21.存在・中 ゠ 記録と七戒の話
──んん。
申し訳程度に
「その記録なんですけど、順を追って
「記録が、途絶える?」
「はい。現に文章の記述のされ方が進化してるんですし、以前からもさらに原始的な状態から進化しつづけてきてた、って考えるのが自然でしょう」
「だかそういった物が、いっさい見つからない、と」
「それってつまり
「突然の登場に無理が有るとすれば、文字自体は以前から
「はい。文字っていうのは
「まあそうだ。それなら何かしら書き
「
「ああ。どこか
「そうなんです。仮に
「そんなものは物を書けなくとも、確実に口頭で伝承されるはず、か」
「ついでに後日、記録としても
「この世界は、千四百五十年前に唐突に、誕生した?」
「現れ始めた当時の記録って、どれもごく
「ふむ。そして、そんな事が
「神」
「としか、
「まあ、そんな事が
「
「ええ。だいたい、
「だったらやはり、その時に神によって世界は創始された。そう
「はい」
そのまま
「ううむ。創られたとするとさっきの、存在とはという話の受け止め方が、微妙に違ってくるが、な。しかしそれが、だから何だと言うんだ? お前の行動の理由と、どう関係するんだ?」
そんな私の疑問に対して、少女はこう
「そもそも、確証のない話です」
「うん?」
「ただ神って、人族に対していろいろと、規範を示してますよね。
「ふむ、七の戒律か。確かにまあ一律の規定には、一定の
「いえ、行けなくは
「……」
言われてみればそうだ。
その性質は天使たちも同様だし、だからそれは試練などと呼ばれ、克服することが美徳と
正直、天使らにそれが
やや似た話を、アンディレアもしていた。
どうして、激しく動けば疲労してしまうのか。
傷ついたとき、痛みを感じるのはなぜか。
それは、
それはもちろんそうなのだが、これは飽くまでそのように創られている場合での方法論であって、万物を創造しうる全能の神、と
悪意は、どうして生じるのか。
欲は、どうして存在するのか。
これも同じ話だ。
行けないのなら、それらが
越えてはいけない線が存在するのなら、それを越えないよう創ればよかっただけの事だった、はずなのだ。
どうしてこんなふうに、創った?
ただ漫然と生きていれば、
創られた可能性が高い、そう認識してしまった今となっては、どうにも
「まるで、規範を破ってほしいかのようだな」
「同感です。……いえ、違いますね」
「うん?」
「同感どころじゃあ
「なに?」
しばらく言葉の意味が
「……」
まず、世界は神が創ったとする。
それからそこに暮らす存在として、人族もまた神が創ったとしよう。
そして天使も、天使と
だが、それならば……魔族は?
なぜこの世に、魔族は存在する?
神が創ったはずのこの世界に、どうして魔族などというものが存在できている?
「お前、まさか」
私の口からは
対し少女も、いくらかふり
「
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