第二章 学校へ行こう編

第7話 学校と宣戦布告

「それでは、授業を始めます」




僕は久しぶりの学校にきていた。


それに実は周りには知っている人たちもいた。


それに僕は何かを感じながらも、授業を受けた。


こんなことになったのは少し前に遡る。






ゲーム世界から戻った僕はすぐに寝た。


それは仕方ないことだと思ってほしい。


久しぶりの人との関係を受けて、僕は疲れていたのだ。


だからかなり爆睡した。


そうして、次に起きたのは、一日の真夜中に帰ってきた姉さんの帰宅した音を聞いたときだ。




「疲れて爆睡するなんて…」




とりあえず、姉さんに学校に行くことをちゃんと言わないとな…


僕は、この家の持ち主である姉に学校に行くことを伝えに行き、そしてその姉にもみくちゃにされながらも、嬉しがられた僕は、学校の前に立っていた。


すでに一か月が経過して、クラスの中もいろいろグループができていることだろう。


そんな中で馴染めるか不安ではあったが、もうここまで来て逃げるなんてことはなしにしよう。


僕は意を決して学校の敷地に入った。


初めてということもあり、少し早めに学校に来ておきたかったので、クラスで授業が始まる三十分は前についたこともあり、まだ学校内にいる人は朝の部活をこなしている人や、僕のように少し早めに登校してきた人たちだけだ。


そうして、このまま何事もなく下駄箱に向かうものだと思っていたときだった。


事件は起こる。




「あっれー、みない顔だね?一年生?」




なぜかチャラい男に声をかけられたのだ。


どういうことか疑問に思っていたとき、その男は続ける。




「まあ、ネクタイの色で一年生なのはわかっているんだけど、どうして男の制服を着ているのかな?」


「いや、男だからですけど」


「またー…そんなかわいい顔して男のわけなひでぶ…」




ただ、チャラい男は、最後まで言わせてもらうこともなく、襟元を引っ張られていた。




「おいおい、誰の断りを入れて、かわいい子に声をかけてるんだ?」


「いや、それは…」


「なんだ?言いたいことあるのか?」


「いえ…」




なんだろう、この感じ…


僕が全く関与していないところで話が進んでいくこれは、見ていて、気持ち悪いし、いい加減僕が男だということに信じてほしいのだけれど…


なんといえばいいのだろうか…


面倒くさいことになったとしか思えない。


そんなことを思っていると、誰の許しを得てと声をかけていた男がこちらを見る。


そして驚いたように目を開く。




「えっと、どうして男の制服を着ているんだ?」


「男だからですけど、さっきも同じことを聞かれてるんですけど…」


「そうなのか、すまない。」


「いえ、ちなみに職員室はどのあたりですか?」


「ああ、それなら下駄箱を右に行けばあるよ」


「そうですか、ありがとうございます」




軽く会釈をして、その場を立ち去る。


すでにここに来るまでに、二回男かと確認をされるくらいには疑われているとは…


これは本当にどういうことなのか、疑問に思ってしまう。


そんなに女に見えるということなのだろうか?


