

「お前、まさか…」

「ごめんなさい!本当にごめんなさい!だから、私を置いて行かないで!」


クソっ、ズルい…


…ズル過ぎるだろ!


「私達を一人にしないで、人識くん!」

「こ、暦!」


続く

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