第12話 決闘?そして…

「ふう…来ていないか」




あらかじめ決めていた場所であるマエリア山脈までの道のりにある、岩に囲まれた場所に来ていた。


ただ、ここにいるのは朱莉さんとその仲間である男二人、そしてノエさん、エリカさん、ギルドマスターだ。


レイラさんやシズエさんの姿がまだなかった。


やっぱり僕が勝手に話をしてしまったことなのでこないのは仕方ないこと。


そう思っていた。




「どうするの?そっちは一人だけどやるの?」


「やるよ」




僕は前に出る。


中央にはギルドマスターが立っており、大剣を構えている。


僕は木剣の中から手堅くショートソードをとり、朱莉さんは槍を、ほかの二人はロングソードと片手斧を持っている。


なるほど、これは厳しいかもね。


といってもやるしかないよね。




「それでは、ルールを説明する。今回は魔法の使用を許可する代わりに、初撃決着というわけではなく、こちらがやめというか、もしくは戦闘を一時的にでもできなくなるような状況になれば終了とする。よいな」


『はい』


「よし、それでは両者構え…はじめ」




三対一。


それは普通であれば一瞬で決着がついてしまうものであるが、そうではない。


理由は一つだ。


三対一という状況をうまく活用するということだ。


一人対複数で相手をするときに一番重要になってくるのは、相手の間合いを把握すること、次に誰がどんな攻撃をしようとしているのかを考えて行動することだ。


それさえできれば…


いける!




「す、すごい」




エリカさんが感心したように声をあげる。


それはたぶん、三人の攻撃をしっかりとよけているからだろう。


初手はリーチがある朱莉さんからの突きを体を捻りながら避け、次に左右からの攻撃をどちらが先に攻撃が来るのかをしっかりタイミングを計って、剣で弾く。


最初に斧、そしてロングソード。


そしてバックステップで距離をとる。


そこまでがワンセットだ。


といっても、朱莉さんたちもバカではない。


というよりも、すぐに攻撃のやり方を変えてきたのだ。




「火よ、陽炎を作り相手を幻惑せよ、ミラージュ」




これは…


魔法を唱える言葉でなんとなくわかったことだけれど、これはたぶん蜃気楼を起こすものだ。


相手から見えづらくなる魔法のようだ。


熱い日のアスファルトにから立ち上る熱気でその先が見えにくくなることがあるだろう。


それが目の前で起きている。


見えることは見えるが、それが本当にそこにいるのかと言われれば、わからなくなる。


そういった感じだ。


さすがにまずい、そう感じていたときだった。




「土よ、地面を揺らせ、アースクエイク」




その言葉とともに地面が揺れた。


それは僕たちがいる一帯で、僕もその揺れでバランスを崩す。


ただ、その体を後ろから支えてもらう。


支えてもらった相手は言うまでもないだろう。




「シズエさん…来たんだね」


「それは…だってアカリがいるからね」


「そっか…」


「うん」


「それなら、ボクは朱莉さん以外の二人の相手をしようかな」


「えっと、いける?」


「任せて」




そうして、朱莉さんとシズエさん。


僕とそれ以外との戦闘が始まったのだ。







あたしはやっと少しはまともになれたのだろうか?


