4-2

「豊子、豊子!」

聞き覚えのある声が聞こえる。すぐ近くで……。


──お母さん。


白いシーツにちょっぴり堅めの枕、柔らかいのか固いのかよく分からないベッド。ということは……。


「よかった、気がついたのね!あんた、学校のトイレでゲーゲー吐いてたのよ。

それを杏奈ちゃんが見つけてくれて病院に運ばれたの」

そんなことがあったのか。

トイレに入ったとたん、おなかの痛みが激しくなって、なかなか収まらなくて困ったところまでは覚えていたけど、その後の記憶がまったくなかった。


「杏奈ちゃんは?悪いことしちゃった。それから先生にも……」

「大丈夫よ。先生も杏奈ちゃんもほかのお友達もみんな怒ってないから。

それにしても、おばあちゃんはだめねえ。本当にあんたがかわいいんだわ。

次から次に食べさせて!もっとよおーく言っておかなくちゃ!」


そうか、ハランドゥル王国は実在しない場所だったのか。

いろいろ学ばせてもらった大切な場所だったけど、もうあそこには行けないんだな。

元気になったら寛二さんたちにあいさつしたかったのにな。

そう思ったら、急に寂しさが襲ってきた。

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