第11話 国境の街

キリは宣言通り5分程度で馬車を走らせ、街へ到着した。

国境と言うだけに、様々な人種が入れ混じって、とても豊かに見える。おそらく1番色んな人が協調しあい生きているのだろう。

一方、チラホラと軍団が配置されていて、厳しさも感じた。そして国の境には針のついた塀があり、出口と入口は1つのみだった。


「それでは私は手続きをしているので、月雫様と風月さんで街を回っていてください。てきとうに食料も調達するので、ご心配には及びません。それではそんなに時間はありませんので1時間ほどで馬車の前に集合しましょう。」


キリは一方的にそう告げるとスタコラと唯一の入口の方へ歩いていった。

何故あんなに喜んだのに、キリは1人で行ってしまったのだろうか。


「キリさんはああ仰っていたので、行きますか。」

と馬車の前で置いてけぼりにされた風月さんはいった。そして私と風月さんは宛もなく歩き始めた。


そういえば私はこの街に来た事がある。

3年前に白露の城に訪れたとき、今回のような形でお昼を買いに来た。あのときは楽しかったな。父上と蒼人兄さん、湊音兄さん、陽葵、茉依と私の6人で旅行へ赴いたのは初めてで最後だった。


そもそも兄さん2人と父上が同時に国から外へ行くなんて、ありえない話である。

何故それが出来たのだろうか。


まあそのくらい春の国から冬の国へ向かう時に憩う場所なのである。

「風月さんはよくこの街に行くのかしら?」

「はい。とは言っても1時間もいた事はありませんが、春の国に行く際は通るのでその時に立ち寄る程度です。」


私にはもう縁のない土地になるのか。

この国境を抜けたら、私は完全に春の国に訪れることが出来なくなる。


「月雫様ここら辺は屋台やレストラン、カフェがあるところです。何か気になるものありますか?」

「えっと、やはりあまり重くなくて、スープのようなものがいいわね。あとあまり店内に入りたくないわ。」


もし気に入ってしまったら悲しいですものね。生涯訪れることは出来ないのだから。

昔は食とあれば拘りに拘り抜いていたのにな。


「はは、月雫様は変わられているようですね。貴族様なのに屋台をお好みになるなんて。」

小馬鹿にされたような気がする。

「私はあまり貴族として褒められた行動をしていませんでしたから。期待に添えなくて申し訳ありませんね。」

するとさらに笑いだして

「いいえ、やはり月雫様はこうでなくては。」

と風月さんは言った。

彼は一体私の何を知っているのだろう。


「それではスープを購入して、広場があるのでそこで頂きましょう。」


そう言い手を引いた。

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