幕間5 どんな君も好き/お兄ちゃんの為になら/どうか私を…

幕間5


雫side


漸く、たーくんの本音を聞けた。


本当に最低な発言だった。


要するに、真正面から二股宣言なのだ。


まぁ、法律的には問題ないのがアレだし…


それはそれとして…


「嬉しいよ、たーくん…」


悪い気分はしなかった。


ちゃんと、やっと、言葉に出して、私の事を愛していると言ってくれた。


たーくんが一度愛したら一途過ぎる事、自罰的で罰欲しがりマゾな事、許せなくても優しさを割き続ける事。


いや、最後に関してはもう知ってるか。


その優しさに私は救われたのだから。


「私は貴方を裏切りません。貴方から逃げないし、どんなに最低な貴方でも逃がすつもりはありません。」


だから、だからこそ…


「どんな形でも私に向ける愛を絶やさないでください!」


それが、今の私の変わらぬ願いです。


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真宵side


私は絶対にあの女…陽葵を許せない。


何となく、現状を聞きました。


でも、私は『ざまぁみろ!』と思いました。


何で大切なのにお兄ちゃんを忘れたんだよ!


何で平然と傷付ける事が出来たんだよ!


どうせ、またお兄ちゃんを平気で傷付けるでしょ!


でも…


「お兄ちゃん、どうして?」


どうして、優しく笑えるの?


どうして、優しくできるの?


どうして、そんなに優しく触れ合えるの?


解らない、本当にでも解らない。


でも、一つだけ解った事がある。


「お兄ちゃんの目…」


アレは怒りや悲しみ、悔しさが入り混じった混沌の目だった。


ほんの、ほんの一瞬だけど、そう見えた。


そうか、お兄ちゃんだって許してないんだ。


それでも、一緒に居る事を選んだんだ。


お兄ちゃんは頑固だ。


だから、一度決めたらもう曲げない。


私の言葉も無意味だろう。


だがら、私は…


「頑張ってね、お兄ちゃん!」


見守ろう、お兄ちゃんの行く末を。


今の私に出来る事は多分、それだけだから…


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陽葵side


姿形は全く違うけど、死んでしまったひーくんに会えた。


嬉しかった。


ひーくんも嬉しそうだった。


でも、理解わかってしまった。


誰よりもひーくんと過ごしてきたから、直ぐに認識してしまった。


「ひーくんは私を許した訳じゃない…」


物凄い怒りや悲しみ、悔しさを感じた。


いつ爆発しても可笑しくない、近寄るだけで冷や汗が出てくる程の熱を持った激情。


ひーくんはそれを抑え込んでまで、私と一緒に居てくれようとしてくれた。


苦しい、私のした事がナイフで刺してくる。


こんな素敵な人を裏切ってしまったという事実が、私を陸の上で溺れさせてくる。


多分、ひーくんはこれが狙いなのだろう。


もう、お互いに逃げられない。


でも…


「ありがとう、ひーくん…」


…ひーくんから確かな愛情を感じた。


こんな私にも、愛情を割いてくれたのだ。


今の一番は、今世の幼馴染の子だと思う。


でも、それと限りなく近い愛を与えてくれているのだ。


「相変わらず、優しいんだね…」


罰を与えながら、同時に優しさも与える。


彼は私の太陽だった頃から、全く変わっていないのだ。


死んでも、生まれ変わっても。


だから…


「これからも、どうか私を…」


許さないでください愛してください


続く

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