第20話 それなら逆に
第20話
お母さん?
陽葵がお母さん?
そうか、やっぱりそうなんだ…
アイツはあのまま、高崎の奴と結婚したのか…
幸せなんだろうな…
こんな良い子供達を産む位だ。
順風満帆な人生なのだろう。
唯の偶然で、運悪く、その立場や椅子を取られてしまった俺と違って…
「くくっ、本当に嗤えるぜ。」
「はぁ?」
「何か笑い出したし、キモッ…」
おいおい、言葉には気を付けてくれよ。
言葉のナイフはかなり致命傷を与えてくるんだぜ?
しかし、笑いがこみ上げてくる。
滑稽だな、俺は…
過去に囚われ、過去の亡霊達が付き纏う。
どれだけ、俺の人生を嘲笑えば気が済むんだ?
教えてくれよ、なぁ?
「ああ、えっと、さっきの問い…だっけ?それには答えるつもりは無い。もう関係ないしな。俺が勝手に囚われてるだけの話だ。陽葵とはもうお互いに知らない人だよ。」
あの約束を忘れた、果たせなかった時点で俺達はお互いに他人で、裏切り者なのだ。
どんな顔をして会えば良いのか、どんな感情を抱けば良いのか。
…それが、今の俺には解らない。
あの時は暦が居たから大丈夫だった。
だが、暦はもう居ない。
今、俺には雫しか居ないのだ。
暦との過去まで乗り越えきれていない俺が耐えられるのだろうか?
「まて、そんなので納得できるか!」
「そうだよ!」
「知るか、それはお前達の都合だろうが。それに、何が悲しくて今の幸せホヤホヤなアイツの現状を聞かなきゃならんのだ。」
ぶっちゃけ、傷が広がるだけだ。
いや、傷じゃなくて最早欠損か。
傷なら治せば済む話だが、失った者はもう二度と戻らない。
後はそこから腐敗や傷が広がらない様にするだけなのだ。
だが、帰ってきた反応は…
「…そんな物、ない。」
「は?」
「お母さんは離婚したのよ!あんなにも仲良しだったのに、急にね!しかも、言葉に出すのは一崎 人識っていう知らない人の名前ばかり!」
はぁ?何で…
…まさか!?
「そうか、解った。」
事情も状況も全く把握が出来ていない。
だが、仕方がないだろう?
例え、過去に何があろうと…
彼女が俺を必要としているのなら…
「教えろ…」
「はぁ?」
「陽葵の居場所を教えろって言ってるんだ!」
過去は消えないし、何なら追ってくる始末だ。
本当に面倒だ。
だから、今度は…
…俺から近付いてケリをつけてやる。
続く
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