そんなことを考える。


それくらいにはあたしは打ちのめされていたし、レイラがいなければ、たぶん立ち直れていなかった。


そう思うくらいだ。




「バカ姉、もう逃げるのはやめたの?」


「あたしはバカ姉じゃないから」




そういわれて、いつもであれば何も言えなかっただろう。


でも今は違う。


それはたぶん、レイラからの特訓を乗り越えたという点が大きいというのもあるけれど、隣にいる存在が大きいのだろう。


マヤやん。


かなり不思議な存在だ。


隣にいて一緒に戦ってくれているだけで心強く、あたし自身もやる気に満ち溢れてきているからだ。


それに気づいたのか、アカリは持っていた槍を構えるのではなく、肩にかける。


そして、首を振る。




「好きな人ができただけでそんなに変わるなんて、本当に乙女なバカ姉っぽいね」


「あたしは…バカ姉じゃないって言ってるでしょ?」


「じゃあ、なんなの?」


「あたしは、これからちゃんとお姉ちゃんになるの」


「ふーん…そっか、それなら…あたいに勝ってちゃんとお姉ちゃんになってよね」


「え?」




久しぶりにアカリにそう呼ばれて、一瞬言葉を失っているときに、戦闘は始まった。


アカリは突進してくる。


それはセンスというべきか、持ち前の運動神経の良さでこちらに向かってきている。


あたしはその動きに対応してこちらも動くというわけではなく、どっしりと構えた。


これまでであれば予想外の動きや、こちらが想定外の動きなどで相手が動いてくると、それに連動するようにして動いていた。


でもそれではダメだ。


それはレイラと戦ってより一層にわかった。


あたしは体を鍛えたおかげというべきか、せいというべきかはわからないけれど、瞬発力が他の人よりも遅いということがわかったのだ。


だから同じように動こうとしても動けない。


思い出す。




「こら!だから合わせて自分から動かないようにと言っていますよね」


「だって、その…」


「合わせて動くか、自分から動いた方が敵を早く倒せるからですか?」


「そうだけど…」


「だから、それをやめるようにって言ってますよね。バカなんですか?」


「バカバカ言わないでよ。あたしだって好きでこんなことをしてるんじゃないんだから」


「へえ…それで、どうするんですか?私に言われっぱなしで、それで終わりでいいんですか?」


「それは…だって…」


「じゃあ、逃げるんですか?」




それは…


何も知らないくせにと言いたくはなるけれど、何も知らないのは当たり前だ。


それでもレイラのいうことはムカつくことではあるけれど、あたしの弱いところをついていた。


そう、あたしと朱莉は小さい頃は仲の良い姉妹だった。


それは朱莉が中学に入るまでだった。


中学までといえば、特に成績によって比べられるということもなく、朱莉はかなりあたしに懐いてくれていたと思う。


でも中学に上がって、人としっかりと成績、運動神経ともに順位として比べられたとき、朱莉はほとんどで一番だった。


それでも最初はお姉ちゃんが勉強を教えてくれていたから、一緒に遊んでくれたのがいい運動になったからと言ってくれていたのだ。


ただ、あたしがそれに耐えられなかったのだ。


思春期だったといえば、聞こえはいいのかもしれないけれど、それでも実の妹に意地悪というべきか嫉妬をしてしまったあたしは本当に情けない姉だった。


だから自分で自暴自棄になり、それまで朱莉と一緒に一番になれたねって言いたくて努力をしたけれど、無理だった。


そして朱莉が何かを言ってくるのが煩わしくなって、気づけばやっていた努力も朱莉とは違うものとなっていた。


それを見たあたりから、朱莉があたしのことをバカにし始めたのは…


あたしはバカにされたのにも関わらずに、何も言い返せなくて、笑っていただけだった。


そうなってしまってから、朱莉はさらに増長してあたしのことをバカにしたというものだ。


確かにあたしは変わらないといけない。


だからちょっとでも何かを変えようと、これまでしてこなかったゲームをした。


そこで出会ったのがノエで、話しているとその人があたしが通っている綺麗だけどスーツ以外を着ているところが見たころがないという先生で、まあ、ゲームの世界で初めて出会ったときも先生だとは思わないくらいには恰好がかっこ悪かったので、さすがに今は直してもらっている。


