16.判断・後 ゠ 道具と技術の話
またも
「たとえばお肉って、そのままでも
「そうだな。あれは良いものだ」
「ふふ。ただそれって
「確かに、果物あたりには
「ええ。合わせるだけじゃあなくって、塩単体で
「そういう、事か」
塩が不足すると人は、脱水やそれによる虚脱などの変調をきたす、とはよく知られたこと。
脱水とは怖いもので、明らかに
それが高じれば
動物もまた同様であり、特に草食動物にあっては、
肉食動物にあってはそうでも
味からすれば塩の蓄えは、すぐ傷むものゆえ人らは捨てている、血液に集まっているように思える。
つまり、塩は血液を造る物、とも想像されるわけだ。
実際、
塩脈に恵まれず、海からも遠い内陸部では、塩の入手は死活問題。
しかし、これがまた重量物であるから、その輸送には
特に山岳地帯などでは、荷車を通せず、
そうでなくとも遠距離であるほど、野盗や野獣のみならず、故障や災害などの難にも遭いやすい。
人里も周囲に無いような状況で、
それゆえ、運輸を買って出てくれる人材すらもがまず少なく、必要とされる場所ほど値が
「塩を
「はい。つまり情報ってものは基本的に、多ければ多いほど良い。だから欲張りすぎ、ってくらい
「ははあ。それでお前は、いろいろ知っているというわけか」
しかし、さっきのお手紙もそうだが、
少女のこの
と、そう思ったところへまた、興味の
「まあその、知ってるなんてことも実は、知ってる
「なに。またお前は、
「要するに、知識っていうのは判断をするための道具そのもの、って事ですよ」
「どうぐ」
「たとえば
「つまり、いったん仕入れた知識でも保守点検は必要で、そこを
「ええ。知識そのものの確認は、まず当然。そこが確かだったとしても、使い方がそもそも成ってなかったら、現物だけ
「なに。知識をつかうにも道具と同じように、技術が必要だと言うのか?」
「はい。たとえば固まった容器の
「まあ
「ええ。まず包丁が
「ああ、視点の定義による
「それが意外と、そうでも
「
「その失敗を減らすには、
「……」
言われてみれば
そんな
つい
「
「あ、はいそれです、まさしくそうです」
「つまり
「ですね。道具も手先も
「そうか。まあお前の言うとおりとは思うが、それにしても厳格きわまれりというか、また大変なものだな。
「そうでも
「ほう、なるほど。そこまで躍起にならなくともいいわけか」
「それに私の知ってることなんて、ほんのひと握りくらいですし。私も
「待て。いや。それはそうなんだろうがその、ひと握りとか、若輩とか
「うーん……そこはどうしても、意見が分かれちゃいますか」
少女のこの説明は、話としても大変興味深いものであるが、それにしてもこの思慮深さは、どうだ。
たとえば独裁を認めさせる、その根拠として王位が理由に、成るでは
要するに、そんなものは本当は、なんの理由にもならないと。
そう
そしてそれは、
若輩者、という言葉に至ってはもう、それそのものだ。
まあ
こう掘ったらば掘っただけ、次ぎつぎ何かが発掘されるなど、どんな優良の鉱脈も及ばざるかのようではないか。
もちろんそこに、ある
「……はい?」
「ああ、いや」
手放しで
そう思わざるを得なくなった私が、少女を
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