立ち入ってはいけない場所①
子供の頃に住んでた田舎の町に"絶対立ち入ってはいけない"と言われている竹林があった。
どうして入っていけないのかと問いかけても、親は何も教えてくれない。
そうなると入ってみたくなるのが子供というもので、俺と親友の慶太、光一、晃の4人で竹林に行ってみることにした。
忘れもしない、小4の夏休みのことだった。
竹林は学校からそう離れていない場所にあり、全体を柵で囲まれている。
竹林の周辺はいつも静かで車もほとんど通らない為、柵を乗り越えて入っても誰にも見られない。
俺達は竹林から少し離れた場所に自転車を停めておき、言い出しっぺの慶太を先頭に柵をよじ登って竹林に入っていった。
竹林は夏とは思えないほど冷んやりしていて、とても気持ちがよかった。
「すげーな、外から見ただけじゃわからなかったけど、中から見るとこんななんだな」
カメラを持ってきていた光一がパシャパシャと写真を撮る。
竹の間から太陽の光が差し込み、さながらかぐや姫のような神秘的な光景が広がっていた。
しばらく歩いて行くと、晃が「おい、あれ!」と声を上げた。
晃が指差す方向を見ると、小さな建物がある。
晃「ちょっと行ってみようぜ」
俺「人いたらどうすんの?」
晃「いる訳ねえだろ。多分廃墟だ」
恐る恐る建物に近づいていくと、確かにボロボロに朽ちている廃墟のようだった。
二階建ての和風建築で、入り口の戸は壊れて半分開いている。
「これ中入れるんじゃね?」
慶太がそう言って戸の隙間をくぐった。
「お、おい、やめとけよ」
俺と光一はさすがにちょっとビビって止めようとしたが、慶太に続いて晃も中に入ってしまった。
「はあ〜あいつら本当怖いもの無しだな」
光一が呆れたように笑う。俺も同感だった。
大人に見られて怒られたくないという気持ちも当然あったが、それ以上になんだか"嫌な感じ"がしていた。
言葉にするのは難しいが、なんとなくここにあまり長居しない方がいいんじゃないかと思っていた。
それからどれくらい経っただろう。
慶太と晃は無言のまま建物から出てきた。
「おうお帰り。どうだった?」
俺が聞くと、慶太は汗だくの額をTシャツで拭って「帰ろう」とだけ言った。
晃も無言のまま何度も頷いている。
心なしか、2人の顔色が悪い気がした。
その後は俺と光一もほとんど喋らず、チャリをかっ飛ばしてそれぞれの家に帰った。
翌日、光一から電話で呼び出された俺は光一の家に向かった。
「あの2人、なんか変だったよな」
光一もやはり違和感を感じていたようだ。
「だよな。考えられるとしたら、あの家の中で何か見たとか……」
光一はあの後、慶太と晃に電話をかけたのだという。しかし2人とも疲れて寝ているとの事で、話すことが出来なかったらしい。
「そんで今日も電話したんだけどさ、2人とも熱出して寝込んでるらしいんだ。おかしくね?2人同時にって。絶対なんかあるよ」
光一の言いたいことがなんとなくわかった。
光一はあの建物に"何か"があって、慶太と晃が何らかの"祟り"でああなったと思っているのだ。
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