そんなことがあった後に、マヤやんに出会った。


出会った瞬間にびびっときた人だ。


確かに最初は突拍子もないような言葉も言ってしまったので、今本気だということがわかってもらえていないのかもしれないけれど、あたしはマヤやんに一目惚れしたのだ。


だからそれだけは譲れないといえばいいのだろうか、あたしは強くなって絶対朱莉ともう一度向き合うということを…


だから逃げない。




「レイラ、あたしはやる」


「ふふ、やっといい顔になったじゃないですか!それじゃ、しっかりとしごきますからね」




その顔を思い出すと、体が少し震える。


マヤやんといるときはあんなにドMだというのに、特訓をするとなるとSっぽくなるのでギャップがすごかった。


だからというべきか、しっかりと言われたことも覚えている。


自分よりも動きが速い敵と戦ったときどうするべきかというものだ。


それまであたしは、それでも速く動こうとしていた。


でもそれではダメだ。


戦いの基本は、どれだけ相手を自分のペースにもっていけるか、というものだ。


それなのに、自分から相手のペースにのまれてしまっていたら、すぐに負けてしまう。


だから今は朱莉が突っ込んでくるのをしっかりと構えて待つだけだ。


朱莉は槍ということもあり、あたしが持っている大剣よりも間合いが遠い。


でも力はあたしのほうがある。


そこをしっかりと理解して戦う。


槍による突きを剣で弾く。


連続の突きをしっかりとこちらも構えをとっていることによって危なげなくはじいた。




「へえ、やるねお姉ちゃん」


「アカリこそ、ゲームはやったことがなかったんじゃないの?」


「ふふーん、こうみえても交友関係を広げるためにゲームは前から少ししてたよ。それなのに、お姉ちゃんは初めてほとんどたってないんでしょ?それなのにこれだけ強いのなら、すごいと思うけどね」


「そんなことない。あたしはまだまだだよ」


「そっか…本当にあの人と出会ってお姉ちゃんが変わったんだね」


「マ、マヤやんとはまだそんな関係じゃ」


「それでも、ちゃんと好きなんでしょ?」


「まだ会って数日だけど、うん…」


「そっか…好きな人ができることで、お姉ちゃんがこんなに変わるなんて思わなかったな…」


「アカリ…」




朱莉の言葉に、あたしは名前を呼ぶことしかできなかった。


たぶんあたしが少しでも変わってくれると思って接してくれていたのだろう。


レイラに相当しごかれてわかった。


朱莉から逃げていたのはあたしだったからだ。


だから、あたしはもう逃げないことにする。




「アカリ…いくよ」


「ふん、お姉ちゃん。あたいのほうが運動神経いいんだから無理だよ」


「そうかもね」




あたしは構えをとった。


朱莉も構えをとる。


天性の運動センスから、構えもどこかで見たことがあるようなしっかりとしたものだった。


あたしはレイラと特訓していなければ、何もできないで立ち竦んでいた。


でも、特訓をしたおかげで槍の攻略法はしっかりと頭に入っている。


そのペースに朱莉をもってくればいいだけの話。


いく!




「行くよ、朱莉!」




普通であれば相手を自分のペースにさせるのであれば、攻撃からというのがセオリーだとレイラに聞いた。


でもあたしは、レイラが言うには脳筋と呼ばれる部類の人種らしく、難しく考えるよりも前にでて殴るほうが速いよね?ということになり、あたしは力でなんとかするという方法を学んだ。


それがこれだ。


槍というのは点での攻撃。


そんなことはさすがにあたしでも、武器を見ただけでわかっていた。




「そんなこと、当たり前だから聞いていません」


「え、でもあたしにわかることはそれくらいだよ」




レイラとの特訓のときに、槍を持った敵と戦うときにどうするのかと聞かれて、突いてくるよねと言ったらそう返されたのだ。


いや、あたしはゲーム初心者だから仕方ないじゃない。


そう考えたが、すぐに頭を振る。


違うと…


仕方ないと言い聞かせて逃げているのは自分なのだということに…


仕方ない。


確かに周りから見ればそうなのかもしれない。


でも仕方ないと諦めるのも、最終的に自分にそう納得させるのも結局は自分自身なのだからだ。


あたしが変わらないといけない。


それでもどうしていいかわからない。


そんなことを思っていると、レイラがやれやれと口を開く。




「そんなことではダメですよ」


「そうなんだけど」


「ノエからは何か聞いていないのですか?どう戦えばいいとか?」


「一応こう戦えばいいってことだけを」


「そうですか。それでずっとそのやり方が間違いではないと信じで同じ方法でしか戦ってこなかったと?」


「うん…レイラに言われる通りだよ」


「そうですか…それでは私が一つアドバイスをすると、あなたは力が私よりも強いです。それを最大限に生かす方法を考えて戦闘をしてみてはいかがでしょうか?」


「生かす…」


「はい、それではゴーです」




そう言われて何度か戦った槍の敵。


そこでようやくというべきか、何も考えずに使った攻撃があたしにはあっていた。


だから今回もその攻撃をする。


あたしも最初は深く考えすぎていた。


槍を持つという長所は間合いをしっかりととればずっと強くいられるし、近づかないとというより、あたしであれば大剣が届く距離に近づかなければ戦えないという先入観をもっていた。


