22.悪口 ゠ どうして平和こそが正義なのか
22.悪口・前 ゠ 劇薬と色事の話
朝は訪れ、窓のそとに明るさなど認められる。
──チュン、チチチチチチ……。
あわせて
なにか色恋物語が有ったとして、
本当にこんな時には、小鳥が
まあ、言ってしまえばそういう習性なのだから、小鳥たちへ文句を
そんなふうに、どうでもいい事を考えていると、完全に明るくなった
「おはようございます」
もちろん、行きなり寝台を
「おはよう。君の主人は眠っているぞ」
「……何といいますか、お疲れ様です。あの、そっち行っちゃって大丈夫ですか?」
「ああ大丈夫だ」
「じゃあ失礼します」
そうして
それを
「……キュラト様起きたら全部替えなきゃですねえ。失礼します」
使用済みとなった
とりなおし、
「なんだかすまないな」
「いいえ、私の仕事ですし。あ、昨日の服もいま持っていっちゃいますから、
「うん?」
示された先を見れば、それは昨晩から用意の有った綿衣である。
「ああ、分かった」
「キュラト様眠っているところ、すごく久しぶりに見ました。本当助かりました、
「いや、あれは、な」
要は魔王を、
大まかに説明するならば、その薬効は明け方まで持続した。
その様子は確かに
大量に用意あったはずの
収束するころにはもう声も出ず息絶えだえの、
具体的な説明については少女の名誉のために割愛するが、薬を
少女の
私のほうとて、その対処に延々と労を強いられたわけで、同じ目はもう二度と御免だ、と
つまり、
それでも事が
そんなような感想が、私には浮かんだものである。
なんにしろ行為としては、そんな
こう正面から感謝されてしまうと
一応、
「礼を言われるような事を、
「そんなこと無いですよ。他の
「うん?」
「なんだ。ここの魔王は、そんなに相手を取っかえ引っかえ、致し
「……あー」
王は王だから、あるいはそんな
私の相手の女侍従はというと、ちょっとだけ失言してしまったという様子を見せたが、まあ別にいいか、と割と
「取っかえ引っかえ、って程じゃ
「普段? 相手なし?」
「……あー」
少女の威信も
ただまあ、王には間違いが無いように、との建前でその一挙一動が、側近へ
それゆえ往々にして王も、つねに堂々と
だとしたなら私も被害を受けぬよう、
「まあ確かに、
「どうなんですかねえ。ただ、子供出来たら困る、とは言っていましたよ」
「子は、困る?」
「そうです。理由は知らないです。この人の場合なら基本、頭脳労働ですし。子供の
天使と魔族を掛け合わせる、などという企策を成就せんとしているような少女が、にもかかわらずそれは
そう私が疑問に思っていると、女侍従が言い
「まあキュラト様も、いろいろ複雑なんでしょうけれどねえ? でもさすがに、苦情は言いたくなりますよ」
「苦情?」
「そうです。こっちだってそういう趣味じゃ
「なんだ。君もこの子と寝たのか」
「えっと、まあ。あとそれから、私と同じ侍従やってるルワリンって
ふむ。
医務室の彼女と、廊下ですれ
それにしてもこの女侍従、
見た目からは内気そうな
それこそ
「それは、私に言ってしまって大丈夫なのか?」
「みんな知っています。大丈夫ですよ。全てあなた様に知ってほしい、なんて言っていましたし、いいんじゃないですかね多分」
ああなるほど、そういうあれか。
これは結構、
と
「そんな事より聞いてくださいよう、この人ったら
「
「こうして可愛い顔していますけれどね? こっちが
顔か。
「それは
「ええ
「ふむ、それはまあ、
「ええまあ、
「そうか。しかし君は、言うほどこの子を
そう。
この女侍従はさっきから悪口を並べてはいるが、それは
それよりも親愛表現の一環として、
内容としてはどうかと思われるものの。
言われた女侍従は
「うーん……この人、厳しいけれど、優しいですし。何だかんだ言って、
そんなに顔が問題なのか。
「でも……それとこれとは話、別です」
「そうか、それは災難だったな。それでも医務室のあの彼女らとは、そういった
「ディラエラはあの
「尊い?」
「そうです。どういう意味で言っているのかは
「そういえば、なにやら
「あ。もう見ちゃいましたか」
「廊下ですれ
「ルワリンのほうが熱入っちゃって。
「ああ。なるほどな」
関係を持ったというなら十分、有りうる話だ。
「この顔だからか」
「そうです!」
そしてこの見事な即答である。
「仕事放り出して、顔見にいったりとか」
「ほう」
「持ち場この人に近い
「ほほう」
「そのうち到頭……独りで
「おやおや」
「そうやって
「なるほど。それは困ったものだが、しかしこの子の自業自得のようなところは
「そうなんですよ」
それでもこういった事には、やはり気のない相手を誘うべきでは、
「それでこの人も、ふつうには罰与えれなくて。でも、役目放棄されるのはさすがに迷惑で」
「結局、どうなったんだ?」
「それが、侍従みんな
「え、なんだ。それはそれで、
「それです」
発端はこの魔王のほうなのに、それでは
「人
「多分あれかな。
「きっとそうでしょうねえ。
「そうだなあ。君とも
「それです。基本
「
「悪気なんかも、確実に無いですし。なにかと
まあそれは、私自身もまたそうだ、とは自覚するところであるから、大きな声で言えはしないが。
と考えていると、彼女はまた別の話を始めた。
「ただ、まあ……」
「うん?」
「私たち一応、王様のお手付きって事になるじゃないですか」
「ん? あ、ああそうか、そうだな。言われてみればそうだなあ」
「全然そんな気なんて、しないですよねえこれ。この顔ですし」
ああうん、まあこの顔か。
むしろ、こちらの魔王のほうがお手付き、という感じではある。
「それでもその事で心持ち、周りから優遇受けたりはしまして。一応の得は
「はあ。そんなものか」
いやこれは、どうだろうな。
正式たる身分ではなくとも、君主に対して影響を与えうる人物だ。
つまり、取り入れば好都合に
逆に
当の少女が、至極公正な判断を下さん、という方針でいるにしても、王の威光とはやはり絶大なものだから、それは周囲も警戒せざるを得ないだろう。
だったらそれは優遇と
また同時にそれは、あの廊下の女侍従にしてみれば、
そういう事になるのではないか。
だとすれば、周囲からのそんな配慮など、本人にとってはかなり屈辱的なもの、とも想像されすらする。
もちろん当人から直接話を聞かないかぎり、何も確かなところとはならないが、それでもこれは
やれ、悪気が無くとも
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