22.悪口・中 ゠ 代行と姿形の話
まあそんな、不穏な会話が
少女は依然、寝息を
私がその頬をつんつん小突いてみるも、少女は目を覚まさない。
女侍従までがつづいて、その小鼻をふにふに押し突くも、やはり反応はみられなかった。
まあはっきり言って、敵の親玉を討たんとするにはこれ以上が無いくらい、絶好の機会ではあるのだが……。
そんな気は、起きない。
寝かせてやりたかった。
「よほど、疲れていたんだな」
「そうですねえ。当分目、覚まさないかもです」
「
「あー。それは
「うん? 君が?」
私はすこし、驚いた。
「勝手に
……
とは、さすがに
そう私の質問するに、こう女侍従は答える。
「まあそれで怒られたなら、それで」
「ほう?」
「でも私も結構、ずっとこの人の
「ふむ、そうか」
「緊急性無い案件だけはちょっと、全部保留にしちゃいますけれどもね。研究関連とか」
いや。
おもわず
怒られてもそれはそれで、との覚悟はまず、
それに、指揮の流れを見させるだけでも一定の成長は期待できるとも、
だいいち
かつ、王の
だとしたならこの女侍従も、相応に認められし人物だという事になる。
うむ、きっとそうだ。
そうなんだろう。
そうであってくれ。
なんとなく不安が
「私ひとりで全部
「ああ、あの侍従長がか?」
「そうです。今回のこと
「そうなのか。それはご苦労だが、もうどれくらい眠れていなかったんだ?」
「えっと。もうかれこれ、数年単位じゃないですかねえ?」
「そんなにか」
「そうです。その前からも随分、寝付き悪かったり、眠り浅かったりしたんですよ。そんなに何悩んでいるのかって
ここで素っ
「あの。もしかしてお休みになっていないです?」
「うん?」
「あなた様のほうです」
言われてやっと私は、自分が無意識のうちに
「ああ、私の名前はスィーエだ。
「あ、はい、じゃあスィーエさん。眠れませんでしたか?」
「いや、
「あら。どんな事です?」
「そうだな、
「この顔で。またこの人に、わけ
苦笑
「それならこれから、お休みになったらいいと思いますけれど、その前にお
「うん? 食事は、食堂でするのではないのか?」
「あー。それ、この人だけなんです」
「そうなのか。本人は不本意そうだったが、王だから特別なのか? それとも、何かの罰か?」
王に罰もなにも
そんな気もしないでは
「王様だからはそうなんですけれど、罰と
「墓穴とな」
「そうです。魔族って昔の時代には、
「
「そうです。それで特に決め事もなく、好き勝手に
「ほう、そんなにか」
「そこへこの人が、ある日突然、こんな事じゃ
「
「そうです。それで、いろんなところ首突っ込んで、細かい規則で
「なるほど。しかし何だってそんな事を、
「考えの読めない人ですからねえ……」
この少女のことだ、考えなしの決め事など、
ただ、指示をする際には納得のいく説明が欠かせない、そうも言いきった本人が、そこを
しかしこれではその意図が、伝わりきっていない事になる。
とはいえ、決め事の適用を受けるその
当の少女も、その可能性は
統率とは面倒なものだ。
「それでお
「ああいや、今はいい。ひと眠りさせてもらう」
「分かりました。お水だけそこに持ってきてありますから、もし
「半分は私のせいだし、これくらい何でもない。ありがとう」
「
それで女侍従が、
ふと私には、
「ん、ああいや
「はい、なんですか?」
「いや、いろいろと思い当たる
「
「ああ。君のほうがこの子より年上に見えるんだが、しかし今の言いようだと、過去の出来事の伝聞だ。やっぱりこの子のほうが、ずっと年上なんだな?」
「……あー」
魔王という存在がいつ
それでも、
それが今の会話で、より
過去の伝聞だとするなら、この女侍従が記憶も定かでないくらいに幼いか、生前のころの出来事だったという事になる。
もし少女がさらに年下だったらば、発言時に当の少女自身がまだ生まれてなどいなかったに違いない、という事になってしまうのだ。
これは無論、有り得ない。
あの女侍従長だって
しかしそれは、手術などで短期に
優良な個体を
そんな事が、十数年やそこらで果たせるものか。
ほかにも、それなりに人生経験を踏まえていなければとても出てきそうにない発言が、多数みられる。
疑いを持つな、と言うほうが無理だろう。
長く生きたにしては人間関係、
乙女のように可愛らしい老婆、というのも案外見掛けることが
そう私が考えを
「えっと。ご想像にお任せします」
「いや、この場合にはっきり否定をしないのは、
「……あー」
人の見た目と年齢が、話に出たような
だから実際に見た目どおりの年齢ならば、そのままに答えて差し
そこを
また、女としては一般に、若からずの人知れるこそが大不都合。
それらを踏まえて考えれば、実齢がどうあればより不都合へと転じるのか、その答えは択一である。
無論、
しかしそれならば、この少女……いやまあ
私と初めて出会ったというその当時にも、
その姿にもやはり
「しかしまあ、それならそれでひとつ、安心は
「はい?」
まあ元より、きっとそうだと見込んだゆえに、及んだ行為ではあった。
それでもこう実際に確認できたらば、胸を
「さすがにこれで、本当に見た目どおりの年齢だと言われた日にはな。その相手を
「ああ、そうですねえ……それにこの顔ですし、性格も見た目どおりですし」
いや、こちらが気にしているのは飽くまで年齢なのだが、言った女侍従はこんなことを
「この人の場合、どう見てもお姫様なんですよ。王様って顔じゃないです。あ、どちらかと言えばスィーエさんのほうが、王様っぽいですよね?」
「なに?」
「お顔も
思い掛けず、
以前、男へ言い寄るつもりは無いと、そう私がアンディレアに告げた時にもおおいに落胆をされたものだが、私は
「そうだろうか。
「そうなんですか? でも、そんなふうに見えますよ。この人も、
「違って、いた? 何の事だ?」
「……あー」
また何か、別の話が出てきたらしい。
「なんだ。つまりこの顔で、王様
「えっと……まあ、その」
「やれ、
「ですねえ……。
「ああ、そう言っているなあ。そんな事では
「はい……」
なんだか
この女侍従自身もまた、その見て
やはり見た目は大きいというか、それだけでは人物は
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