21.存在・後 ゠ 傍証と詐術の話
「……
「しかし、いやしかし」
神が魔族を創った。
それは無論、
しかし少女は、さらに言葉を畳み掛ける。
「でも、状況的な証拠は、いくつか
「そうは、言ってもな。どうして
「そう思いますか? 私には、何らかの境界で区切られただけの、
「……」
違わなかった。
いやもちろん、魔界までもがそうなのかは、私はよく知らない。
それでも木々が風に
この城内にだって、常識の
ぎりぎり
「それから、同じ人族でも土地が違えば、若干違った
「……」
違わない。
もちろん神に創られし人族たちと、神の使いである天使らが同じ
しかし言われてみれば、魔族までもが同じとなると、当たり前とは到底考えがたい。
何らかの作為が存在しなければ難しい、確かにそのとおりだ。
そういえば
毎度
「それと動物でも植物でも、
「……」
「それから魔族、魔王。さっきも言いましたけど、何度も誕生してて、人族たちを襲ってて。でもその
「……」
魔族が、異世界から
しかしそれでは、神の創りしこの世界は、魔族がくり返し誕生するよう出来ている。
または神によって魔族が都度、創り出されている。
世界は神が創った、という前提のかぎりでは、そういう事になってしまう。
あるいは、人の負の感情が強まれば魔素とよばれるものに変容し、その蓄積によって魔族が具現する。
そんな説もまた語られるが、結局それも話が変わるものではなく、世界がそのように創られていなければそんな
そしてもしも、本当に魔族をも神が創ったというのであれば、姿が
そんな話にもなろうし、そうでなく魔族はやはり異世界から
ここに魔族らがこうして
この結論を避ける余地は、無いように
……神の悪意?
そんな言葉が、私の頭のなかを
「お前の言うことが、全部本当だとしたら、だ。それは一体、どういう事になるんだ?」
「さあ、どうなるんでしょうね。ただ、天使たちは神の教えを布教するとき、
「……」
ここでまた
「
「! ……」
私はそれに、頭をガンと殴られたような衝撃を感じ、
「魔王がそれを言うか」
「ふふ。言ってみたくなりました」
おもわず茶化してしまったが、ああ何てことだ。
これは、今日投げつけられた問い掛けのなかで、最大級のものだ。
だとしたら、少女の言うとおりなのだとしたら。
天使たちの正義に対して疑問を持つことは有っても、神の正義に対してのそれは基本的に、無かった。
どうしてこうなのか。
そう問うことは有っても、間違ってはいやしないか、あるいは悪意が存在するのではないか。
そう疑うことは無かった。
これは自分が飽くまでも、神の召使いだからなのだろうか。
人族でも、
言葉の持つ意味による刷り込み、という事は
神も王も、
その言葉の意味のみを、額面のとおりに受け取って通用させているだけで、私もその存在自体を
そも、対面したことすら無いのだから、認めるための
あるいはこれが、魔王の策略であり、洗脳なのだろうか。
たとえば、
こんなような感じに検証困難な要素でもって、想定しうる逃げ道を
そして、
これもおそらく視点定義による
いや、そういえばさっきまでの話。
この世界とは本当に存在するかどうかも
そう考えると神という存在すら、
それならそれはもう、何が何だか
しかし
そう思ってふと
うんうむ、本当に残念ながら。
当の少女は、
そんなような
やれ。
今度こそ、話は終わりだな。
「おい魔王」
「は、はいっ」
「もう限界なんだろう。話は急がないから、
「ま、まだ、もう少し……」
まあ少女がこうして粘っている理由は、話の区切り、というのとは違う気がした。
つまりはこのあと至ることに対し、おそらく踏ん切りがつかず、
とはいえ、少女のその様子にはもうさすがに無理が感じられたから、私は言ってやる。
「何か事件が有っても
「……じ、事件とか証拠とか
──ばたばたばた。
しかしはて、かの少女と私はずっと、供に
そも、この型崩れの
──ドン!
そう私が首を
「
ああそうか、そうだったな。
何だかんだで伝えるのが遅れてしまったが、そういえばまだだった。
少女としても、ここから後の流れを考えれば、相手の名前くらい知っておきたいだろう。
「スィーエ。私はスィーエだ、ナキュー」
「スィーエ……。ナキュー、って私の事ですか?」
「他のみんなと同じ呼び方がいいのなら、そうするが」
「……いいえ! いいえ!」
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