幕間3 引き裂かれた夫婦/修正された彼女

幕間3


急に発狂してしまった彼女は、直ぐにパタッと倒れてしまう。


俺は救急車を呼び、一緒に乗って彼女の側にずっと居た。


「陽葵…」


直ぐに目が覚めてくれ…


僕にあの笑顔を見せてくれ…


…あの時、僕に向けた顔を嘘だと言ってくれ!


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「此所は…」

「良かった!起きてくれた!」


彼女は数時間経つと目覚めてくれた。


だが、これが悪夢の始まりでもあった。


「えっ、誰ですか?此所はどこなんですか?私は確か…」


どうやら、混乱してるらしい。


でも、またあの目だ。


今までの彼女とは違う目だ。


「そうだ!私は車に轢かれそうになって、ひーくんが私を庇って!お願いです!ひーくんは、ひーくんは無事なんですか!」

「陽葵!?ひーくんって誰なんだい?」

「一崎 人識くんです!誰だか知りませんが、教えて下さい!」


えっ、今…


僕の事を知らないって…


「おい、嘘だろ?僕の事が解らないのか?」

「知りませんよ、貴方の事なんか!それより、早くひーくんの事を教えて下さい!」

「嘘だ、嘘だ……」


こんな事有り得ない。


陽葵が僕の事を忘れるなんて…


「本当に解らないのか?僕は高崎 優輝!君の夫だよ!」

「えっ…………………………………………………」


あの時の彼女の顔を、僕は忘れる事は無いだろう。


それ程までに彼女の顔は絶望に染まり、理解を拒む顔をしていた。


「お母さん、大丈夫?」

「倒れたって聞いたよ!」

「えっ、お母さん?それに、私?」


と、そんな中入ってきた子供達にも混乱した姿を見せる。


「まさか、子供達も解らないのかい!?」

「子供!?しかも、私と貴方との子供?違う、私が産みたいのは…」


どんどん、顔が絶望に、真っ青に染まっていく。


そして、遂に彼女は…


「知らない!知らない!知らない!知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない!」


彼女の嘆きは止まらない。


何より、僕はそれを止められなかった。


どうしようもなく、僕は無力だった…


「助けてよ、ひーくん…」


そして、彼女は僕ではなく、知らない男の名を呼んだのだった…


続く

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