第28話 これからの地獄

第28話


「…本当に最低だね。」

「だろ?でも、これが俺だからな!」


少しの間、沈黙がこの場を支配する。


だが、その空気を破壊するかの様に、雫が喋り出す。


「でも、やっと言ってくれたね。嬉しい、嬉しいよたーくん。」

「ごめんな、雫。俺は俺にしかなれない。だから、こんな在り方しかできない。でも、お前を愛してるのは本当なんだ。」

「うん、解るよ。だって、たーくんは今嘘を付いてないもん。」

「お見通しか…」

「うん♪まるっとすぱっとお見通しだよ♪」


と、お互いに笑い合う。


もしかしたら、俺に失望して雫は離れようとするかもしれない。


その時はその時だろう。


まぁ、諦める気も逃がす気も皆無なのだが…


「…知れて良かった。」

「ん?何がだ?」

「たーくんの事だよ。今日、また一つたーくんに詳しくなれた。もっと、もっともっと詳しくなって、私から逃げられない様にしてあげるね♪」

「それは此方の台詞だっつうの。」


と、互いに向き合い、俺は腕を差し出す。


彼女はその腕の上に頭を乗せ、縮こまる。


そして、俺は彼女に告げる。


「他人から見たらどう思うかは知らん。だが、あの件に関しては、そう思ってる。」

「どうして?」

「推測もあるんだがな、。俺に関しては、。本当ならどんな手を使っても取り戻すべきだったんだよ。」

「自罰的なんだね、また知る事が出来たよ。」

「まぁ、自覚はあるよ。これからはお互いに地獄だぜ。」


彼女は一度裏切った存在と一緒に居続けるのだ。


どうしようもなく罪を自覚しなければいけないだろう。


どうしようもなく、残してきた負債に向き合わなきゃいけなくなるだろう。


でも、逃げる事は許されない。


何故なら…



対して、俺は…


裏切った相手と一緒に過ごさなければならない。


一度、救うと…寄り添うと決めたのだから……


本当は許したい。


でも、許せない。


そんな相手と過ごすのは正直、苦痛でしかないのだ。


例え、彼女の事が大好きだとしても。


全く、我ながらドMだな…


でも、それで良い。


楽な方向に逃げた俺には丁度良い。


逃げた成れの果ての結末が、目の前に居続けてくれるのだから。


「まぁ、色々と落ち着いたら、あの双子の事も気にかけなきゃな…」

「…あの子達の事も支えるの?」

「ぶっちゃけ、男の方はどうでも良いんだが、アレでも陽葵の子供だから。なら、俺の子供みたいな物だ。成人するまでは見捨てられない。」

「ふふ、同級生が子供なんて変なの♪」

「今更だろ?」

「だね♪」


だって、俺は転生してるんだぜ?


それに、前世の妹や前世の元カノ。挙句の果てに、イマジナリーフレンドっぽい怪物みたいな女も居るのだ。


もう、何が来ても驚かない気がするわ…


…フラグじゃないよな?


「そろそろ、寝るぞ。電気消すからな。」

「うん、おやすみなさい。」

「ああ、おやすみ。」


電気を消した途端、スヤスヤと眠り始める雫。


お前はのび太くんかよ…


「…俺は絶対にお前達を許さないよ、陽葵。暦。」


でも、まだお前達を愛しているのも本当だ。


だから…


「早く暦を見つけ出して、一緒にならなきゃな…」


お互いの事を罪を直視続ける為にも、な。


続く

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