19.慕心・中 ゠ 媚薬と鼓舞の話
「あ、シュノエリ様」
不思議
「失礼致し
そう一礼し、女侍従長が少女へ申し上げたのは、果たしてこんな事だった。
「
これにはやや、少女も
だから一応の
「ご苦労です。でも、その程度のことに
「
それで少女は机に突っ伏した。
私も突っ伏しそうになった。
はあ、いや、何だろうなそれは。
いちおう敵であるはずの私を、
この訳の
そんなよく
少女のほうも、
「シュノエリ。どうしてそうなるんです」
「定めて
「そ、そうですけど! さすがに寝るときまでは……」
「就寝時
「……ぅ」
少女は言葉に詰まったが、それにしても
「で、でも……さすがにそれは……
「
「うん?」
どうだろう、この少女とともに……。
見ればその少女は
これはあれか、期待は
いや
「そうだな、特に
「との
「……ぇぅ……」
逃げ道を
そして、
「そ、そういえば、これは何のお茶なんですか? 甘いような
そう言って、もういちど確かめるように少女が茶を含んでいると、女侍従長は説明をした。
「
「……」
──ぶーっ!
最後の材料を耳にした少女は、一瞬
目の前の書類が
「なっ……なっ、なっなっなっ……」
なにやら激しく衝撃を受けたようで
やがてそれが、いくらか
「なんですってええぇぇえ! ……の、飲ん……飲んじゃった……飲んじゃった飲んじゃった飲んじゃったっ……飲んでしまったじゃあないですかああぁぁあっ! どうするんですかこれっ、どうするんですかこれぇ……」
涙目になりながら情けない顔になりながら、
その少女にその茶を入れた女侍従も、目を
「どうした? その、げんせいと
「び……
「は?」
なんだ。
ここの者たちは、自分らの
それも毒薬でなく、
そして
いやもう、あまりの事態の理解できなさ加減には
「何をそんなに
これは、いま挙がったような
ほかは総じて、動物の局部やその
どころか、
つまりは宣告なしに用いるのであれば、酒や眠り薬のほうがはるかに結果を期待できるような、正真
それが、
現実には、
と言うより薬とは、何かの機能を与えるよりは、およそ奪う一辺倒。
不調回復の
強いて言えば、
精神の
だと言うのに、ここにいる少女がいま見せている様態は、
それがどうにも解せないから
「違うんです……これは、違うんです……」
「違う? 本物の
「確かに
ここの者たちは、自分らの王に一服
それも本当に、毒薬とな。
「
ふうむ、そんな物が有ったのか。
それは知らなかったぞ。
「そうするとそれは、分類はどうあれ事実上、本物の
「いえその、
なにやら、
そういう感覚を知らないわけでは、
ふむふむ、そうか。
「つまり、結局は毒なわけだな?
「もちろん有りますよ毒ですから……飲み下せば、その刺激で腹痛はもちろん、吐血や血尿血便までひき起こしますし、流産の原因にもなりますし……致死量もすごく少なくて、量を間違えれば一度で死にますし、間違えなくてもくり返し使えばやっぱり死にますし、そうならなくても
「
「はい……それから構造的に、花を
「最悪だな」
「……最悪ですよっ! なんてもの飲ませてくれたんですかシュノエリいっ!」
しかし、そのように弱りつつも
「
「どう……え……あっ……そん、な」
そんな物騒な薬では安らぎも
「
「それ……ど……ちが……」
「
「……おおいに間違って、ます……」
「
それは当然気になってはいたし、知っているなら直接私へ
そう思わないでも
それにどうも会話の内容が、佳境へと差し掛かっている模様だ。
だからその質問は控えておいたのだが、この次に見せた展開には驚きに
「そんなの言えるわけが……って、なんでシュノエリがそれを……」
「
「! ……」
強大な力を持つはずの目上を、
ただそれは、
「
「……え、と」
「が、
「の……それ、は……き、か……」
「切っ掛けとは、用事
「……」
それで黙り
「キュラト様」
「……はい」
「結構で
そして女侍従長、そのまま私へと向き直り。
「
「あ、いや。私はべつに、構わなかったがな」
「
「え、あ、はい。その……失礼します」
言葉のとおりに退室していく、二名の侍従。
残されて
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