第18話 過去の傷痕

第18話


朱里?


何処かで聞いた事のある様な…


いや、それはどうでも良い。


俺は何故、此処に居るんだ?


『ふふ、不思議そうな顔♪』


…と、彼女は微笑む。


心の底から楽しそうに…


『本当だったら、直ぐに君をリュー君色に染め上げるつもりだったけど、私は不完成な存在でね。今の君を絶対にほっておけないの。』


『余程のイレギュラーなんだよ。』と、彼女は言う。


だが、彼女は困った様子を見せない。


寧ろ、俺を愛おしい様に見つめてくる。


そして…


『はぁ、そろそろ時間だね。バイバイ、巧望くん。いや、人識くん。その純愛、見失わないでね。それだと、私が君を選んだ意味がない。』

(おい、それはどういう意味だ!)

『その答えは次に来た時にね。良い子はもう起きる時間だよ。』

(くそっ!放せ!)


彼女がそう告げた瞬間、俺の周りにある闇が纏わり付いてくる。


そして、ジワジワと俺を呑み込んでいき…


…意識が反転した。


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「はっ!」

「あっ、起きた!良かった!」


起きると、俺は保健室に居た。


「びっくりしたよ、急に過呼吸になって倒れるんだもん。」

「すまん。心配させたな、雫…」


どうやら、雫がずっと見ててくれたらしい。


多分、滅茶苦茶ワガママを言ったんだろうな…


…後で謝らないと。


「たーくん、少し良い?」


そして、少し経つと雫が真剣な顔をしてそう言ってくる。


だよな、聞いてくるよな…


仕方ないか…


「苦しいのは承知してる。でも、一体、何があったの?」

「転校生の奴等が原因だ。」

「どういう事?」

「そっくりだったんだ。俺の元から去って行った前世の幼馴染な陽葵と、彼女と結ばれた高崎っていう転校生にな。」


仕方ないと割り切った筈だった。


乗り越えた筈なのだ。


だが、暦に裏切られてしまった俺は不安定だ。


そのせいで、余計な古傷まで浮き彫りにしまった様だ。


「前世の幼馴染!?どういう関係だったの!」


どういう関係か…


彼女は俺を意図せず裏切り…


「元カノだよ…暦より前のな。」


俺が自分の意思で裏切ってしまった存在だ。


続く

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