閑話休題 1

ポーズ1 二人の出会い

ため息しかできていない、今の現状をなんとかしたい。

あたしは、自分に自信がない。

前というか、昔はそうでは確かになかった。

オシャレもちゃんと頑張って、妹にしっかりと尊敬される存在だった。

でもいつからだろうか、尊敬される存在になれなかった。

だから自分を隠すようにした。

女性らしさを磨くためにということで、筋トレをして胸を大きくすればいいということで頑張ってやったのだけどそれを見た妹には気持ち悪いと言われてしまった。

これが女性らしさを身に着ける方法だと思っていたのでショックはさらに大きくなり、さらにダボっとした服で体系を隠すようになった。

違うことを少しでもして、女性らしくなって自身を持ちたい。

そう感じたあたしはゲームをしてみることにしたのだ。

現実に近いゲーム。

そんなことをうたわれているゲームであたしは久しぶりにしっかりとした服装になっていた。

本当に現実に近いゲームというか質感に衝撃というか、ゲームというものはこういうものなんだということを初めて知ったのだ。


「すごい、ゲームってこんなのだったんだ。」


驚きしかなかったその状況に、あたしはいろいろ見て回りたくなり、いろいろな場所を歩いていた。

でもそれがダメだったのだろう。


「ねえねえ、お姉さん。遊ばない?」

「えっと…」

「いいじゃないですか」

「えー…」


そんな感じでナンパをされていたのだ。

正直に言ってしまうと相手を見ても全くタイプではない。

こういうことを言ってはいけないのかもしれなけれど、自分が鍛えることにはまってしまったからか、か弱く見える男の子がタイプなのだ。

だから、こんなチャラチャラしたタイプは無理としか思えなかった。

というか、今日はゲームが配信というか発売された初日。

それなのにやっていることは、最初からナンパとは…

それくらいしかやることはないのかと疑問に思ってしまう。

これでもあたしは、やる前にはしっかりと調べるほうなので、このゲームについてもそれなりに調べていた。

その情報によると、このゲームでは現実と近い感じで遊べるという。

現実と近いということは、現実では妹に尊敬もされないあたしでも、この世界では尊敬される存在になれるのではないのかというものだった。

だからこそ、可愛さと強さを求めるという意味では、いいものだと思っていたのだ。

それにしても、これをどうやり過ごせばいいのか…

今現在の状況を確認しながらそう思う。

本当にどうしたものかという…

ただ、そんなときだった。

急にというべきか、颯爽とそこに現れたのは、かなりダサい服を着た人だった。

えっと、何?

唖然としすぎて言葉を失っていると、割って入った奇抜な人は口を開いた。


「ちょっと、嫌がっているんですからやめなさい」

「ああ?なんだ?変な恰好して、ブスには興味がないんだよ」

「ふ…確かにわたしはブスです。ですが、女性を守る紳士ですから!」

「何をわけのわからないことを…」

「おい、こいつさっき噂が出てた…」

「ちっ」


何か姿を確認すると、男二人は舌打ちをしてからその場を後にした。

何とかなったことに感謝をしつつも、その恰好をしているのが、先ほどの声から確実に女性だということがわかったあたしは、お礼を口にする。


「あの、ありがとうございました。」

「いえ、同じゲーム女子として、純粋にゲームを楽しもうとしている人を助けたいだけですから」

「そ、そうですか」


かなり言っていることは確かに紳士。

だけど、恰好が残念すぎた。

かなりスタイルがいいことはわかるのだけれど、どうして上がピエロで下が甲冑?そしてサングラスに口元には何かガスマスクのようなもので、髪もツインテールかと思いきや、後ろも結んであるのでスリーテールというべきか…

サーカスにでもいけば喜ばれそうな格好だ。

そもそも、こんな服がどこに売っているのかも疑問になるところだ。

そして、そんな恰好をしている女性を見て、あたしはどうにかしてしまいたい気持ちになった。


「あの?その恰好で今後もプレイするんですか?」

「はい。わたしはこの恰好が気に入っていますので」

「でも、そんな恰好で来られたら、正直怖いよ」

「えっ?」

「えっ?」


お互いになんでという顔になる。

えっと、本当にこの人はこの恰好でいけると思っていたのだろうか?

疑問にしか感じない。


「怖いんですか?」

「そうですね。正直に言ってしまうと不気味ですね」

「そ、そうなんですか…気に入ってたのに…」

「あはは…」


さすがに苦笑いしかでなくなる。

だって仕方ない。

その恰好が気に入っているとか、さすがにあたしではありえないのだから…

確かによくある画面越しに見るアバターというものであれば、自分ではないというのがわかるので、奇抜な恰好を面白いとか個性があるということに納得する。

でも、ここは現実に近いゲーム。

今着ている服に関しても、現実とは肌触りが違うなと感じるくらいには、しっかりと感覚がある。

それなのに、この人が着ている服といえば、甲冑とかで、逆に普段着がどんなものなのか気になってしまうくらいにはおかしい…

素顔が気になる…

でも外してとは言いにくい。

そう思っていたが、先ほどの不気味という言葉でさすがに素顔を見せないのはまずいと思ったのか、女性はサングラスとマスクを外したとき、その顔に見覚えがあった。


「え!絵里先生?」

「えーっと、わたしと会いましたっけ?」

「去年の新人の先生で学校に来られましたよね?」

「おふ、もしかしなくても生徒さん?」

「はい。見た目は違いますけどね」

「いえ、なんとなくわかります。もしかして朱莉さんのお姉さん?」

「そ、そうです」

「そ、そっか…」


き、気まずい。

こういう時って何を話せばいいのだろうか?