でも、胸もないのに、顔だけで判断するのはどうかと思うけどね…


まあ、あの世界にいた二人の変態にはそこがいいのかもしれないけれど。


現実世界では、出会うことはないであろうレイラさんとシズエさんのことを思いだしながら、僕は下駄箱を過ぎると、職員室に向かった。


その後は、なんとか絡まれることも、道を間違えるということは、下駄箱から本当に近かったからなかったが、すぐに職員室の前に行くと、ノックをした。


緊張はかなりしたが、こういうことは始めが大事なのだ。


第一印象がよければ、教師というものは、優しくしてくれるはず、そう思っていたが、なかなか失礼しますと中に入る勇気がなかった。


さすがに引きこもっていただけはある、自分の根性というべきか、このどうにかして入らなくてもいい方法を考えてしまう頭の中をなんとかしたいと思ってしまった。


ただ、ノックをして誰も入ってこないのを疑問に思ったのだろう、先生の一人がドアを開けたのだ。




「え?」




急にドアが開いたことにより、呆気にとられた僕ではあったが、さらに驚いたことがあった。


そこにいたのは見たことがある人だったからだ。


それはお互いに顔を見た瞬間にわかったのだろう。




「「あ」」


「ノエさん」


「マヤ君」




そう僕は、どうやら縁というものがすでにあるらしい。


お互い動けずにいると、中にいた先生から声がかかる。




「野中先生どうかされましたか?」


「あ、いえ、少しわたしの生徒がいまして、オープンスペース使いますね」




そういうと、野中先生と呼ばれた人は、職員室の外にあった生徒が相談できる場所といえばいいのだろうか…


簡単な談話室的なところに座っていてほしいとお願いされ、僕はそこにおとなしく座ることにした。


そして、数分後にノエさんが現れた。




「えっと、おはようございます」


「おはようございます」


「うーんと、マヤ君でいいんだよね?」


「はい」


「えっと、真也君だからマヤ君なんだね」


「そうですね。えっと先生は?」


「わたしは、野中絵里のなかえりって名前だから、そこからとってノエだね」


「そうなんですか…」


「そうなんだよー…でも驚いた、入学してから一回も登校していなかった子がまさかのマヤ君なんだってことに」


「それは、僕もですよ。ようやく学校に行かないとなって思って、行ってみたら知っている人がいたから…」


「そうだね。それはビックリするよね。でも、それならもう一つ、シズも同じ学校だよ」


「そうなんですか?」


「そうそう、あのゲームにわたしが一番最初に出会った女性プレイヤーなんだよね」


「それで一緒にプレイしてるってことですか?」


「まあね…でも今日は休んでるみたい」


「そっか…」




最後の様子からも何か思い詰めているような感じはあったけれど、それが理由なのだろう。


でも、ゲーム世界の話なのだ。


現実世界とは違うことなんだから、そこは割り切っているものだと思っていた。


だって僕たちがそうなのだから…


ゲームをやればやるほど感じていたのは現実とゲーム世界の自分は違うというものだ。


確かにリアルオンラインという名前のゲームで質感などはすべて現実と同じものだ。


でも現実と違うところ…


簡単に言えば魔法が使えることだけど確かに、違うというのはそこくらいだろう。


それ以外は同じだから、確かにゲーム世界であったことがあればすべての世界から否定された感じになるか…




「そういえば、シズエさんって、初めてのゲームでしたよね」


「ええ、だからこそ、心配なんだけど…」


「そうですよね」


「ねえ、ここで会ったのも何かの縁だと思ってシズのことを頼んでもいいかしら?」


「えーっと、僕にですか?ほんの昨日まで引きこもりで、職員室に入るのにも躊躇していたくらいなのに?」


「でも、それくらいしか、手はないからね。わたしも忙しいから…こうみえても学校の教師だからね」


「えっと、見たらわかりますよ」


「だからね、職権乱用ってことができないんだよね。さすがに一人の生徒に肩入れをしまくる教師っていうのは見栄えが悪いと思わないかな?」


「それは思いますね。」


「でしょ、だからお願いします。」




そういわれて、ノエさん…


いや、野中先生に頭を下げられた。


事情を知っていて、引きこもりをしていた相手となると、確かに頼れるのは僕しかいないのだろうと思う。


でも、無理だろうなとも思う。


だって、学校にきたのも実は後ろから姉が心配でふらふらと後を追ってきていたのに気づいたからで、実は逃げたかったし、でも確かに変わるというのなら、今からなのかもしれない。


自分がすごいわけではなくて周りの人がすごいから、またこうやって現実世界にいれるというのが今の自分なのだから、それをまずは少しずつでも返していく必要があるのかもしれない…


そんなことを思って、うなずこうとしたときだった。


職員室から、恰幅のいい人のよさそうな先生が出てきたと思うと、話している先生が野中先生だということを確認してから笑うと、言った。




「がははは、先生。また、一人の生徒と仲良くなりすぎて、学業を愚かにしないでくださいね。」




それを聞いて、顔を伏せる先生。


僕は、それで納得した。




「あの、先生…」


「えっとね、これはね…」


「もうすでにやらかしているから、いけないってことなんですね」


「まあ、そういうこともいえるかな?」


「はあ…まあ、仕方ありませんね」




なんだろう、いい先生ということはわかったのだけど、それでいいのかと思ってしまった。


それにさっきのことはすでに忠告を受けていたから、僕に言っていたのか、自分に言い聞かせていたのか、その辺りは確かに気になるところではあったが、これで僕以外ではシズエさんに会いに行ける人がいないことがわかってしまった。