でも力があればそれを覆せるということに気づいた。


それがこの大剣での突進。


そう突きだった。


えっと思われるかもしれないけど、あたしはこれが正解だということに気づいた。


槍というのは確かに間合いが取れるし、ある程度の攻撃も柄で防いだりもできる。


ある程度なのが一番重要なところだった。


力任せにこちらが突きをすると、防ぐにはただ避けるか、もしくは正確に大剣をかわしながら相手も槍でついてくるしかできない。


相手の攻撃が点である以上は、こちらも点で攻撃をする。


そうすれば力が勝るあたしが勝つ!




「ほんと、筋肉バカのお姉ちゃんが誰からの入れ知恵でそんな戦い方を身に着けたのかはわからないけど、ムカつく」


「ふふ、どうするの?」


「あたいは負けず嫌いなのわかってるでしょ?」


「そうだったね。」




家の中に一緒にいたのに、あたしは忘れていた。


それくらいにあたしは朱莉のことを見ようとしていなかったのだ。


結局は自分が傷つかないために守って、それで何もかも逃げていた。


でもようやく、こうして戦えるようになった。


そんな間違っていた、ダメな姉ではあったけれど、朱莉はそれにこたえるかのように同じように槍で突きをする。


ありがとう、朱莉。


ここからはちゃんとお姉ちゃんでいさせてね。




『はあああああああああああ』




二人の声が響いて、お互いの剣先がぶつかる。


そして槍を吹き飛ばしたあたしはそのままの勢いで、大剣を朱莉の目の前で止める。


大剣から手を離したあたしは朱莉を抱きしめた。




「バカなお姉ちゃんでごめん」


「ようやく、気づいてくれたからあたいは嬉しいよ。それと役得だしね」


「こ、こらー」




あたしの胸に顔をうずめるようにというか、こすり付けるようにする朱莉に、少し大丈夫かと思いながらも、許そうとしたが、手が胸に伸びた瞬間に手をはたいた。


さすがに妹としても、そういうのは嫌だ。


抱きついていたのを離すと、朱莉は残念そうに頬を膨らませていた。




「もう、せっかくお姉ちゃん成分を三年分くらいは接種しようと思ったのに」


「やめなさい」


「ええー…」




そんなふうにして、仲睦まじい感じはいつ以来だろうか?


