第2話 音崎 暦
第2話
人識side
「うっ…」
目を覚ますと、知らない場所に居た。
「知らない天井だ…」
後に、この経験を何度もするハメになる事を俺は知らない。
というか、それは俺も知らない未来の話だ。
「痛てて、何が合ったんだ?」
確か、車が…
「そうだ!陽葵は、陽葵は無事なのか!」
「だ、大丈夫だよ、人識くん!だから、落ち着いて!」
「そ、そうよ。まずは、先生が来るのを待とうね!」
「あっ、陽葵のお義父さんに、お義母さん…」
と、俺が騒ぎ出したと同時に入ってきた彼等に止められる。
その言葉を信じるなら、彼女は無事なのだろう。
「良かった…」
「君のお陰だ、人識くん。昔から本当に…ありがとう!」
「ええ、君のお陰で軽症で済んだの。少しの間入院すれば、直ぐに退院できるそうよ。」
「そうなんですね…」
彼女が死んだのなら、俺も後を追うつもりだったから、本当に良かったよ…
彼女が居ない世界なんて、生きてても意味が無いからな…
その後、彼等が呼んでくれた先生と話をした。
どうやら、俺は地味に長く入院しなきゃならんらしい…
陽葵の方が先に退院するだろうし、暇だなぁ…
学校を合法でサボれるのは良いんだが…
「人識、無事だったの!?」
「母さん…」
そんな事を考えていると、母さんも見舞いに来てくれた。
しかし、仕事は…
「そんなの、アンタと比べたらどうでも良い存在よ!」
「ナチュラルに心読むなよ、母さん…」
『読まれるお前が悪い』と、母さんは言った。
俺、サトラレ系男子だった!?
まぁ、その後はかなり怒られ、それと同じ位に褒められた。
まぁまぁ、嬉しかった。
うん、どうやら、案外俺はマザコンらしい。
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入院して少し経った後、家族以外にも見舞いに来てくれた人が居た。
「いやぁ、本当に良かったよ。これなら、陽葵も笑顔になれる。」
「そう良いながら、ホッペを突くのやめてくれません、音崎?」
彼女の名は、音崎 暦。
陽葵の唯一無二の親友で、陽葵の次に交友がある女子だ。
他の女子?
何か避けられてます。
本当に何でだろうね?
まぁ、俺も陽葵以外にモテるつもりは無いんだけれど…
「でも、本当に良かった…」
と、彼女は泣いていた。
しまった、どうやら俺は陽葵しか見えていなかったらしい。
陽葵の次に、彼女との付き合いは長いのだ。
彼女だって、俺が傷付いたら悲しまない訳がなかったのだ。
「何か、すまんな音崎…」
「何で君が謝るのよ…」
「まぁ、一応、友達だからな…」
「…うん、そうだね。ウラヤマシイ…」
だが、少し彼女は悲しそうな顔をした。
しかも、何か最後は呟いていたし…
まぁ、こういうのは追求しても無駄だ。
藪を突いて、蛇をわざわざ召喚する事ほど愚かな行為は無いのだから…
「ま、また見舞いに来るね!」
「お、おう。ありがとうな!」
と、彼女は帰っていく。
だが、俺は彼女の背中が目から放せなかった…
…嬉しさと共に、悲しさも背負っている様な気がしたのだ。
続く
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