そんなことがありながらも、僕は野中先生と一緒に教室に向かっていた。




「えっと、一緒に入るんですか?」


「その方がいいでしょ?わたしも社会人二年目だから、何が正解なのかはまだまだ勉強中だしね」


「そうなんですか…」


「そうだよ。最後の承認とかを聞くのには、まだまだベテランの違う先生に確認しないといけないしね」


「そうですか…」


「それに、今から教室に入ったら、時間的にもクラスのみんながいるし、かなり注目の的になるとは思うけど、それでもいいの?」


「えっと、遠慮しておきます」


「ふふふ、そういうと思ってたしね。それじゃあ、今日からよろしくね」


「はい」




そうして、教室に入るなりに大注目を浴びるも、教師と一緒に入ってきたことから、何か事情があってこれまでこれなかったのだろうという、勝手に勘違いを受けることにより、僕はクラスに普通に溶け込むことができた。


ただ、休み時間のたびに、いろいろな質問が飛んでくるのにはかなり、ビックリした。


特に多いのは、本当に女性ではないのかというのと、なんで男性でありながらそこまで肌がきれいなのかというところだ。


これはゲームで適度な運動と、しっかりとした食事。


そして、姉のせいによってしっかりと美容系のやり方を仕込まれたせいだ。


そんなことを話していて、お昼休みになった。


このまま、何事もなく一日が過ぎていくものだと僕は思っていたのだけれど、そんなことはないというのが、このあと証明されることになる。


姉は料理が壊滅的にできないので、僕が料理を作っているのだが、それによって今日もお昼ご飯であるお弁当も自分で作ったものだったが、それをクラスの仲良くなった女性メンバーと食べていたときだった。


クラスの扉が開く。


そこに現れたのは、朝出会った男一、男二、そしてシズエさんに顔はよく似ているが、身長が大きく、ただシズエさんが出ているはずの場所が出ていない、まあよく似た人が入ってきたのだ。


どういうことだろうか?


そんなことを思っていると、その女性はこちらに向かって歩いてくるではないか…


えっと、本当に何?


疑問に思っていると、一緒に食べていた女性メンバーもそれに対して、少し嫌そうな顔をする。


これはもしかしなくても面倒くさいことに巻き込まれるんじゃないのか?


そんなことを思っていると、男一が話をしてくる。




「本当に男だったんだな…」


「だったら、どうだっていうのかな?」


「は、別に女王様が話をしたがっているからな」


「女王様?」


「そう、あたいのことだねえ」




そういいながら、その男の横からずいっと体を出してくる。


女王様と、なるほど…




「それで、女王様と呼ばれる方が、どうされましたか?」


「ふふん、あたいの彼氏にしてあげるって言いにきたの」


「いえ、結構です」


「そうよね、あたいに言われたんだからお…って今、なんて?」


「いえ、だから結構ですと…」


「あたいの誘いを断るの?」


「だって、僕たち初対面ですよね」


「初対面だけど、あたいの顔面を見なさいよ」


「はあ、客観的には綺麗ですね」


「そうでしょう、だから綺麗な顔同士付き合うものだと思うの」


「はあ…それならよかったですね。それなりに顔がいい男の人を二人も付き合っているのですもんね」


「こいつらはそういうのじゃないから」


「そうなんですか?」


「そうよ。あたいにはあんたがいるのよ、だから付き合いなさい」


「えっと、さっきから何回も言いましたが、嫌ですよ」


「なんで断るのよ」


「えっと、なんで断られないと思っているんですか?」


「くう…覚えていなさいよ」




そういうと、女王様と呼ばれた女子生徒と、取り巻き二人は去っていった。


なんだろう、あの嵐ともそよ風とも呼べるような人たちは…


そんなことを思っていると、仲良くなった一人の女の子が教えてくれる。




「えっと、さっきの子はね…ちょっと変わった子でね…」


「うん、見たらわかるよ」


「ちょっと、自分に自信がかなりあってね、高校生になって余計にそうなったって感じかな」


「そうなんだ」


「うん、一歳上にお姉さんがいるんだけど、その人となんか仲たがいしたって話を少し聞いて、それからさらにああやって、なんかいろいろ面倒くさい子になってしまっているってところかな」


