第15話 冬の国
「月雫様!外をご覧下さい。雪ですよ。春の国ではなかなか見ることは出来ないでしょう。」
しばらく走っていると楽しげに風月さんが言った。子どもみたいだな。
「ふふ、貴方は冬の国に住んでいるんでしょう。冬の国に居て雪をそんなに喜ぶなんて貴方くらいよ。」
「そうですね。でも良かったです。」
風月さんは照れながらそう言うと、
「キリさん運転変わりましょうか?」
尋ねた。
「雪道の運転経験はあります。もう着くので大丈夫です。」
と答えて運転を続けた。
キリに雪道を連れて行って貰ったことはない。
しかし学校の講習であったと言っていた。それにキリだって私専属の馬車士だったのでは無い。
きっと嘘ではないだろう。
しかし指先が冷えるだろう。キリは確か手袋をつけていなかった。
服装も薄かったような気がする。
「どのくらいで着くかしら?」
「冬の国は春の国程道は混雑しておりませんから、そんなに時間はかかりませんよ。そういえば、冬の町の王都に寄り道をする予定がありますからそれを踏まえると…。」
冬の国の王都に寄り道!
「待って!冬の国の王都に寄り道するってほんとうなの?」
「ご存知ありませんでしたか?」
「知らないわ。」
そう言うと風月さんはゴホンと小さく出して、
「
旅行等をして国を超える際には、キリさんがしていたように国境の門番の方に、国を渡る理由や国への許可証が提示します。
移住、つまり今回のケースでは国を超える際にすることを加え、移民先の国王と挨拶する必要があるのです。」
と国を超えるルールについて説明した。
確かに他の国へ訪れるときはよくいたし、父上は国王陛下として挨拶されていたな。
「移民先の国王への挨拶。」
正直気が重い。移住出来たらしばらく位の高い人には会いたくなかったのに。
腫れの物のように扱われるし、見下さられるし、良からぬ噂を立てられる。いやもしかしてもう私は春の国と同様に広まっているかも。
「大丈夫ですよ。挨拶と言ってもすぐに終わるものです。冬の国は1番国民性の良い国です。懸念されるようなことはございません。」
ニコニコと安心されるために風月さんは言うが、国民性がいい国なんて聞いたことがない。
「ふふ、冬の国の王都に到着しました。さあ参りましょう。」
とキリが愉快な声で言った。
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