第2話 私の大好きな兄弟姉妹

「どうぞ。」

ノックの応答すると勢い強くバーンっと音を立てて入ってきた。


月雫るな!貴様本当にこの国を出ていくつもりなのか。」

第1王子であり、私の実の兄である蒼人が怒りを露にやってきた。

蒼人兄さんは将来国王様に絶対になることを使命として生まれながらに背負っている。

そしてあの聡明な父上の血を色濃く引き継ぎ、頭が良く、人を引っ張るカリスマ性というものが備わった人だ。

きっと良い国王様になるだろう。

しかし父上とは異なり、身内のこととなると冷静な対応が出来ない。

そこは彼の母上に似ているのであろう。

証拠として、蒼人兄さんの名前をそう呼べるのは蒼人が身内で『国王様、第1王子』と呼ばれるのは悲しいと、家族に強制させているからである。


「御父上はあれほどチャンスを与えてくださっていたのに、どうしてあのようなことをしたのだ!」

「蒼人兄さん出国前に叱らないで。それに私の性格を知っているでしょう?」


たんたんと準備を進める。

蒼人兄さんは苛立ちをなんとか腹の底へ納め、ため息をひとつ漏らした。

呆れた妹だとグチグチ言ってはいるが。


「月雫姉さん、本当に行ってしまうの?」

うるうるとした瞳に幼い容貌、赤茶色のハーフツイテールの可愛らしい私の妹、第3王女茉依が私の裾を掴み言った。


今まで王族のものは国外追放により出国したことなんて1度もない。

つまり出国まで銘じられる罪を犯したのは私が初めてである。


「茉依、私の服を離して。準備が出来ないでしょう。」

頭を撫でながら茉依を納得させるように伝えると、名残惜しそうに手を離した。


「茉依、こちらにおいで。」

優しい声で妹を呼ぶ声。

茉依はすぐにその声の方へ向かい、泣き声を密やかにあげた。

第2王子湊音であり、私の2人目のお兄さんだ。

湊音兄さんはとても優しく、平和をこよなく愛する。ちょっと心配性がすぎるけど。

きっと蒼人兄さんを上手く支えてくれるだろう。

精神的に見たらもう紳士な老人のような人だ。

渋い緑色の髪色をしていて、タレ目の可愛らしい容貌をしている。


「湊音はこのようなことが起きてどうして冷静にいられるのか!」

蒼人兄さんが再び漏らす。

「起きてしまったことはどうにもならないからね。」

きっと怒りを完全に抑えながら話している。

そのため自分の手をぐうに強く握りしめている。


「馬車の準備は出来ているかしら?」

私がそう聞くと湊音兄さんは窓を見て

「僕が準備させたよ。うーん、月雫はしっかり者だから分かるだろうけど、戸締りはしっかりするんだよ。夜道は危ないから。」と告げた。


湊音兄さんの声は私は大好きだった。2つ離れていたけど、大人と話しているように感じて。


「心配してくれてありがとう。それでは私はいきますね。」

目一杯詰めたかばんを5つある。これは2回に分けて行かなければならない。

私が2つの荷物を持とうとすると、持つよ。と湊音兄さんが5つの荷物を持ちあげた。

そして不安そうに言う。


「白露の城まで僕もついて行こうか?男手もいないで心配だよ。」


私の馬車を運転される方は女性である。しかしそこいらの男よりずっとたくましい。

私が15歳の頃から3年間お世話になった人だ。

しかし湊音兄さんからすれば、優しくすべき弱い存在である女だ。


「大丈夫よ。彼女の腕は信頼しているもの。それにしばらくすると、使用人として雇った男の人も乗車するらしいから安心して。」


困ったような顔を浮かべた湊音兄さん。

「そうかい。でも荷物は運ばせて貰うよ。」


そう言うと前へ進んで行った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る