第29話 純愛とは?

第29話


(またか…)

『うん、まただよ♪』


気が付けば、またあの真っ暗闇空間に居た。


いや、今日の昼頃にも来たばっかなんですけど…


『いやぁ、良い物を見れたからね。何も話す事は無いんだけれど、つい呼んじゃった♪』


『テヘッ♪』と、舌を出してあざといポーズを取る朱里。


うわぁ、キツい。何歳だよ、お前…


そんな事を思った瞬間…


(うおっ!?)


何も無い空間からいきなり拳が現れ、俺の横を掠めて地面に直撃した。


しかも、直撃した地面は粉々にヒビ割れ…


『女性に年齢の話はしない事。解った?』

(サーイエッサー!)

『なんてね♪私自身は気にしないけど、他の女の子にしちゃダメだぞ♪』


身を持って思い知りました!


『まぁ、私自身は朱里のスペアみたいな物だし…(都合の)良いシンギュラった私の人格を精神生命体に置換して送っただけだから余計にね…』

(何の話だ?)


何か複雑そうな話が聞こえてくる。


まるで、訳が解らん。


まぁ、気にするだけ無駄か…


『そうだね。…話は変わるけど、凄い選択肢をしたよね、君。』

(…まぁ、自覚はある。)

『だろうね。それに、君は自分さえも許そうとしていない。自罰的にも程があるね。そういう性癖なのかい?』

(誰がドMだ!)

『おや、おやおや?その反応は…』

(図星でも何でもないからな!?)


コイツ、ウザい…


『安心してくれ、君だけだよ♪』

(安心も嬉しくもないわ!)


疲れるわ、本当に…


『それはさておき、君は全部丸投げする事だって出来た筈だよ。私は天才だからね、断言してあげる。陽葵だったっけ?あの子は間違いなく記憶喪失を患ってるよ。でも、それはあの雌豚自身の弱さから引き出された物だ。君が責任を感じる必要は無いし、唯の自業自得で引き起こされた人災だ。それでも、君は自分さえも許さないのかい?』

(それでもだ。あの時、俺は逃げたんだ。逃げた先が今の現状で、今の苦しむ陽葵が居るんだ。俺に仕出かした事に苦しむのは構わない。むしろ、苦しめ。俺もだが、陽葵にも逃げる事は許さない!だが、別の奴に苦しまされるのだけは別だ!もう二度と誰かに陽葵を奪わせない!そして何より、俺は彼女が大好きなんだ。)


泣いて欲しくないと願って何が悪い?


『そうだね、悪くないよ。』

(だろう?)


お互いに笑い合う。


此処やコイツ自身は不気味だが、心置きなく話せるのは良い事だ。


『やはり、君は素晴らしい純愛を持ってるね。』

(前から思ってるけど、その純愛云々って何なんだよ…)

『人を愛し続ける力だよ。どんな相手でも、どんな過去でも、どんな性格、性癖、運命、能力でもね。』


『私の世界に欲しい逸材だよ、本当に。』と苦笑いする彼女。


でも、少し嫌な予感するんだよなぁ…


コイツに選ばれるとロクな目に合いそうにない…


『失礼ね…』

(すまんすまん。)

『全く…おや?そろそろ時間だね、バイバイ。』

(えっ、まさかまた!?)


だが、闇は俺を抑え込んで来ない。


だから、安心してしまった。


しかし、現実は何時も俺を裏切ってくる。


(あれ?)


足場が無くなった様な…


『現実世界へ超特急!』

(巫山戯んな、てめぇぇぇぇっ!)


そう、穴が空きました。


この真っ暗闇空間の地面に。


=落ちました。


今度会ったら、ぶっ飛ばしてやるからな朱里!


続く

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