信仰の日 終
「……」
「……面白い街でした」
祭服を着た主教と、また顔を付き合わせていた。
僕も悪かったし、主教も何か罪悪感を抱えて両者痛み分け。暫く沈黙が続いて、ようやく出てきた言葉だ。
気持ちの整理がついたのか主教は語った。
「俺はこの異常気象が始まった時、新しい宗教を作った。キリスト教を元にな。すると、たちまち信者が集まった。みんな救いを求めてたんだ。そして信者たちで地下を造らせた」
「田島さんの部下は信者になるような方々じゃないですよね?」
以前仕事を一緒にしていた時の同僚はどう足掻いても信者にならない連中ばかりだった。
「そこで地上と地下で棲み分けをした。地下は信者、地上は俺の部下たち。地下の信者らはこの要塞で守る。その代わり、地下からは税金として食料をもらう」
「だから羽美があんなに嫌がってたのか」
「宗教ってのは最強の暗示なんだ。信じる道があるだけで、迷いがなくなる。迷いの無い人間は強い、人殺しも笑顔で出来るようになる。だから変な気を起こすなって忠告したんだよ」
今更言われても遅い。
だが、不思議とさっきまで一触即発だったのに、もう彼らは僕らを旅人として迎えてくれている。
アフロ男は粉々になって消え、処理もしてもらい積荷の変えも用意してくれた。
宗教とは不思議なものだ。
「彼らに生きる道を与えたんですね。田島さんは優しい人です」
「ああ言うのは搾取したって言うんだよ」
「ふふふ」
また長話になってしまった。まだ話したい事はたくさんあるけど、腹八分目がちょうどいいと言う。
羽美と竜胆の機嫌が悪くなってしまう前に、話を切り上げ出発する事にした。
ブロロロロロロ…
クロスカントリーの車は、さっき爆発したとは思えないほど軽快に走ってくれた。整備士の人に感謝です。
「もじゃもじゃ……」
アフロ男の事を思い出して少し感慨に耽っている竜胆。茶菓子を食べさせたのが自分だから尚更罪の意識が強い。
「良い奴だったんだけどね。きっと手厚く葬儀されるだろうね」
「どうかな…」
羽美が何か言いたそうだが、言葉を飲み込んだ。その先を語るのは余りにも酷。
そう言う時は、大体良い結末は迎えない。
『×××』
信徒は神へ捧げる物に全霊をかけた。
比例して信徒は生活水準が向上した。
神様が護ってくれていると信じた。
信徒は、希望を胸に前へ進む。
信仰心とは即ち文化レベルだ。
信仰の日 終
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