立ち入ってはいけない場所④
その後は特に何も起こらなかった。
慶太と晃は相変わらず竹林での記憶を失くしているし、俺もわざわざ掘り起こす気にはならなかった。何より、光一がいなくなったことが偶然ではない気がして、あの竹林のことを考えたくなかったのだ。
そうして長い年月が経ち、俺も社会人になって故郷を離れた。
竹林での出来事は忘れたくても忘れることができなかったが、よくよく考えてみれば俺はあそこで怖い思いはしていない。
無いはずの家を見つけて、慶太と晃に異変が起こって、光一が心霊写真を撮った程度のことしか起こっていないのだ。
そう考えたら、祖父の言っていたことを鵜呑みにして怖がっていた自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。
そんなある日、珍しく母から郵便物が届いた。
「光一君から届いていました。転送します」
とメモ書きが添えられている。
(光一……!?)
思わず手が震える。中には、質素な茶封筒が入っていた。
差出人名は"光一"のみで、住所は書かれていない。
恐る恐る封筒を開けると、中には数枚の写真と一枚の便箋が入っていた。
写真は全て、あの竹林の中で見つけた家の写真だった。
四ヶ所から撮った外観の写真が4枚、そしてその他の写真は室内の写真だ。
やはり光一はあの後ひとりで竹林に入っていたのだ。
「なんでこんな写真今更……」
室内の写真には、身体のあちこちを食いちぎられたような幼い子供がたくさん写っていた。もちろん生きた人間ではない。
そして最後の写真には、口の周りを血で汚したずぶ濡れの女が写っていた。
便箋にはこう書かれている。
『あの家に行ってから、女に食われる夢を見る。今もまだその夢を見てる。多分一生見続けると思う。
お前はもう二度とあの竹林に行かない方がいい。 慶太と晃もだ。
多分あの2人がなんとか助かったのは、女を見ていないからだと思う。
慶太と晃が見たのは子供の霊だけだったんだ。そんな気がする。
俺は女と目を合わせてしまったからもうだめなんだ……』
それっきり、光一から手紙が届くことはなかった。
慶太と晃とは今でも連絡を取り合っているが、竹林の話題も光一の話題も出したことがない。なんとなく避けている。
竹林はどうなったかというと、今は新興住宅地になってる。
曰くが残っているのかどうか、確かめることはもうできない。
終
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