こうなりたかったのに、これまで本当にダメなことばかりをしてきたと改めて実感していたときだった。


後ろから声が聞こえる。




「よかった、仲直りできて」




その言葉で、ようやくこの場にいたのがあたしたち姉妹だけではないことに気づいた。


そう、今声をかけてきてくれたのはマヤやんだ。


今更ながらにそこで思いだした。


それは朱莉も同じだったのだろう、慌てて二人でマヤやんの方を見ると、そこには二人の男が正座で座っているところだった。


何が起こっているのだろうかと思いながらも、驚きを隠せないでいた。


ただ、その後に予想外のことが起きるのだが、その前に少しだけ前に遡る。







「いやあ、こんなところで今話題の人をボコれるとは思いませんでしたよ」


「ちょっと、そんなことを言ったらまずいよ」


「でもなあ、しっかりと対策を練ってきていたこっちと違ってそっちは違うだろうしな」


「はあ…」


「気の抜けた返事をするな!」


「いえ、でも興味ないですし…」


「んだと」




朱莉さんとシズエさんが戦っているというのを横目で見ながら気の抜けた返事をしていると、朱莉さんについていた男二人が何やら言っている。


だが、今はそんなくだらない話よりも、気になっているのはちゃんと二人が仲直りできるかという点だ。


でも話を聞いていないことに調子にのったのか、二人の男はさらに口調が悪くなる。




「本当にな、俺たちはただあの女とやれると思ったから近づいたのによ」


「それなのに手も握らせてくれないとか本当にないよな」


「ああ…せっかく姉と二人で可愛がってやろうと…」


「おい!」


「なんだ?」


「言いたいことはそれだけ?」


「なんだ?怒っちゃったってやつか?やめとけってお前じゃ二人いる俺たちには敵わないってな」


「ほう」




そう気にしないようにしていた。


ただ、無理だったのだ。


だってさすがに聞き捨てならないことを口にし始めたからだ。


女性を好きにできると口にするこの二人にはしっかりとお灸をすえてやらないといけないということがよくわかったのだ。


僕はさすがに怒り狂っていた。


でもだからといって、二人の行く末を見ないというのはダメだ。


だから瞬殺しないといけない。


すっと構えをとった。




「お!やるのか、しょうがないねえ」


「ふ、火よ、陽炎をつくり相手を幻惑せよ、ミラージュ」




その言葉とともに姿があいまいになる。


ただ、それだけだ。


確かに人数が多くてこちらが一人の場合ではかなりの脅威になるのかもしれない。


そう思っているのは相手だけだ。


見えにくくなるだけであり、音や視線が消えるわけではない。


特に、現実に近いこの世界では簡単なのだ、その手のものを読むというのは…


それまでやっていたヴァーチャルリアリティゲームでは目が見える範囲、しかもゴーグルの重みでそれなりに違和感がある中でだ。


そんな中でゲームをやるのに比べれば、ラグもなく見ている視界からしっかりと情報がわかり、ヘッドホンから聞こえる音をなんとか判別したり、ヴァーチャルリアリティでやっていたときにあったことだけれど、体にセンサーを取り付けてやっていたとき、その動きが激しすぎたせいもあるけれど、ヘッドセット、ヘッドホンが取れるなんてこともあったのだ。


だからそんな違和感を持つこともなく、ただゲームに没頭できる。


それだけで、ゲームをやっている僕の中では楽勝といったら怒られるかもしれないが、余裕だったのだ。


相手はそれがわかっていない。




「へへ、わかんねえだ、ふべええ…」


「どうかした?」


「なんで、わかるんだよ…うわああああ」




一人にはショートソードを投げることで、もう一人には近づいてそのまま上段蹴りを放ったときに出た声だった。


驚きの声で、何も対策を練っていなかった男二人はなんとそれだけで地面に転がったのだった。




「うん、弱いね」




上段蹴りによる顎を打ちぬいた気絶と、ショートソードをなんとか弾いたが、その結果自分の顔に激突するというアホなことを行った二人を僕はそうそうに倒すと、一人の男を足で踏みながら二人の戦いを見守っていたというところだったのだ。


気づけば起きたもう一人は土下座を始めたということなのだ。




「えーっと、マヤやん?」


「どうかした?」


「いや、そのなんでもないかな?」


「そう?」




僕は乗せていた足をのける。


後ろで朱莉さんが「えっと、あの人ってかなりのドSなの?」「それはその…」「お姉ちゃんも頑張らないとね」との二人の会話が聞こえた。


ひそひそ話なのだろうけれど、聞こえている時点で意味はないような気もするし、何を頑張るというのだろうか?


そんなことを思っていると、ほかの人たちも集まってきた。




「うむ、一応これは勝ち負けをつければよいのか?」


「どうなのでしょうね?ノエさん」


「わたしに聞かないでください。でも、あの二人を今見ていると、これでよかったと思いますけどね」


「そうですね。ノエのいう通りということですよエリカ」


「まあ、マヤさんに相談されたときからそんなことだろうとはうちもわかっていましたけど」


「あはは…すみません」




集まった人たちになんとなく謝る。


それでも僕もよかったと思った、朱莉さんとシズエさん二人が仲良くしているのを見て…


そんなときだった。


予想外の出来事が起きたのは…


急に嫌な予感がする。


そちらを向いたときだった。


地面が揺れる。




「きゃっ」




その揺れで、エリカさんがふらついたのを、レイラが支える。


何が起こっているのか、そう声を出そうとしたときには、そいつが地面からだ出てきた。




「ド、ドラゴン」




エリカさんのその言葉が全員の耳に聞こえた。

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