4-3

母が洋服を洗濯しに行ったのと入れ替わりに、杏奈ちゃんと大地君、そして大原先生が入ってきた。

「おおー、よかったよかった!顔に赤みが戻ってきたよ!安心した」

大原先生の声が懐かしい。

運ばれて三日しか経っていないのに懐かしいだなんてちょっぴり変だけど……。


「心配かけてごめんなさい。特に杏奈ちゃんにはたくさん迷惑かけちゃったね。ごめん」


杏奈ちゃんが目をうるませながら、私の手を力強く握った。

「もし私がトイレに行ってなかったらってずっと考えちゃってた!もう少しで治るって豊子ちゃんママから聞いてほっとしたよ!」

「俺、ヤイヤイ言ってた悪ガキ3人組に頭きてさ、うっかりぶん殴っちった。

もちろん、こっぴどく怒られちったけどさ。

でも命にかかわることだったらって思ったらさ。えへへっ」

「なあにがえへへっだ!手を出すなっていつも言ってるだろ!」

大原先生が大地君の頭をポカンと叩いた。


何気ない会話だったけど、それすら難しい人が、この世界にはたくさんいる。

もしかしたらもう大好きなものを食べることすらできない人もいるだろう。

健康でいられること、健康を取り戻せたことに感謝しなければいけない。

たった三日間だったけど、3カ月間くらい王国にいたんじゃないかと思うくらい、大切なことをたくさん学んだ。


おばあちゃんがつけてくれた“豊子”という名前に恥じぬよう、豊かな人間関係を築いていこう。

そして、いつかあの不思議な体験を童話にでもして、日本中に広めよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る