第42話 かつて、彼女を救った時の様に…

第42話


人織side


気が付けば、私は走りだしていた。


信じられない、信じたくない!


私のお母さんが、私の大好きなお母さんがそんな事をしていたなんて!


嘘だ、嘘だ嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!


でも、あの人は嘘をついてる様には…


騙されるな…


でも、今のお母さんの姿を見れば…


お母さんを信じないの?


「どうすれば良いの?」


もう何を信じて良いか解らない。


そうだ、早く家に帰ろう!


私は駆け出した。


だが…


「きゃっ!」


派手に転んでしまった…


痛いよぉ…


その上…


「おっ、可愛い子発見!」

「うおっ、マジじゃん!」

「ねぇねぇ、俺達とちょっと遊ばない?」


変な男の人達に囲まれてしまった。


「すみません!私、早く家に帰らなきゃいけないので!」

「つれない事を言うなよ!」

「ちょっとくらい良いじゃんか!」

「そうそう。俺達なら君を楽しませてやるぜ?」


かなりしつこく付き纏ってくる男達。


私の精神は限界に来ていました…


でも、早くお母さんに会わないと…


「ごめんなさい!無理です!」


と、早くこの場から立ち去ろうとする。


だが、男達は許してくれず…


「おい、ちょっと下手に出たからって調子に乗るんじゃねぇぞ?」

「はぁ、最初から言う事を聞いてたら優しくしてやったのによぉ…」

「全く、バカな女だぜ…」

「そんな…」


周りに助けを求めようとするが、近くに居るのは別の男達ばかり。


しかも、目を逸らすか、興味深々そうに眺めてくる者達しか居なかった。


誰も、誰も助けようとする素振りは見せなかった…


そうなんだ…


やっぱり、お母さんの言う通り…


「おい、大丈夫か!」


誰かの声が響く。


この声は…


「よくも人織に手を出してくれたな!このゴミクズどもが!」

「はぁ、何だこのクソガぶべっ!?」

「がはっ!?」

「ぎゃっ!?」


突然割って入ってきた男の子が、私を囲んでいた男達を殴り飛ばす。


そして、その隙を突いて私の手を掴み…


「ほら、もう大丈夫!俺に着いてこい!」


その男の子は、雪崎 巧望くんだった。


でも…でも、少しだけ不思議な感覚に襲われた。


まるで、前にも合った事がある様な既視感。


そして、何より…


「お父さん…」


お母さんが大事にしているお父さん、一崎 人識の姿に重なって見えたのだ…


続く

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