メガネスキーの日
「ん?稔、メガネなんてかけてどうしたんだ?」
テントを張り、ここに泊まる準備が終わって一息ついていた。
「あれ!?みのりんがメガネかけてるー!」
「そもそも目なんて悪かったか?前の街で買ったんか?」
こうも興味津々に見てもらえるとなんだか嬉しくなる。別に好きでかけてる訳では無い。
そもそも僕のセンスでこんなフチなし丸メガネは買わない。
「いや、目は悪くないんだけどね」
「伊達メガネ?おしゃれさん?」
「そうでもない…かな」
「んじゃなんでメガネなんてかけてんだよ」
僕の初めての眼鏡姿にここまで困惑されるとは思わなかった。
だが理由はもっと深い。
「うーん、この世には理解する事が難しい事象が山ほどあるんだ。なんで羽美が人の心を読めるか、なんて事もハッキリと解明されてる訳では無い」
「おん?まあそうだな」
「そう、ある伝説でこんな事を聞いた事がある。僕らと同じNPO法人を名乗る団体で『メガネスキー』って団体があるらしい」
「メガネ拭き?」
「メガネスキー、メガネが大好きでたまらない連中らしい。彼らが何者なのか知るものは殆どいない。だが、確実に存在する。例えば、こうやってメガネを外そうと…」
言いながらメガネを外そうと右手で摘み、引っ張ろうとした瞬間。
ヒュン!
一瞬だけ黒い影が見えて、目視で捉えることの出来ない速さで消えた。
僕の手は下に降ろされ、メガネの位置は元通りに戻されていた。
「は?」
「え!何?」
「ご覧の通り、メガネスキーの強制力で外すことが出来ない」
一瞬だけ姿を現したメガネスキーが何処から入り、何処から消えたのか分からず二人は上下左右をキョロキョロと探している。ここはテントの中だ。
「リンでも捉えられなかったよ!?そんな人間いるはずが…」
いる。
実際に存在したのだから否定できない。
「心の声が何処からも聴こえて来ない…。そんなまさか。こんな奴らに襲われたら勝ち目なんてねぇぞ」
普段は人が隠れている場合、羽美の能力に引っかかって人数が把握出来る。今まで引っかからない人間は居なかった。
その分かなり焦りが見える。
「いや、彼らは攻撃的な事は絶対にしない。ただ、あくまでメガネを掛けて拝むだけの集団なんだ」
「へんたいだー!」
「メガネスキー…ヤベー奴らだな」
二人がメガネスキーについて考えてる間に、また黒い影が現れて消えた。
竜胆は追いかけようとしたが、不規則な動き、速さで逃げられてしまった。そもそも、視認出来ない。
「おや?羽美も…」
「は?」
「うあー!うーちゃんがー!」
死人でも出たかのような驚きようだ。
「似合ってるよ、羽美」
「うるせぇよ…」
素直に喜べないのは性格なのか、未確認人物に弄ばれてるからなのか。
羽美が付けられたのは、下にだけフレームがある細長いタイプだ。ワイルドな見た目を損なうことなく、適度に落ち着いて見える。
「つ、次はリン!?」
「彼らは、全員をメガネにすることは絶対にしないらしい。だから竜胆は今回は…」
「なんでよ!」
やられないなら、やられないで悔しいらしい。
「なあ、コレっていつ外せるんだ?」
「………さあ?」
メガネスキーの日 終
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