学校でもボッチなあたしにはわからない。

そんなふうに頭を抱えてしまいそうになると、絵里先生が笑う。


「こ、こんなところで出会うとは思いませんでしたが、えっとよろしくお願いしますね、えっと…」

「シズエです。」

「わかりました、シズエさん。わたしはノエと呼んでください」

「えっと、絵里さんじゃないんですか?」

「ほ、本名はマナー違反」

「ええっと…」


そうして、あたしはノエさんと初めて出会った。

その後、ゲームのやり方についてしっかりと教わり、気づけば時間は一時間ばかり過ぎていた。

どうやら、プレイヤーネームも本名じゃないほうがいいということをこの時に知った。

だからあのときに本名を連呼するのがダメだったのだろう。

確かに、あんな奇抜なファッションでは現実の人にばれてしまうのは恥ずかしいだろう。

ただ、流れで何もわかっていないあたしと一緒にクエストに行こうとなった時だった。


「さすがにやめて」

「ええ…わたしのお気に入り…」


そのままの姿で教わったギルドというところに行こうとしたときに、またあの恰好だったのだ。

それで大丈夫だと思っている神経を知りたい。

さすがにあたしでもそこまでの恰好はしない。

それに注目のされ方がこんなのじゃ嫌…

チラチラとあきらかに奇異の視線を向けられるあたしの気持ちも少しは考えてほしい。

ということで、先に服を買いなおし、クエストを行った。

それも三つも…

なかなかにスパルタと言ってしまえばいいのか、わからないけれど、お昼前までそれは続いた。


「意外と体力ありますね、シズ」

「ノエこそ…」


呼び方が最初から遠慮がなくなっているのには、最初からクエストがゴブリン退治で、確かに数は少なかったが、その見た目からかなり攻撃をするのも嫌だったし、よけられたり、攻撃されるのをビビりながら行っていると、言われたのだ。


「なんですか、その貧弱な感じは!」


普通であれば怒りはしない。

そのはずだったのに、その言葉を言っているノエがまさかの後ろから魔法放っているだけというところを見て、思わず言ったのだ。


「いや、あんたも前で戦いなさいよ」

「え?わたし魔法使い、無理」

「なんだってー」


そんなことをしながらも、戦っているうちに仲良くなったのだ。

最初からノエの口が悪かったのは、お気に入りの恰好を辞めさせられたからだ。

だからって、経験者が初心者を無視していいものなのかを聞いてみたい。

そうして一折りのクエストを終えたあたしたちは休憩をとっていた。


「ねえ、ノエ…もしかしなくても現実であんな恰好してないよね?」

「そんなことはないよ。わたしだって、外に出るときはちゃんとわきまえて、ジャージだから」

「ええ…やっぱり私服…」

「いいでしょ。学校ではスーツなんですから」

「よし、それなら、あたしがちゃんといい服を選んであげる」

「いい…」

「これからゲームのオフ会とかあっても行ってあげないよ」

「よろしくお願いいたします。」

「よろしい」


どうやら、自分にファッションセンスがないことをしっかりとわかっているみたいだ。

ちゃんと自覚があるということはちゃんと服装をできるということだ。

それにたぶんだけどわかっているのだろう。

今後教師として避けては通ることができないイベント…

簡単に言うと、修学旅行などの引率の際にはさすがにずっとスーツというわけにはいけない。

だからこそ、現実世界でも会うことになった。


「それはなんですか?」

「ジャージです」

「えーと、まずは身だしなみからかな」


そうしてまずは髪を切って、化粧をして…

服も買ったところであることが起きたのだ。


「お姉さんたち…俺たちと遊ぼうぜ」


古典的なナンパだった。

鬱陶しいと思いながらも無視をして横を素通りしようとしたところだった。


「おいおい、無視はないだろう?」


その言葉とともに、絵里先生の手を掴まれた。


「いた!」

「おっと、掴む強さが強かったか?でも悪いのはお前たちだぞ、無視して逃げようとするかいでででで…」

「おい、さすがに調子にのるな」

「いだい、いたいから…」

「えっと、痛い?」

「すみません、すみません。もうどこかにいきますから」

「よし」


簡単にナンパ男を撃退した。

良くも悪くも筋トレをしたおかげというか、せいというか…

そんなことをしながらも時間はすぎていく。

なんだろう。

これまで素直にやってこれなかったのに、ようやくというべきか、素直になれた気がする。

その後。

二人で仲良く出かけていたところを学校に報告されて気軽に一緒にいられなくなってしまうのだけれど、それはマヤやんと出会うタイミングの少し前のことだった。

これにも実は朱莉がかかわっていたというのは後から知ったとか知らないとか…

でも、朱莉と比べられて、落ち込んでいたからこそ、不貞腐れていろんなことしてゲームをやったからこそ、あたしはみんなと出会うことができたということを考えればいいことなのかもしれない。

そんなことを思いながらも、あたしは簡単にノエと出会いと、そしてあのときにチャラ男に絡まれていたマヤやんを助けたというべきか、声をかけたことに対してのことに自分をほめながらも、あたしは今日もマヤやんやノエ、レイラたちとこの世界を楽しむのだった。

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