第27話 許さないまま
第27話
雫に許すのかと聞かれた時、『何当たり前の事を聞いてくるのか?』と思った。
答えなどとうの昔に決まってる。
「許す訳がないだろう?」
許せる筈もない。
まぁ、大体の事情は今の状況で察しは付く。
彼女に泣いて欲しくないのは本当だ。
彼女を見捨てられないのも本当なのだ。
だが、それ以上に…
…彼女の所業を許せるかは別問題なのだ。
「じゃあ、何で…」
「…雫、俺は少し最低な事を言うぞ。」
「うん、どんなたーくんでも受け入れるつもりだよ。私はたーくんの事をもっと知りたいもん!」
「そっか…」
なら、話すとするか。
前世から抱えてきた物を。
暦の奴にも話していない本音を。
「陽葵の奴を今でも好きだから。」
「………………………………………………えっ?」
はぁ、言っちゃった。
雫も宇宙猫みたいな顔してるし…
でも、もう言った後だ。
全部、ぶちまけるか!
「暦と付き合ってからも好きだった。事故で死ぬ寸前も好きだった。生まれ変わっても好きだった。久しぶりに再会しても、やっぱり好きなままだった。傷付いた姿を見れば俺も傷付いた様に錯覚するし、泣いてる姿を見ればその涙を拭いたくなるし、他の男に抱かれてる姿なんて想像したくないし、幸せになるのなら任せても良いかなと思った事もあったけど、それも許せない自分が居たし、不幸にしたら間違いなく半殺しに行ってただろうし、彼女の子供ができたら自分に出来る最大級のやり方で甘やかしてやりたかってし、彼女が地獄に堕ちるとしたら俺も道連れにして欲しいし、彼女が俺に怒りを向けるのならちゃんと受け止めてやりたかってし、何なら殺してくれるのも有りかもしれないし、むしろ本望な気がしてきたわ。今度、言ってみるか。話が逸れたな。彼女が俺に世界征服を望むならどんな手を使っても実行してみせるだろうし、当時はどんな手を使っててでも彼女を取り戻そうとしなかった俺に怒り心頭過ぎて、今すぐ自分の首を締めて殺したいくらいなんだよ。それに、俺は…」
「解った!解ったよ!陽葵さんへの愛は解ったから!」
と、まだ話足りないのに雫が泣きそうになりながら止めてくる。
ああ、やはり泣かせてしまった。
でも、最後まで話させて欲しかったな。
「じゃあ、何で暦さんという人と付き合ったの?」
「えっ、暦も好きになったからだけど。」
「………………………………………………はい?」
と、再び宇宙猫みたいな顔をする雫。
「俺は陽葵が好きなまま、暦を愛し続けた。」
「お条際が悪すぎるだろう?」と、俺は雫に呟く。
もしたしたら、あの結末はその罰なのかもしれないな…
あんな最後を迎えた癖に、新たな女が出来た筈の癖に。
最後の最後まで、陽葵を好きでい続けた俺への…
…まぁ、それが俺だから。
そして、今も同じ事を繰り返そうとしている。
「今はお前が好きだ、雫。陽葵も暦も好きなまま、お前を愛してる。」
我ながら、本当に最悪な発言である。
続く
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