「そっか…」




姉か…


顔を思いだすだけで、なんとなくというか確信をもっていいのかもしれないが、思い浮かんだのはシズエさんのことだ。


まさかとは思うけれど、顔はかなり似ていたことから、間違いないとも思ってしまう。


これは、今回引きこもってしまった何かと関係あるのだろうか?


というか、一日学校に来ないというだけで、引きこもりになったと呼んでいいものかさえも気になるところだ。


そんなことになってしまえば、僕は、久しぶりの学校で疲れたのだから、明日は学校に来たくないとさえ考えているので、それも引きこもったことになってしまうのかもしれない。


そんなことを悶々と考えながらも、授業が終わる。


ホームルームも終わりを迎えようとしていたときだった。




「えっと、真矢君。この後先生と来るように」




その野中先生の言葉で、女性から残念な声があがるが、それにはさすがに野中先生も用意していたのだろう。




「久しぶりの学校ということもあるから、渡さないといけない書類もあるから、今日だけはね」




ということで、僕は職員室に連れていかれることはなく。


実際は空き教室に連れていかれていた。




「ふう、ここなら邪魔者はいないな」


「えっと、こういうのって職権乱用になるんじゃ?」


「そうなんだけど、それでも二人で話すにはこうするしかないじゃない?」


「えっと、連絡先交換します?」


「は!」


「えっと、もしかして忘れてました?」


「そんなことないよ、交換しよっか」




そういいながらも、先生はポケットから端末を取り出した。


絶対忘れていたよなーとは、さっきの反応でわかったことだけど、これで逃げられることもできなくなったともいえるのだ。


連絡できてしまうからね…


いざとなれば、すぐに連絡がきてしまうのだ。


まあ、すぐに連絡先を交換するということが思いつかなかった先生であれば、そんなこともしなさそうだけど…


そして、少し話をすると、すぐに校内アナウンスがなり、野中先生が呼ばれる。




「ごめんなさい、今連絡先を端末に送ったから、それを頼りにシズのことをお願い」




そういいながら、職員室に走っていく先生を見送りながら、僕は帰路につくことにしたのだが…




「まあ、帰り道の途中だし、仕方ないよね」




自分に言い訳をしながらも、シズエさんの家に来ていた。


ただ、肝心のチャイムを押すことができていなかった。


どうしたものかと考えていたが、このままここにいても不審者になるというものだった。


仕方ない。


どうにでもなれと思った僕は、チャイムをようやく押した。


でも、すぐに悪夢は来た。


予想していたことだったが、家に来たこともあり忘れていた存在である少女のことだ。




「あっれー、こんなところで出会えるなんてこれは、運命だね」


「まじか…」




そう、昼休みに会った女王様と呼ばれる女性だ。


学校があったし、僕は先生から呼び出しを受けていたということも考えて、先に家に帰っており、本当に僕の予感が正しくてもチャイムを押して、その人が出てくれば逃げればいいと思っていたのに、まさかのまだ家に帰っていなかったとは予想していなかったのだ。




