20.過去・中 ゠ 価値と救済の話
「……そんなに、
失笑と受け取りでもしたのか、少女はやや
「ああいや、すまない。そういうわけでは
そのうち何かを
「まあ
「うん?」
「それでも
「そうか。何を
「そういえば
「ああ。伸ばし始めたのはここ数年だが、それより前の話か?」
「はい。そのもっと、ずっと前の話です。私、死のうとした事が有るんですよ」
「……」
魔王が、自殺未遂。
どういった事なのかと、根掘りに突っ込んではみたかったものの、話の腰を折ってはいけないと思ったから、この場ではだまって続きを
「その時、気づけば
「……」
いや
私は事情へ深入りもせずに、そんな
死んではいけないのは死にたくない者だけで、なんの手助けもしないまま死にたい者を無理に生かし、ただ苦難に
死にたがる者に対して例えば、命より大事なものは無い、命だけは取り返しがつかない。
そんな主張を強硬にする者はたいがい、それ以外のものを
たとえば
これがもし十七歳になったとき、同様の機会にふたたび
その差は間違いなく、その後に歩むであろう
命だけは、というのが誤りなのであって、命に取り返しがつかないのは本当の事だから、
そんな悔やみを後から
そんなものが、簡単に
実はこの機会こそが、人にとって
これに対し、人は結局物質から価値というものを得ている、ゆえに物質こそが人にとって
確かに、
しかし実のところ、物だけ有ってもまず機会に恵まれなければ、肝心のその消費が
たとえば満腹している者へ、もしくは
きっと価値というものを金額換算するから、結局に同じ物質を持てれば実質同じ、との判断に至るのだろうが、そうでは
ゆえこそ望まぬ物に囲まれていても、幸せになど成れはしないのである。
たとえば親から小遣いを与えられた子が、
しかしこれが、
ところが、失ったのが
折角に買い与えられたそれを、地に取り落として
金銭の場合、それが記念
つまり
努力実らぬときに人が
食い物の恨み、とよばれる物の正体もこれで、次回に同じ物に
なのに金銭であれば、補填されるかぎり失われても痛くないのは、ほかの何かと交換しないかぎり
他方で、金銭と同じく物質であるのに、宝玉を
だからこそ、人より物が優先されがちである一方で、人との離別や死をも
それでいて、死別したのが縁薄き者だった場合、冷淡にも情動をさほど
要は、人が価値を物質によって得ているとしても、その価値観とは物質にではなく、機会に依存するもの。
宝玉が
そして金銭とは、このように人の認識を
実際、金銭的に大成しすぎた者は
全然そんな事では
死にたい者は
ごく単純な話、
それ以上でもそれ以下でも
実際に救いの手を差し延べ、これを本当に救わないかぎり、その者はけっして救われないのだ。
しばしば、死にたいと言う者はただ苦しみから
そんな話も
根本的な話、
だから、死んだほうがいいのでは、との念慮を持ってしまった者を放置すれば、本当に死にたい、との願望へと
そしてやがてに、死んでしまおう、との企図が
段階、というものがまず有って、
自助不能ならば、救出される以外に解決など望むべくは無く、そのままではこの段階が、着々と進行するのみ。
つまり本当に死にたいかどうかなど、この際なんら問題では
論点そらしである。
ならびに、お前より
そんな比較によって、
基本、生理的不快とは生存上での危険を
だから、たとえば人里離れた未開の地において、もし程度によらずこれを無視しようものなら、
それがすこし
つまりまず、程度がどうだからどうだ、との基準がそもそも成立し得ない。
例外的にこれを、人里においてならばある程度無視できるのは、それを
肝心のそれを
あるいは苦痛に耐え抜くよう、成長を願うものなのかもしれない。
確かに鍛えるとはそういう事であるが、しかしそれは心身を痛めつける事には、なんら違いの無いこと。
負傷や
あえて他者に実施するにも、観察をけっして
それを、鍛錬を要すると見込まれるくらいには
あまつさえ、手前はこのやり方でここまで来れたと言うに、
そんな
そういう事を、鍛錬とは
ただ雑にあつかい、そのせいで壊してしまった
どれだけ損失を出せば気が済むものか、それでは成長を願うなど、ただの口先三寸ではないか。
大体どうして、人の悲鳴をそんなに信用しないのか。
まずそこが、私には
とはいえ、集団の一割ほどは
そしてそれ以前の話、
たとえ必要性なき救護が発生してしまう事になろうとも、けっして無視されてはならないものだ。
それを無条件で
悪意をはらむ虐待そのものだ。
もし救助の余力、あるいは義理が無かったとしても、それはそれで
そんな場合には、素直にそう述べれば許されること、許されるべき事のはず。
ただ
にもかかわらず、甘えるな、
そんなふうに、まさに苦しんでいる者自身のせいにして
仮にそれが真っ当な指摘だったとしても、相手のためを思っての
それでは思いやったはずの相手が
そういった事は、
しかし、
それが連鎖したならば、やがては大きな力となり、最終的に救われるべきと願われた者は、
集団の力とは、そういうものだ。
なのに責任どうこうなど、そんな話は受難者には、なんら関係ない話。
そんな事ばかり
生きていればきっと良い事がある、ともよく
しかし実際、苦境に置かれてしまったその
その良い事とやらへと、向かう気力など
理解なき励ましによって、気力でも
余計に
その場合についての目配りをするつもりも無いままに、そんな無責任を投げつけるのが、どれほど冷血で
人はこれこそを、
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