第3話 僅かな違和感

第3話


「やっと、退院できた!」


本当にやっとである。


思ったより、長く入院したなぁ…


1ヶ月ちょっとは長すぎるよ…


車が嫌いになりそうだよ、全く…


「そう言えば…」


結局、見舞いに来てくれなかったな陽葵…


確か、俺より先に退院した筈なんだけどな…


見舞いに来たのは母さん達と真宵、音崎だけだし…


しかも、音崎は最近辛そうだった。


さりげなく何かあったか聞こうとしたが、普通に誤魔化されてしまった。


…本当に何か合ったら、動くとするかな?


「さて、明日からは学校だ。」


うーん、面倒だ。


休める事自体は嬉しかったのだ。


唯、滅茶苦茶暇なのが問題なのだ…


「はぁ、早く寝るか。」


明日から、また陽葵と一緒に登校する日々の始まりだ…


--------------------------------------------


「あれ?」


陽葵が来ない。


何時もなら、この時間帯なのに…


何か用事でも合ったのだろうか?


それなら連絡してくれる筈だし…


「仕方がない、行くか…」


これ以上は遅刻しちゃうしな…


そして、俺はギリギリに学校に着いた。


クラスに着くと、音崎が迎えてくれる。


「あれ?遅かったね?久しぶりだから、道に迷っちゃった?」

「んな訳あるかい!陽葵の奴を待ってたんだけど、どうやら先に行ってたみたいなんだよ。それで遅れたって訳だ。」


そう答えると、音崎は顔を強ばらせ…


「そ、そうなんだ…」

「ん?どうした、音崎…」


と、何かに葛藤している様な顔を見せる。


やっぱり、何か隠してるなコイツ…


でも、今までの反応から触れられたく無さそうだし…


だが、コイツは…


「音崎…」

「…何かな?」

「言いたくないのなら、別に良い。だが、本当にどうしようもなくなったら、俺達を頼れ。」

「えっ…」

「俺にとってお前は大事な友達で、陽葵の親友なんだから…」


俺は真っ直ぐに本音を告げる。


俺に、俺達にとってお前は居なくちゃいけない存在なのだから…


「…うん、解った。必ず話せる様にする。だから、待っててね。」

「勿論。幾らでも待ってやる。」


だが、俺は気が付かなかった。


彼女が嬉しさと悲しみの混じり合った複雑な顔で、此方を見詰めていた事に…


--------------------------------------------------------


?side


「人識くん、好き。人識くん、好き!人識くん、好き♪」


どうして、彼は此処まで私を好きにさせるのだろう?


もう、抑えるに抑えきれない!


「ごめんね、陽葵…」


それを誤魔化す為に、私は心にも無い言葉を呟くのだった。


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る