第一章 エンドロール

起きると、そこは知らない場所だった。


こんなことを一日に二回するとは思ってもいなかったが、さっきまで起きていたことが夢なのではないのかと思ってしまうくらいには現実離れした体験だった。


まあ、現実に起こったことだとしてもゲーム世界のことなので、現実離れした体験になるのは仕方ないことだということはわかっていたが、それでも本当に濃すぎる一日だった。


ただ、起きると知らない場所ではあったが、知っている人はいた。


ノエさんとレイラさんだ。


二人は僕のことをのぞき込んでいた。




「よかったー」


「本当によがっだです、ご主人様」




それを見て安堵の顔を見せるノエさんと、涙をダラダラと流しながら心配してくれているレイラさん。


二人の反応が違いすぎて、思わず笑みがこぼれる。


そして、僕は後二人の姿を探した。


シュウとシズエさんだ。


だけど部屋には僕たち以外には誰もいない。


僕の視線でわかったのだろう、ノエさんが言葉にする。




「シュウは、一通り終わったから、すまないけど落ちるって言ってたかな。シズは、どうかな…隣の部屋に入ったきりわかんないんだよね」


「そうなんですか…」




たぶん、口ぶりからするに、シュウは同じように高校生かもしくは、その上である大学生である可能性が高いと思っているから、まあ何か用事があればログアウトすることもあるだろうと思っていた。


ただ、気になるのはシズエさんだ。


最後のゴブリンロードとの戦いのときからどこか少しおかしい雰囲気になっていたから、何かあるだのろう。


でも僕も少し決心をした。


それは学校に行くということだ。


これまでのこともあっていくことがなかった学校だったが、ゲーム世界のことではあるが、人ともう一度ちゃんとかかわろうと思ったからだ。


今度シズエさんとノエさん、レイラさんやシュウに会ったときにしっかりと会話をするためにも必要なことだと思った。


そして、僕が来たこと見たノエさんは少しあくびをする。




「それじゃ、わたしもマヤ君が目覚めたことを確認したし、落ちるかな。」


「そうなんですね。僕も休みます」


「うん、それじゃあ、またね。マヤ君」


「はい」




ノエさんが部屋から出て行った。


最後に残ったのは、僕とレイラさんだ。




「それじゃあ、レイラさんも、僕はそろそろ休むから、いいかな?」


「はい、大丈夫ですよ。私も休みますから…」




そういうとレイラさんが僕の布団に入ってくる。




「ちょ、ちょっと?」


「いいじゃないですかー」


「いや、ダメですから!」




そう言い合いながらも、レイラさんをなんとか追い出した僕はベッドに寝転ぶとログアウトと口にした。


そして浮遊感を感じ、それが収まると、上には見慣れた天井があった。




「帰ってきたのか…」




本当に一日だったけど、いろいろなことがあった。


この部屋のことしか最近のことはわからなかった僕だったけれど、少しは外に出れたということになるのだろうか?


いろいろ変わった人がいて、この見た目を気にしなくて大丈夫なんだと思ってしまった。


すこしくらい前に進んでいいのかもしれない。


僕は、部屋に飾られれた写真を見て、そう心の中でつぶやいた。


まずは、姉さんに学校に行くことを伝えないとな…


僕は、ようやく前に進み始めた。







「ようやくだね」


「本当に、ようやくだよ」




暗く、画面の光だけが輝く部屋で二人の声がしていた。




「これで、物語はスタートする」


「本当にこれでよかったの?」


「いいの…変な人にあなたたちの未来を決めさせないためにも…」


「そうだといいけど…でも彼女はきっと怒るよ」


「わかってる。だって、それは織り込み済みだから…」


「それならいいけどさ…」




そういいながら、二人は一台の画面を見る。


そこは真っ暗だ。


電源がついていないのがわかる。


ただ、その二人は、その電源がついていないだけの画面に対して、あたかもそこに誰かがいるのかのように会話をした。


そう、すでにゲームにログインした時点で、物語というものは始まっている、


その物語がどういう結末を迎えるのか…


それは、二人の少年少女にしかわからない…


いや、その二人と、それにかかわる人たちにしかわからないことなのだから…




「傍観するだけで…それで幸せだから…」


「ふ…まあ、そうなったら少しは全員が変わっているのかもよ」


「そうかもしれないね」




そういいながら、二人の声が部屋にこだました。

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