第38話 二人きりと再会と

第38話


高校に入り、久しぶりに雫と二人きりになった。


陽の奴はアルバイト、葵と太一は部活だそうだ。


「久しぶりだな、学校で二人になるのって…」

「中学の最後ら辺はずっと何時ものメンバーだったしね…」

「そうだな、アレはアレで楽しいが…」


それでも、やっぱり…


「お前と一緒に居るのが一番だ。」

「たーくん…」


彼女は此処が学校である事も忘れ、俺の事を抱き締めてくる。


彼女の体温が服越しに伝わってくる。


ああ、温かい。そして、柔らかい。


本当に心地良い身体だな…


思わずのめり込みそうになる。


いや、別に良いのか。


でも、俺はまだ…


「良いよ、たーくん。」

「雫?」

「アソコは駄目でも、唇があるよ?」


発情したかの様な、色っぽい視線を俺に向けてくる雫。


俺は少しずつ雫に近付いていき…


「場所を考えろ!」

「きゃっ!痛いよ、たーくん…」

「抱き着くのは別に良いと思うが、此処は一応学校だからな?誰かに見られたり、撮られたらどうするんだよ?」

「ちぇっ、家までお預けかぁ…」

「お前…」


反省してないな、コイツ…


そんな事を考えていると…


「こら!其処で何してるの!此処は学校よ!自重しなさいよ、バカップル!」

「まだ付き合ってません!」

「でも、将来は必ず結婚します!」

「余計に質悪いわよ!後、惚気ないで!」


と、誰かが注意しに来た。


ほら見ろ、面倒な事になって…


……………………………………………………えっ?


「暦………?」

「えっ、たーくん!?」

「何ですか、その顔は?」


彼女の顔は暦そっくりだった。


思わず、俺は見惚れて…いや、前にも同じ事があった様な……


………まさか!


「アンタ、もしかして、一崎 人織か?」

「えっ、そうだけど…」


やっぱりだ!


あの時、公園で出逢った幼女だ!


懐かしい…


ていうか、年上だったんだな…


マセてお姉ちゃんぶってるのかと思ってた…


「…ん?そう言えば、君の事を何処かで見た事がある様な……」

「俺の名は雪崎…雪崎 巧望です。あの時の公園ではお世話になりました!」

「………あっ!あの時、一緒に遊んで慰めてあげた男の子!」

「合ってますけど、何か嫌な覚えられ方ですね!」


こうして、俺達は再会した。


だが、この再会が俺達の過去を掘り返し、さらなる混沌へ導く事を…


……俺達はまだ知らない。


「で、さっきは何をやってたの?」

「雫が抱き着いてきました。」

「で、その勢いでキスしようとしてました。」

「なっ…本当に何してるのよ貴方達!」

「俺は最終的に止めたのに!」


くそぉ、理不尽だぁ…


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る