19.慕心・後 ゠ 告白と卑下の話
いさいさ
これから私へ魔王が何か言うらしいが、状況的にもうその内容は、聞くまでも無い。
そもそも最初、少女がこちらへ名を問うてきた時にもう、なんとなく察していたところではある。
くわえ、私への異様とも言える、好意的な態度。
かつ、それを裏づける、周囲の反応。
果てには、毒薬などという物で一計を図ったうえでの、素直になってという言葉。
これだけ条件を
だから問題は、その言葉にどう応えるべきか、という点なのだが……。
放免されることはまず無いだろうが、それでも他に天使たちが大勢いるとの話だから、そこで共にする事になるのだろうか。
あるいは、少女の言ったとおり私はいろいろ働いたから、その
それはすこし困る事でもあるし、
であれば、受け入れるか。
受け入れる事について、私は……。
私は、少女を見る。
まあ
「……
「どうした」
「あの、ええと……こんな、
「つもりの無いのは、聞いていて
「はい……。私……」
「うん?」
「……」
「……」
こちらを真っすぐに見て。
「ごめんなさい。
少女はそれですぐ、私の
ああ、言ったか……言って、しまったか。
可哀そうなくらい、
もう、後には
救われるか、見限られるか。
そんな
当たり前だ。
ただでさえ愛を告げるという、
あらゆる種類の恥辱を、図らずも一身に抱えてしまった少女。
その人柄については、
そのひと言により、全てが物語られていた。
つまり、そういう事だ。
なのに、それについて謝罪を述べると言うのなら、それは自身をそのような詰まらない者であると、
そしてその理由を
つまり、それだけ自らの弱さ
つまり、自らを不当に過少評価することしか
つまり、
つまり、
そういう事だろう。
要は、欲しい物が手に
そして、それは
王などという存在が、衆を操作し
そんな理屈は、
あらゆる物に満たされながら、何をそうまでさらに欲するのか、強欲にも程が
そんな、見当違いな非難を周囲から寄せられることまで含め、要らないと思う物ばかりに囲まれつつ、本当に欲しいと
そんなものはおそらく、それを実感したことの無いような幸せ者なんかには
そう。
きっと今までこの少女は、恵まれていなかったのだ。
「……」
だまって、私の反応を待つ少女。
その、弱りきった
これが魔王、か。
まったく。
やれ、やれ。
どうしようも無いではないか。
「つまりそれが、私をここに連れてきた、本当の理由」
「はい……」
「そんな話だろうと、察してはいた。ただな、こちらこそ
「……」
「だいいち私は特に、同性を好んでいるわけじゃ
「……」
「だから今すぐには、お前と同じように私の気持ちが、お前へ向いたりはしない」
「……」
その言葉で、すでに落ちていた視線にならって垂れる少女の頭に、また私は手を乗せた。
少しだけ
「それでいいなら、私はお前の
「……え」
せっかく言葉を
「え、とは何だ」
「で……でも、今……」
「断わったように聴こえたのか?」
「……だって、だって……私のことなど、知らないって……」
「これから教えてくれればいいじゃないか」
「……だって、同性は好きじゃ
「好きじゃなくても、
「……
「今すぐには、と言ったはずだが」
「……」
いま宣言したとおり、私も別にこれといって、女に興味を持っているわけでは
しかし、白状するなら何だかんだ、行き掛かりのうえでその相手をした経験が、無いでも
指向
そして何より、話が合う。
冗談のやり取りも
悪い相手では、
楽しく過ごせると思う。
思うゆえ、そう私の補足するに、しかしいまいち納得の行かなげな様子の少女。
それはまるで、こんなはずは無いと、状況を否定する材料を
人が何かに
まったく自身の好都合を、こうまで疑うとは、そこまで幸福に裏切られつづけた、と言うのか。
そんな少女へ、言葉をすこし追加してやる。
「やれ、姿形というのはやはり重要だな。お前が
そういえば、今の今まで少女に対し、好意の言葉を明示していなかった気がするが、
そのひと言で、魔王の目は
両の手で両の眼を
「……
「よく泣く魔王だ」
「だいたい
もちろん私には、そんな苦情に
ふたり
それでどんどん
……やれ、これは間違いなくアンディレアに怒られるな。
もしも
そんな事を、
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