「でも、どうしてあたいの家を知っているのかな?もしかして、本当はあたいと付き合いたくて、先生から聞いたとか?」


「いえ、それだけはありませんから…」


「えー…それならどうしてあたいの家の前にいるのかなー?それを教えてほしいな」


「そうですね…」




僕もこの状況から逃げれる方法を教えてほしいものだと感じた。


だけど、ここで言い争っていたのが功を奏したのか、それとも話しかけらる前になんとかチャイムを押せたのがよかったのかはわからないけれど、家の扉が開いたのだ。


そして現れたのは、眼鏡をかけてぼさっとした頭をして猫背で、ダボっとした服を着た女性だ。




「ほえ、マヤやん…」




やっぱりか…


ゲーム世界の見た目と同じではなく、かなり野暮ったい見た目になっているが、すぐにその女性がシズエさんだとわかった。


だから、僕はシズエさんの方に向く。




「えっと、ノエさんから頼まれてね」


「そ、そうなんだ…」


「…」




お互いに無言になる。


たぶん、シズエさんも戸惑っているのだろう。


ゲーム世界とは全く違う服装や態度、それが恥ずかしいのかもしれない。


その気持ちがわからなくもない僕も黙っていたが、そこに空気を読まない人が一人いた。




「ねえ、あたいのバカ姉に何かようだったの?」


「バカ姉?」


「そうだよ。気づいたらあたいよりも野暮ったい見た目をして、さらに成績もおちて、本当に見る影もないくらい落ちぶれた張り合いもないバカ姉のことだよ」


「…」




その言葉に姉であるシズエさんは何も言い返さない。


だからだろう、女王様はさらに調子にのりだした。




「本当にバカ姉はねえ…もしかして、バカ姉の体目当てできたのかな?確かに出会い系とかで使えば使える体だもんねえ…でもバカ姉だからさ、鍛えているせいで柔らかいのは胸だけだと思うよ。本当にそういうところもバカ姉だよね…」


「うるせえ…」


「うん?何か言った?」


「五月蠅いって言ってるんだよ!」




急に僕が怒りだしたことにビックリしたシズエさんと女王様だったが、女王様はとまらないのか、まだ口を開く。




「何?本当に誑し込まれたんじゃないの?もしかして、今ハマってるって先生と話してたゲームで知り合ったのかな?」


「それがどうした?」


「現実と別物すぎてガッカリしたんじゃない?」


「いえ、別にそんなことはないですけど」


「ええー?そんなことないでしょ」


「いや、だからないって言ってるんですけど、それにお姉さんの方が可愛いし綺麗だと思いますけど」


「ええー、こんな野暮ったいような見た目のバカ姉が?」


「僕はそう思いますけどね」


「ふーん…ゲーム世界でどんな見た目で誑し込まれたのかはしらないけど、それならそのゲームでコテンパンにしてあげる」


「へえ、僕に勝てると?」


「当たり前でしょ?でも初心者だからねえ、あたいはあの男二人の三人で、あんたちは二人でどう?」


「いいよ!」


「ちょっと、朱莉あかり。そんな急に…それにマヤやんも…」


「ふふん、バカ姉は黙っててよ。それなら次の土曜にフィールドに集合ね」


「ああ、望むところだ」


「そうと決まれば、あたいも少しはゲームをやらないとね」




そういうと、女王様…


ではなく、朱莉と呼ばれたシズエさんの妹は家に入っていった。


残されたのは、僕とシズエさん二人だ。




「えっと、少し公園でもいく?」


「う、うん」




数分後の沈黙が流れた後になんとか言った言葉がそれだ。


歩いて五分くらいの距離に公園があり、僕たちはそこでベンチに座っていた。


まだ明るいので、外で遊んでいる子供たちの元気な声が聞こえるが、シズエさんの気分は落ち込んでいるようだ。




「ねえ、なんで朱莉をあおるようなことを言ったの?」


「それは、まあなんというか、売り言葉に買い言葉で…」


「そうなんだ。でも負けちゃうのにいいの?」


「負ける?どうして?」


「だって、相手は三人で、あたしは自信がないし…何にもできないから…」


「そうなんだね…じゃあ、僕は一人で戦うよ」


「え?」


「嫌だ?」


「そ、そんなこと」


「でも、さっき僕の独断で戦うって言っちゃっただけだからさ、シズエさんは気にしなくていいことだからさ」


「それは…」




シズエさんは言葉につまった。


最初から無理だと思っていたらあんな無茶苦茶な誘い方をしていない。


でも、ここで僕が何かを言ってもシズエさんのやる気を出してあげられることはできないだろうとも思っていた。




「それじゃあ、僕は帰るね」


「あ、その…」


「まあ、戦うかは、じっくりと考えておいてよ」




そのまま僕は公園を後にした。


不安そうに見つめるシズエさんを残して…

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