第35話 息子を持つ父親の気持ち/陽だけは信じてる

第35話


陽を陽葵の元へ連れて行ってから2日くらい経った後、俺は屋上で…


「…………………………………聞いたぞ、雪崎。」

「……………………………………えっと、何を?」


今度はえっと…葵の方と対面していた。


ちくしょう、今回は雫居ない(陽と一緒に仲良く昼飯タイム)し、モブくんにマック奢る回数が増えたじゃねぇか!


気不味い、かなり気不味い…


まず、顔が転校生そっくりなのが苦手だ。


まぁ、どんな奴かは知らないので、嫌ってはいない。


むしろ、陽葵の子供なので構いたい気持ちはあるのだ。


唯…


…どう構って良いかが解らん!


「ん?何か言いたい事があるのか?」

「いや、特には。…しいて言うなら、マジで何を聞いたんだ?」

「お前が陽を母さんに会わせた事だよ。」


成程、それか。


それが一体、どうしたんだ?


「何で、俺を連れて行かなかったんだ?」

「ああ、それか。まぁ、簡単に言うと、信じてくれそうになかったからな。」


だって、頭硬そうだし…


顔のせいで、問答無用の右ストレートを思い浮かべちゃうんだよなぁ…


「当たり前だ。俺には陽が何故信じてるのかも理解できんし、厨ニの妄想にしか思えん。」

「だろうな。正直、直ぐに信じてくれたアイツ等の方が可笑しいからな。」


俺もそう思うよ。


だって、何処かの小説にありそうな話だしな…


だが…


「ほら、これ。」

「何だ…住所?」

「陽葵のだ。会いに行きたいなら、会いに行け。一人では行くなよ。耐えられるかは解らんからな。」


一応、陽の奴が案内してくれるかもしれんが、念の為にな。


「まぁ、行くかはお前の勝手だ。だが、一つだけ言っておく。」

「………………………………………………何だ?」

「俺は信じなくていい。だが、陽葵の奴だけは信じてやれよ。一番辛いのは確かにお前達だが、アイツも大概だからな。」


何となく、大丈夫な気はするが…


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葵side


陽から話を聞いた時、ぶっちゃけ信じられなかった。


ふざけるなとも思った…


だが、何故か陽は信じている様だった…


俺には奇妙な光景に映ったんだ…


だが…


「母さんの話だけは信憑性があった…」


俺は母さんの顔を見たから理解わかるんだ…


アレは知らない人を見る目だ。


訳の解らない状況、人に恐怖する目だった…


「また、あの目を見るのは怖いなぁ…」


でも、陽は…


『もう大丈夫だよ、葵。お母さんはちゃんとお母さんをやろうとしている。もう元の家族に戻る事はないかもしれないけどさ。私達のお母さんなのは変わりないし、そこからお母さんが逃げる事はないと思うよ。』


誰の言葉も信じれないが、陽の言葉なら信じられる。


だから、俺もお母さんの事情だけは信じてみよう。


…お前に言われなくても理解わかってるんだよ、雪崎。


なので、俺はお前にこう返してやるさ。


「余計なお世話だ、厨ニ野郎。」

「だろうな、シスコン野郎。」

「なっ、誰が!?」

「えっ、違うのか?俺と同じ気配したから、つい同類かと…」

「やめろ!蕁麻疹が出る!」

「いや、其処まで拒否らなくても…」


続く

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